第61話 【固有スキル①】
「では、今から固有スキルの能力を把握する訓練を行います」
剣聖バルク先生がそう告げた。この訓練所には人類最強格の指導者が全員揃っている。これほどの陣容で教育に当たらないと、本当に魔王には勝てないのだろうか——そんな緊張がクラス全体に漂っていた。
「固有スキルは通常のスキルと違い、効果の説明文がありません。そのため、名前から効果を推測する必要があります。例えば出席番号1番の恒一——固有スキルは『剣神の後継者』でしたね」
「はい……」
「名前からして、剣術関連との相性が良いと予測できます。それを実際に試し、反応のあった方向へ絞り込んでいく。固有スキルに関する記録は極めて少ないので、固定観念にとらわれず、思いつく限り試してください。以上です。今日の夜8時までに、推測した効果を用紙にまとめてください」
それから各々が散らばり、互いに固有スキルの効果を探り合った。魔法系統が疑われる生徒は、賢者ダニエル先生から直感的な魔法の扱い方を簡単に教わることになった。俺自身も朝の段階で魔法関連ではないかと推測していたため、ダニエル先生のもとへ向かった。
「魔法というのはね、体中を巡る血液の流れを意識する感覚で、それを手のひらに集めて——『でろーでろー』って感じでやるんだよ。本来は理論を体系的に学んだ方がいいけど、それには時間がかかる。成長倍率1200倍の君たちなら、まず直感で試した方が早い」
魔法に心当たりがありそうな生徒たちが、自然とダニエル先生のもとへ集まってきた。魔法というジャンルは応用範囲が広すぎるせいか、効果が判然としない固有スキル持ちも、ひとまずここに流れ着いていた。
「だぁめだ、全然できねぇ」
黒崎竜牙が声を上げた。まだ実時間で1分しか経っていないが、成長倍率を考慮すると体感1200分は試行している計算になる。それでも形にならないとなると、向いていないのだろうか。
「うーん、君の固有スキルは何だったの?」
「真竜化」
「そりゃあできないよ、名前からして魔法系統じゃないから!その場合は——自分の魂に直接語りかけてみたら?」
「やってみます……」
竜牙が目を閉じた瞬間、心音が周囲にまで響くほど大きく脈打ち始めた。
「!?!?」
竜牙自身も驚いた様子だった。同時に、皮膚の表面が薄っすらと鱗のような質感に変わっていく。
「うおっ、すげぇ!」
周囲のクラスメイトたちの視線が一斉に集まった。
「なんか……体の奥からパワーが溢れてくる感じがする!」
「おぉ、それだ!なら試しに岩を作ってやるから殴ってみろ」
ダニエル先生が地属性の魔法で高さ3メートルほどの岩を生成した。
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」
竜牙が雄叫びと共に拳を叩き込む。次の瞬間、岩はスナック菓子のように粉々に砕け散った。
「す、すげぇ!!」
訓練所中が沸いた。それを見たクラスメイト全員が、自分の固有スキルへの探求心をさらに燃やし始めた。
俺は簡易的な火魔法を取得し、ファイアボールを連射してみた。
「ちょっと、それやったら魔力枯渇しちゃうよ!?」
ダニエル先生がそう声をかけてきたが——正直、枯渇する気配が一切ない。何発でも撃てる。これが固有スキルの力なのか?
「ダニエル先生!俺の固有スキル、魔力の超高速回復みたいです!」
「魔力の超高速回復!?それは強いな。じゃあ全身の魔力を手のひらに集めて、小さいファイアボールを連打できるか試してみようか。無理ならやらなくていいけど」
「やってみます」
全身の魔力を、手のひらというより指先の一点へ凝縮していく。そこから小粒のファイアボールを連射する——これなら一発あたりの消費を抑えられるから、回復速度が追いつくはずだ。
撃った瞬間、連射されたファイアボールが繋がり、まるで光線のような軌跡を描いた。一発の威力は小さいが、これなら理論上無限に撃ち続けられる。
「素晴らしい!これは才能があるぞ!」
「ありがとうございます!」
早い段階で自分の戦闘スタイルを掴めたのは大きい。名付けるなら——一点集中作戦。どれだけ大きな一撃でも、ウォータージェットのような持続的な一点集中攻撃には敵わない。弱い攻撃を連射し、疑似的なビームを完成させる。
うぉぉぉ!異世界が、楽しくなってきたぞ!!




