第48話 【VS悪魔】
「なんだ、なんだ!?」
「やはり増援が来たのか!?」
俺は城壁にいるのだが、下で掃除などをしていた騎士達がざわざわとし始めている。
あの轟音からするにカタパルトによる城壁破壊か?やはり、増援を呼んどいて正解だった
次第に戦闘音のようなものと、また何か巨大な物が当たるような轟音が駆け巡る。行って見てみたいが、自分の担当の区域があるからな。
「あ!いたいた!」
後ろから少しの鎧を着た冒険者が声をかけてきた。
「ルミナスの牙の人ですよね?ここは俺が見とくんで戦闘に参加していってください!そっちのほうが戦力的にもいい気がするんで」
「よし、わかった。お願いする!」
俺はそう言い戦闘が起こった場所に一飛で向かった。この戦闘でまた冒険者全滅とかになったら、国全体の戦力が削られ他の冒険者や騎士の指揮力ダウンにも繋がるからな。急いでいって被害者を減らしたほうがいいだろう
ジャンプで向かい上空から大量の火による明かりが見えた。モンスターは見た限りそこまで強くはないのか…?
俺は冒険者がモンスターの侵攻を防ぐ為に戦っている城壁に辿り着いた。
俺は一斉に薙ぎ払えるデスファイアをモンスターの軍勢に向かって何個も発射した。するとモンスターの軍勢は気持ちいい程に跡形もなく消え去っていった。
いや〜魔力が上がった分、これ魔法の威力も上がってないか?
そう思っていると、周りの冒険者が俺の所を見て拍手をし「すっげぇぇぇぇ!!!」と叫んだ。まぁそりゃあさっきまで苦戦していた魔物が一瞬で消し飛ばされたらな
すると城壁の眼の前に禍々しい翼と角を持った悪魔らしき人物が現れた。周囲にこの悪魔に勝てそうな人物はいない…
俺がいくしかないか
赤鬼に圧勝したことを踏まえて俺は自信いっぱいに城壁から降り、悪魔の目の前にたった
「俺は後藤政宗、ルミナスの牙所属の騎士だ」
俺がそう言うと、悪魔はどす黒い声で喋り始めた。
「自己紹介から始めるのか…俺はグレス・アヴァンタドール、見ての通り悪魔で魔王軍四天王のうち暴力の帝王バルゼイン…の3つの軍隊のうちの一つの将軍だ」
四天王の一人の軍隊の将軍?それはシルバよりも強いのか…?いや、弱いか。
俺がシルバに勝てるかは知らないがそれより弱いならいけるぞ!!
「おぉっと!失礼!あのクソ雑魚糞カスシルバとは比べないでもらいたい!あいつは四天王の中でも魔王軍幹部の中でも弱い位にいるんだぞ!?最低限、あいつよりかは流石に強いw」
「え…?」
人類最高峰であろう亡きワンドさんがギリギリで倒せたのがシルバなのに…?それよりも強いだと……?
