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第37話 【将軍】

デーモンケンタウロスを瞬殺したマッスル将軍は、王都に用があるとのことで帰りの馬車に同乗することになった。偶然にも俺とグエゴ隊長の馬車と同じ馬車だ。


馬車が走り出すなり、マッスル将軍が口を開いた。


「なぁグエゴ、お前全く強くなってないやないか」


「い、いえ……今日は相手が想像以上に強力で」


「俺が来なかったら全滅してたぞ?王直属の騎士の上位層が集まっていたのに、デーモンケンタウロス一匹も仕留められないとは」


「す、すいません……」


グエゴ隊長が珍しく萎縮している。それほどの格上なのだろう。


「そや、用があって帰ってきたんやが——お前ら、異界の地の話は聞いたか?」


異界の地。その言葉に俺の耳がぴくりと反応した。別大陸の種族から協力を取り付けるような話だろうか。


「いえ、聞いていません。少し詳しく教えていただけますか」


「ほな話すぞ。異界の地——つまり異世界から、勇者と呼ばれる存在を召喚するんや。異世界からこちらの世界へ渡る際に固有スキルを授けられ、成長倍率が400倍の存在が現れる。その勇者と共に魔王を討伐しようという計画や。異世界から人を呼び寄せる魔法自体は、太古の文献をもとに魔導帝国ノヴァが術式を完成させているが、必要な素材の調達が莫大な量になるため他国にも協力を求めているとのことや」


「勇者……!過去の文献から、ということは以前にも勇者召喚が行われたことがあるんですか?」


グエゴ隊長が前のめりになった。


「複数の古代遺物の調査から、約5万年前と300年前の2回、勇者召喚があったと分かっとる。しかもその時の勇者はまだ生きているとかなんとか」


「5万年前と300年前……」


「300年前の勇者はバモス共和国が『勇者王アーサー』として保有しているのは有名な話や。ただ5万年前の勇者は4万9千年前の時点で行方不明になっとる」


「1000年は生存記録があったのか……というか、勇者王を名乗るならアーサーが魔王を倒せばいいんじゃないですか」


「勇者王アーサーはもう爺さんやからなぁ。ワンドよりは強いらしいが、それでも魔王の方が上らしい」


馬車に揺られながら話を聞いているうちに、頭の中でいくつかの疑問が浮かんだ。勇者召喚の技術はロストテクノロジーではなかったのか。魔王は周期的に出現するものなのか。そして——400倍の成長倍率を持つ勇者、か。


「マッスル将軍、一つ聞いてもよいですか。我々はこれからどうすればもっと強くなれますか」


「威力が根本的に足りてなかった。技術より先に肉体強化が必要やな。——あと、そいつは才能あるぞ」


マッスル将軍の視線が俺に向いた。


「あ、彼は最近入団して急速に頭角を現してきた政宗という者です。グラニス要塞都市騎士団長マフィスの推薦で入団しました」


グエゴ隊長が俺を指さしながら説明した。


「せっかく王都に帰るんやし、任務を済ませたらこいつを俺が直接特訓してやるよ」


「!?……良かったな政宗!マッスル将軍直々の特訓なんて、滅多にないことだぞ!」


「ありがとうございます!」


礼を言い終えた俺は、すぐに固有スキルを開いてHyperionの周回を始めた。


たった今気づいたのだが、Hyperion10周目の実績で【成長倍率2】がアンロックされるらしい。成長倍率2は成長倍率そのものを乗算する——つまり今の成長倍率が丸ごと跳ね上がるということだ。残りの帰路でできる限り周回を重ねる。指が止まる理由がなかった。

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