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第32話 【リッチ】

洞窟の中に入ると、禍々しい魔力はさらに強まっていった。


「リッチってどこにいるんですかね?」


俺がそう聞くと、「この洞窟の最奥あたりじゃないか?」とドルフィンが答えた。


洞窟の最奥に辿り着くと、そこは円形状の空間だった。中心には大きな玉座があり、そこに骸骨が一体座っているだけだった。


「なんだよ!これだけかよ!」


他の中位騎士がそう叫んだ瞬間、骸骨がカタカタと音を立てながら立ち上がり、洞窟の上から杖のようなものが落ちてきて、その骸骨の手にすっぽりと収まった。


「ヨワキニンゲンヨ(弱き人間よ)……|オマエラヲココデコロス《お前らをここで殺す》」


そう言った途端、ドルフィンが「固まるな!皆離れろ!」と叫び、俺たちはリッチらしき魔物から散り始めた。

その一瞬、リッチはドルフィンに向かって呪文らしきものを高速で詠唱し、第四階位火属性魔法(魔法には第一階位〜第十階位まである)である業炎砲(ヘルバスター)を放った。

ドルフィンはなんとか横に回避したが、ヘルバスターの余波で洞窟全体が崩れ始めた。


「みんな各自で洞窟から脱出しろ!」


ドルフィンはそう叫びながら、崩れゆく洞窟の中で脱出ルートを探してどこかへ消えていった。俺たちも各自でルートを見つけ、なんとか脱出した。


地上に出ると、下級騎士たちが崩れた洞窟を見て俺たちを心配していたが、無事な姿を見て安堵し始めた。


そんな時、崩れた洞窟の奥からブゥンという低い音が響き始め、瓦礫ごと洞窟全体が浮き上がり、リッチがその姿を現した。


「|チョコマカトニゲヤガッテ《ちょこまかと逃げやがって》」


リッチが手をかざした瞬間、周囲にゾンビが湧き始め、下級騎士たちがその対応に追われ始めた。


「このリッチ……強いな」


ドルフィンがそうつぶやいた。俺は他の中級騎士たちに向かって言った。「あいつは魔法しか使っていない!なら詠唱が終わる前に攻撃すればいい。距離を詰めれば勝ちだ!」


そのアドバイスと同時に、リッチが何らかの詠唱を始めた。俺たち中級騎士は一斉に前へと詰め寄り、詠唱が終わる前にリッチへの攻撃に成功した。


「グラビティ!!」


リッチがそう叫ぶと、俺たちは空中へと吹き飛ばされた。しかも、いわゆる無重力のような状態になり、なかなか地上に降り立てない。


「キシアイテナド(騎士相手など)……|クウチュウニトバセレバ《空中に飛ばせば》、|ムリョクカデキルヨワキソンザイ《無力化できる弱き存在》……」


「サテト(さてと)……|チジョウノジャクシャモヤルカ《地上の弱者も殺るか》」


そこで俺はある考えを思いついた。任意型上級スキル【バックステップ】——後ろに向かって使えば、そのままリッチの元へ突っ込めるのではないか?スキル説明には「最適な位置へ移動」とある。逃げるだけのスキルだと思っていたが……攻めにも使えるぞ!


しかも今、リッチは下級騎士たちをいたぶって遊んでいる。油断している今がチャンスだ!

俺はリッチに背を向け、【バックステップ】を発動した。瞬時にリッチの目前へと移動する。


「ナヌ(なぬ)!」


反応できないリッチの顔面に、全力で剣を叩き込んだ。バコッという音とともに、骸骨の顔面が粉々に砕け散った。それと同時に、リッチは地面に崩れ落ちた。


《レベルが5上がりました》

《常時型上級スキル【魔術理解】を獲得しました》

《常時型上級スキル【性能加速】を獲得しました》


色々と獲得できたな。


そう安堵していると、背後からドサドサと音がした。グラビティで吹き飛ばされていた中級騎士たちが、ようやく地面に落ちてきたのだ。


「お前、やっぱりすごいな!」


グロック、ドルフィン、他の中級騎士たちが感心した様子で拍手を送った。

下級騎士たちはまだゾンビの対処に追われていたため、俺たちが助太刀に入り、一瞬で制圧した。


その後、一行は馬車に乗り込み王都へと戻った。意外と日帰りで行けるものなんだな。

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