「じゃあ勝負開始ッッッww」
踏み込んだ、と思った瞬間——グレスが消えた。
違う。見えていた。背後の空気が圧縮されるのを、微かに感じていた。
俺は振り返りながら肘を突き出す。奴の胴に入った——はずだったが、手応えは石壁を殴ったようにぶ厚く、こちらの肘が痺れた。
「人間にしては……強いがそこまでだな」
ポケットに手を突っ込んだまま、奴の踵が俺の腹に入った。
「——ッ」
声が出なかった。内臓が逃げ場を失ったような衝撃。極限的肉体の防御力を持ってしても、この一撃は完全には殺しきれなかった。俺は十数メートル吹き飛び、巨大な岩に背中から叩きつけられた。
(……いい。続けろ)
じわりと熱くなる背中を感じながら、頭の中で冷静に計算する。今の一発でレベルが27まで跳ね上がった。まだ全然足りない。でも——まだ戦える。
グレスがゆっくりと近づいてくる。
「なんで300年前の魔王はこんな人間に討伐されたんだ?軽くサンドバッグにでもしていくか」
絶好のチャンスだ。こっちはオートヒーリングもある。舐めていてくれ。もっと舐めていてくれ。
城壁の仲間たちへ手信号を一瞬で送り——俺は成長に身を委ねた。
一発目。
拳が頬を抉り、視界が白く飛んだ。ぐらつく意識の中で、極限的肉体がレベルを刻む。
二発目。
同じ場所に入ったはずなのに、さっきより少しだけ遠い。
三発目。
……硬くなっている。自分の体が、確かに変わっている。
グレスはそれに気づかない。退屈そうに、作業のように、俺を殴り続ける。
何発受けただろうか。
二十か。三十か。
気づいたときには、奴の拳の感触が変わっていた。岩を殴っていたものが、今は鋼を殴っているような、微かな手応えの変化。まだ奴は気づいていない。
俺の極限的肉体はLv56に達していた。
(……もう、いいか)
グレスが次の一発を振り上げた瞬間——目線が、ふと城壁のほうに流れた。
今だ。
静かに、半歩踏み込んだ。
グレスの目線が城壁に流れている——その0.5秒が、全てだった。
鈍い轟音が響いた。
グレスの巨体が、初めてよろめいた。
「……あ?」
奴の顔に、初めて「困惑」が走った。
「今のお前……さっきとは別物だな」
グレスが自分の腹を見る。俺の剣が当たった場所に、薄く赤みが差していた。
傷ではない。でも——確かに、通った。
「面白い。人間に久しぶりに『当てられた』よ」
奴が初めてポケットから手を抜いた。
「本気でやってやる」
空気が、変わった。
さっきまでのグレスから殺意という概念が抜け落ちていたとしたら——今は逆だ。この場の空気全部が刃になったような圧力。城壁の騎士たちがざわめくのが聞こえた。
グレスの体表に黒い靄が纏わりつき始め、体格がひと回り膨れ上がった。
「魔王軍将軍の本気——見せてやろう」
来る。
俺は瞬撃を発動し右側へ先に間合いを切った——が、グレスはそれに正確に追随した。さっきと動体視力が桁違いだ。
拳が来た。
受ける。
「——ッ!!」
吹き飛ばされた。今度は岩ではなく城壁まで届いた。石造りの壁に背中が突き刺さり、壁に亀裂が入る。
(……凄まじい。さっきの何倍だ)
だが、折れない。極限的肉体がまたレベルを刻んだ。Lv61。
立ち上がる。
グレスが眉を上げた。「立つのか」
「当たり前だろ」
本気になったグレスとの肉弾戦が始まった。
奴の拳は一発一発が城壁を砕く威力で、避けても衝撃波だけで体が揺れる。まともに受ければ即死に近い。
だが俺には成長がある。
一発受けるたびに、体が応えていく。
バックステップで距離を切り、気配探知で次の踏み込みを先読みし、疾風の如き速さで横に逸れる——この繰り返しで何とか致命打を避けながら、体に刻み込んでいく。
極限的肉体 Lv65。
拳の衝撃が、少しだけ「重いもの」になった。さっきまでの「致命的なもの」から変わってきた。
極限的肉体 Lv70。
グレスの拳を、今度は真正面から腕で受けた。吹き飛ばされたが、腕が折れなかった。
「……なんだ?」
グレスの動きが、一瞬だけ止まった。
攻撃に転じる。
連撃斬を展開しながら接近する。96連の斬撃は当然グレスの皮膚を大きく傷つけられないが——圧力として機能する。奴が一歩下がった。本気になって初めて、後退した。
そこに瞬撃を重ねた。
右肩に入った。
「ガッ——」
初めて、グレスが声を漏らした。
