第58話 【ステータスオープン】
「おい、大丈夫か!?」
クラス一の陽キャ、青柳恒一がそう叫んだ。クラスメイトたちは「大丈夫」と口々に言いながら、誰一人として状況を理解できていない。当然だ。俺も同じだ。
「お、おい智也……大丈夫か?」
隣に蒼真がいた。いつも飄々としている友人が、珍しく声を震わせている。
「あ、あぁ……大丈夫だ。何が起きたんだ?」
周囲を見渡すと、豪奢な宮殿の中に俺たちのクラスが丸ごと放り込まれていた。貴族らしき人物、鎧に身を包んだ騎士、黒いローブを纏った術士——様々な人物が俺たちを囲み、口々に歓声を上げている。
ふと気づいた。担任の松田先生の姿がない。あのバリアの外にいたのだろうか。
「他世界から来た皆さん、ようこそ!」
支配層らしき人物が一歩前に出て、高らかに告げた。
「混乱されているかもしれませんが——魔王を倒していただきます!」
……異世界召喚。漫画でしか見たことがなかった展開が、今まさに俺の身に起きている。
「そんなことできるか!さっさと返せ!」
恒一が真っ先に声を上げた。こういう時は本当に頼りになる。
「ご安心ください。皆さんには特別な力が授けられています。固有スキルと成長倍率400倍——今すぐ確認できます。『ステータスオープン』と唱えてみてください」
やっぱりこの展開か。クラスメイトたちが恐る恐る唱え始める。俺も試してみた。
「ステータス……オープン……?」
目の前に、光のウィンドウが現れた。
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名前:上野智也
種族:人間
レベル:1
生命力:10
魔力:10
体力:16
攻撃力:8
防御力:13
素早さ:11
----スキル----
固有スキル:《無限魔力炉》
特性:《成長倍率1200》
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「おぉ……」
RPGそのままのステータス画面だ。思わず声が漏れた。
「智也!俺、固有スキルが神眼だったぞ!かっこよくないか!?智也は?」
蒼真が目を輝かせてこちらを見てくる。
「俺は無限魔力炉だった」
「めちゃくちゃかっこいいじゃん!よっしゃ、無双ライフの始まりだ!」
俺より遥かに興奮している。こいつはこういう状況に異常なほど強い。
「皆さん、ステータスはいかがでしたか?」
「成長倍率1200と……剣神の後継者というスキルだったが、これはどういうことだ?」
その言葉に周囲がざわめいた。剣神の後継者——それほど特別なスキルなのか。
「なんと素晴らしい!固有スキルの格といい、想定を大幅に上回る成長倍率といい——これは本当に期待できます!」
「ゴホンッ。それでは。現時点での皆さんの実力では近くのゴブリンにすら勝てません。そのため、皆さんを指導してくださる方々をご紹介します。どうぞこちらへ」
話がどんどん進んでいく。それにしても、クラスメイトたちの適応力が高すぎる。数分前まで数学の授業を受けていたとは思えない。
「まず一人目。護衛兼総合指導を担ってくださる方——現在、人類の中で最も強いとされる人物です」
お、世界最強か。どんな人物が出てくるんだ——
「後藤政宗!皆さん、拍手を!」
……後藤政宗。
異世界のはずなのに、完全に日本人の名前だ。いや、本当に日本人なのか?
「続いて弓術を担当していただく、世界最強の弓使い——ベクトリア!」
エルフを思わせる美しい女性が手を上げた。もし地球にいたら世界を席巻していたであろう容姿だ。異世界の美人は規格が違う。
「次に戦術・剣術を担当していただく剣聖バルク、そして勇者王アーサー!」
勇者王……勇者を統べる存在がいるのか。
「ちなみに勇者王アーサーは、今年で301歳になります」
……化け物だった。
「最後に魔術を担当していただく賢者ダニエル——以上です!」
5人全員が規格外だ。この面子から直接指導を受けるのか。
「本日はこれにて解散!皆さんは勇者の寮へご案内します!」
その後、俺たちは案内係のお姉さんに連れられて寮へ向かった。移動しながら、クラスメイトたちはそれぞれの固有スキルを言い合い、明日からの訓練に思いを巡らせていた。誰の顔にも——恐怖より先に、期待の色が浮かんでいた。
地球で凡人として生きる毎日と、異世界で超人として生きる日々。こんなにも体の奥が沸き立つような感覚は、生まれて初めてだった。
「今日は寮でゆっくりしてください。トレーニングは明日からです」
お姉さんのその言葉を合図に、俺たちは各自の部屋へ散っていった。夜、ベッドに横になっても興奮は収まらなかった。目を閉じても固有スキルのウィンドウが瞼の裏に浮かぶ。
《無限魔力炉》——この力で、何ができるんだろう。
そのまま、いつの間にか眠りに落ちていた。




