第45話 【要塞都市奪還⑥】
中心部へ向かいながら、俺はマッスル将軍との訓練のことを思い出していた。
いつ死んでもおかしくない世界だ。大切な人ができても、家族ができても、ふとした瞬間に失う。そんな現実の中でマッスル将軍が俺に施したのは、肉体的な強化ではなく精神的な強化だった。
「お前の成長速度は異常だ。俺すら軽く超えるだろう。だからこそ、お前の精神を鍛える」
それがマッスル将軍の言葉だった。
精神力というのは隠しステータスに近いものだ。スキルの欄には現れない、より深層に刻まれた精神の核。スキルとして発現する精神強化は、その一側面に過ぎない——意図的に具現化された精神であって、知的生命体の芯に根ざした無意識の精神とは別物だ。その深部をマッスル将軍は鍛えた。
おかげで今は、感情に引きずられることなく状況を直視できる。
……そのはずだったが。
先行させたグエゴとバレットが、無数の針で串刺しにされていた。抵抗した痕跡があちこちに残っており、体の各所がねじれている。二人とも、もう動かない。
最近の魔物の力は明らかに上がっている。一国の総力を尽くしても、一つの都市すら制圧しきれないのか。
感情が揺れるのを感じながらも、俺は前を向いた。
目の前に、二人を仕留めた張本人が現れた。
二足歩行の蛇——あるいはトカゲに近い外見。両手に30cmほどの針を無数に携えている。そいつは口をにたりと歪め、こちらを見た。
「さっきの雑魚騎士とは違うようだなぁ。まぁ所詮人間、弱小種族は絶滅しなw」
針が飛んでくる。
上昇したステータスのおかげで、針の軌道がスローモーションのように見えた。指でパシッと弾き、その勢いのまま懐へ踏み込んで腹に拳を叩き込む。
「グハッ!?」
拳が腹を貫いた瞬間、そいつは陸に打ち上げられた魚のようにピチピチと痙攣し、そのまま動かなくなった。生命力が極端に低かったのか、あっけない幕切れだった。
中心部の城にたどり着くと、周囲にも何とか生き残った騎士たちが集まりつつあった。
しかしその数は少ない。4人1組のパーティを100組——合計400名で臨んだはずが、ここに辿り着いたのは15人程度だ。しかも片腕が欠損している者、眼球をえぐられた者、外見は無事でも内臓が破裂している者。まともに戦える状態の者が何人いるか。
この先の城内は、ここまでより更に強い敵が待っているはずだ。
遅れてワンドたちが到着した。ルミナスの牙の最強メンバーで固めた精鋭編成——全員無傷だ。周囲の騎士たちから嫉妬の視線が向けられているのが分かるが、仕方のないことだ。400名全員で挑んだとしても、この4人には敵わない。城内で欠員を出さないために最強で固めるのは当然の判断だ。
ワンドが剣を前方へ掲げた。
「騎士たち、行くぞ」
俺たちは城へ踏み込んだ。