俺の攻撃力はこの戦闘の成長で既に大きく変わっている。極限的肉体の底上げが積み重なり、スキルの相乗効果が噛み合い始めている。
性能加速 Lv100→121。剣聖 Lv12→18。
剣術の精度が跳ね上がった。同じ一撃なのに、刃の入り方が変わるのが自分でわかる。
グレスが舌打ちした。
「……しぶとい。いや——」
奴が俺を見る目が、変わった。
さっきまでは「興味深い虫」を見る目だった。今は違う。
「……強くなっているのか?今この瞬間に?」
「そうだ」
「有り得ない」
「俺の固有スキルだ」
グレスの顔に、初めて「焦り」が混じった。
奴はまた踏み込んでくる。今度は連打だ。一発、二発、三発——俺は気配探知とバックステップを組み合わせながら、ギリギリのところで捌き続ける。それでも数発は通る。
だが通るたびに、極限的肉体が育つ。
Lv78。Lv83。Lv89。
「なんで——なんで硬くなっていく!?」
グレスが初めて怒鳴った。
俺はそれに答えずに、左から連撃斬、右から瞬撃、仕上げに剣技一の型——三段で叩き込んだ。
グレスが弾き返すが、今度は奴の腕が震えた
俺は気づいていた。
体が、完全に噛み合い始めている。
筋肉、剣の悪魔、疾風の如き速さ、機動力ブースト——それぞれが別々に機能していたものが、今は一つの動きとして繋がっている感覚。
剣の悪魔 Lv14→22。機動力ブースト Lv973→1001。
素早さの数値が跳ね上がる。
グレスの拳が、遅く見えた。
「……なに?」
奴が自分の拳を見た。速度が落ちたわけではない。俺が追いついてきているのだ。
グレスがまた踏み込む——が、今度は俺が先に動いた。
バックステップで懐に潜り込み、剣の腹で奴の脇腹を叩く。
轟音。
グレスが横にふらついた。
「——ッ、なんだこいつ……!」
奴が距離を取った。初めて自分から間合いを切った。
俺は追わない。追う必要がない。今この瞬間も、俺は成長している。
グレスは俺を見ながら、初めて表情が固まっていた。怒りではない。困惑でもない。
それは——恐怖だ。
「……やめろ、その目をするな」
「何の話だ」
「お前の目が変わってる。強くなるたびに、目が変わってる。俺を——本当に殺しに来ている目だ」
俺はそれに答えなかった。
「こんな人間、見たことがない……!」
グレスがまた踏み込んで——止まった。
拳を振り上げて——下ろした。
「……退く」
「は?」
「退くと言った。魔王軍の将軍が、人間相手に逃げるのは恥だ。だが——これ以上戦ったら俺が死ぬ。そういう判断だ」
奴の声が、初めて静かだった。怒鳴り声でも嘲りでもない、純粋な事実として言っていた。
「俺はまだ死ぬわけにはいかない。バルゼイン様への報告がある」
黒い靄が奴の足元に広がり始める。転移の魔法だ。
「……お前のことを魔界全体に知らせる。お前は危険人物だ」
靄が奴を飲み込んだ。
轟音も断末魔もなく、ただ静かに——グレスは消えた。
城壁から怒号のような歓声が降ってきた。
俺はその場に立ったまま、剣を下ろす。
体中が悲鳴を上げているが、折れていない。オートヒーリングが静かに傷を塞いでいくのがわかる。
(……生きてる)
今の戦闘終了時点でのステータス変化を頭の中で確認する。
極限的肉体:Lv56 → Lv91(SoftCap到達)
性能加速:Lv100 → Lv121
剣の悪魔:Lv14 → Lv22
機動力ブースト:Lv973 → Lv1001
剣聖:Lv12 → Lv18
「……限界まで来たか」
極限的肉体がSoftCapに達した。これ以上は、増加スピードが下がるだろう。
マッスル将軍が城壁から降りてくるのが見えた。
「政宗!!生きてたか!!あの悪魔を退かせやがった!!」
「なんとか」
「なんとかって顔じゃないぞお前!!」
俺は苦笑いした。体は正直で、将軍の声を聞いた途端に膝から力が抜けそうになった。
「……少し、休ませてください」
「当たり前だ。存分に休め」
俺はゆっくりと地面に座り込み、空を見上げた。
戦闘の余韻の中で、ひとつだけ確かなことがあった。
グレスは逃げた。四天王の将軍が、俺から逃げた。
それはつまり——まだ上がいる。
シルバより強い将軍が、まだいる。
(もっと強くなれ。まだ全然足りない)
固有スキルの画面を開くと、新しい通知が点滅していた。




