第55話 【獣帝と緑竜】
翌日、俺はマフィスにこの辺りに強力な魔物がいないかどうか訪ねてみた。
「強力な魔物かぁ〜いや、いるにはいるんだけど仮に行って死んだらどうするよ?勇者の教育係も任されているんでしょ?」
「多分大丈夫だ」
「じゃあ、俺がいたバルガスト山あるやん?そこの奥をまっすぐ行ったら、獣帝と呼ばれている奴と緑竜がいるから、そいつら二体倒したら?今の政宗のレベルだったらすぐ100に到達するはず…」
「よし!わかった。行ってくる」
俺は勢いよく屋敷を出て自慢の脚力でバルガスト山へと向かった。
バルガスト山に辿り着いた俺は、バルガスト山の更に更に奥へと進んでいった。どこにいるかの詳細な場所は聞いていないが獣帝や緑竜と呼ばれている程の者ならすぐ見つかるだろう!
バルガスト山を突っ切って3分、ただならぬ気配を感じた。それはバルガスト山の向こうにある森から感じた。見も知らぬ森に、恐れを知らないかのように俺は突っ込んだ。
ただ、相手もそれに気づき、俺が見えない速度——いや、角度からか——獣のような斬撃を飛ばした。
「!?!?」
空気を引き裂くような音が走り、俺の腕に焼けるような痛みが走る。腕を負傷したが、20万はある防御力により軽症で済んだ。
「オートヒーリングもあるし、これぐらいならまだ大丈夫だな」
「あの斬撃を見るに…獣帝のほうか?」
俺は再度バルガスト山に吹き飛ばされ、おそらく獣帝がいるであろう森を少し監視しながら、次は最高速度で森に突っ込んだ。
その時、目の前に巨大な影が現れた。獣帝だ。咆哮と同時に俺の顔面にパンチを放ち、吹き飛んだ俺にそのまま連撃を畳み込んだ。
ドゴッ、ドゴッ、ドゴッ!
一発ごとに地面が割れ、衝撃波で周囲の木々が薙ぎ倒されていく。
「ストップ!ストップ!」
俺はストップをかけるも獣帝の動きは止まらない。仕方なく剣生成により剣を取り出し、一閃——獣帝の腕を切り落とした。
「ッッッ!クソッ!」
「ちょ、落ち着けって」
上位存在は全員人語を取得しているのか??という疑問が思い浮かぶが、そんなことは無視して「焦るな」と声をかけた。
「そんな!殺意が溢れ出している奴に対して落ち着けるか!」
獣帝は腕に力を込め、切り落とされた二本の腕を、ぐねりと音を立てながら触手のように再生させた。
「もっと面白く戦いたいから、ゲームを提案しよう!」
俺はそんな事を言っているが、獣帝は本能的に俺に殺されると悟っているのか連撃を畳み掛けてくる。
「ライジングバースト!ワーピングバースト!エネルギーバースト!万力斬撃!」
獣帝は俺の話を聞かずに、自分が持っている全てのスキルを連続で叩き込んでくる。光と衝撃が交錯し、視界が一瞬白く染まった。
「あぁ!もう!」
俺は実験的に任意型上級スキル【過負荷】を使用した。肉体が燃えるように赤く染まり、心臓のように鼓動し始める。血液が沸騰するような熱と、抑えきれないほどの力が全身を満たしていく。
「力が溢れ出てくるぞ!?」
俺はその状態で獣帝の体に拳を放った。次の瞬間——獣帝の肉体は風船が破裂するようにバンッという爆音を立てて、体の右半身全てが消滅した。衝撃波が森を抉り、巻き上がった土煙が天高く立ち上る。
「ぐがっ…クソ、再生も間に合わん……」
そう言い残し、獣帝は身体が動かなくなっていった。
「いや、過負荷は普通に強いんだけど…毎秒生命力が-1%されていくのはきついな。100秒経ったらどんなに強くてもお陀仏か…」
《レベルが100に上がりました。SoftCap^2が付与されます。
基礎スキル:筋肉エボリューションが付与されます。
常時型上級スキル:獣の肉体が付与されます。》
「ふぅ…もうレベル100になったし戻るとするか。いや、緑竜に関しては政宗流剣技二の型の餌食になってもらうか」
またまた、走って探し回る。だが、ここで俺は素晴らしい事に気づいてしまった。
「魔物っていうのは魔力を常に放出しているんだっけか?遠征の時にリッチと戦った時、周囲は魔力で覆われてたな。だったら魔力感知に全集中力を注いだら、強いやつだとすぐ発見できるんじゃねーか!?」
早速魔力に全神経を注いだ。音すらも聞こえないほどに集中をしていたら、ある一点から微かに力強い魔力が漏れ出ていることに気づいた。
「この感じ…洞窟の中か?」
俺は恐らくいるであろう場所に走った。
たどり着くと、やはり隠しきれていない膨大な魔力を感じる。
その洞窟の中に火魔法のファイアボールで照らしながら入っていくと、大きな緑の壁にぶつかった。
「何だこれ…?」
その大きな壁をさすっていると、それがもぞもぞと動き始めた。
「何だこれ?ギミック?」
そんな事を考えていると、壁だと思っていたものが大きく波打つように動き、その正体——巨大な緑竜の眼がゆっくりとこちらを覗いてきたのだ。
「さっき触ってたの、体の一部だったのかよ!デカすぎる!」
「おい、ガキ。お前俺の睡眠を邪魔しやがったな。食い殺してやるよ」
低い咆哮が洞窟全体を震わせ、岩肌がパラパラと崩れ落ちる。
「デカい実験体!俺の攻撃受けてみな!」
俺は弓を取り出し、実験的にそこに細長い矢の形をした剣をつけた。
「できるかなぁ?」
緑竜は口の中に膨大なエネルギーを貯め、それを一本の閃光として吐き出した。俺はそれを力勝負だと考え、連射撃×連撃斬を最初にお見舞いした。
光と光がぶつかり合い、洞窟全体が真っ白に染まる。耳をつんざくような轟音と共に、二つのビームが拮抗する。
数秒の持久戦の末——俺の連射撃×連撃斬が勝利し、緑竜の顔面を貫き、そのまま洞窟を貫いて空に大きな穴を開けた。崩れ落ちる岩と差し込む光の中、緑竜はゆっくりと地に伏した。
「ひゃあ〜つえぇ…これまだ未完成の状態だぞ?これもう、この人間界だと敵無しなんじゃね?俺も成長したなぁ」
そんな事を思いながら、俺は屋敷へと戻っていった。




