第24話 【謁見】
馬車が走り始めて5分後、木々の合間から巨大な王城が姿を現した。
「デカいな……」
思わず声が漏れた。馬車を降りて正門をくぐると、内部はさらに圧倒的だった。どこを見ても金細工や大理石が視界に入り、天井には緻密な壁画が描かれている。廊下を歩くだけで場違いな感覚が全身を包んだ。
案内された客室で買ったばかりの服に着替えながら、久しぶりにステータスを全体確認した。
───────────────
名前:後藤政宗
種族:人間
レベル:51(SoftCap)
生命力:224/224
魔力:182/182[+1.5]
体力:225[+86][+12]
攻撃力:241[+86][+12]
防御力:220
素早さ:230[+12][×1.2]
----スキル----
固有スキル:《段階的な成長》
**基礎スキル**
・ランナー(53)
・剣術(83)[+21][×1.08]
・忍耐(49)
・荷物運び(5)
・清掃(40)
・フットワーク(23)
・距離感(24)
・思考速度(20)
**上級スキル**
─常時─
・筋肉(43):体力,攻撃力に+86[Lv*2]
・クリーン(3):魔力に+1.5[Lv*0.5]
・剣の才能(19)[+2]:基礎スキル【剣術】に+21[Lv]
・剣の悪魔(2):剣の才能に+2[Lv]し、剣術を×1.08[Lv*4]%する。また素早さと攻撃力に+12[Lv*6]する
・清掃者(13):清掃力が+650[Lv*50]%
・間合いのコントロール(31):間合いに対しての理解や感覚的判断に+186[Lv*6]%
・機動力ブースト(20):機動力や身軽さに+44[Lv*2]、素早さに×1.2[Lv]%
─任意─
・連撃斬(20):斬撃を20[Lv]回追加して行う
・気配探知(11):直径55[Lv*5]mの範囲の気配を探知する(気配遮断よりLvが低い場合無効化)
・バックステップ(5):瞬時に最適な後方の位置に移動する。クールダウン600/5[Lv]秒
───────────────
最初の頃に比べれば明らかに成長している。ただ、レベルの横にSoftCap——上昇率が緩やかになる制限——がついていた。
「これからはレベル上げが大変になるのか……」
久しぶりに固有スキルも開いてみると、DUPが30から32に上昇していた。放置のおかげで[10:2](Dリソース^1.2)と[10:3](AリソースにA₆〜A₁₀追加)も購入できており、その効果が思った以上に強くDC#4のクリアでDリソースがさらに強化されていた。ただし第一停滞用SoftCapがまだ解放されていないため、攻略速度は依然として遅い。[11:1](BリソースのB₁^1.1)も早く取りたいがコストが高すぎて手が届かない。
そうこうしているうちに謁見の時間になった。
「礼儀作法は俺が小声で指示する。安心しろ」
マフィスにそう言われて少し気が楽になった。
玉座の間への廊下は長く、歩くたびに足音が高い天井に響いた。扉が開かれると、広大な空間の奥に玉座が見えた。王が座り、その左右には甲冑姿の騎士と礼服をまとった貴族たちが整列している。
「背筋を伸ばして真っ直ぐ前を向け。周りを見渡すな」
マフィスの小声が耳に入り、俺は言われた通りに姿勢を正した。
玉座の前まで進んだところでマフィスが片膝をついた。俺もそれに倣い、静かに片膝を地面につけて視線を床に落とす。周囲の空気がピリついているのが、地面を見ている俺にも伝わってきた。
「面をあげよ」
低く、静かな声だった。
「騎士団長マフィス。要塞都市グラニスで何があった」
「要塞都市グラニスにて魔王軍、四天王、オークの変異体による進攻を止められず、グラニスを占領されました」
王は何も言わなかった。沈黙が玉座の間に満ちる。その圧力は、ただ床を見ているだけの俺にまで重くのしかかってきた。
「……クリスクと共に迎撃を試みましたが、失敗しました。魔王軍の戦力は我々の想定を大きく超えています。今すぐ各要塞都市の戦力を王都へ集結させ、防衛を固めるべきかと」
「負け犬が口を開くな」
静かだが、刃のような言葉だった。
「要塞都市の一つを失うことは想定の範囲内だ。だが全戦力、全市民を死なせたとなれば話は別だ。他の都市の者たちが恐怖に駆られ、士気が落ちる。そちらの方が遥かに問題だ。失望したぞ、マフィス」
「……私は、騎士団長を引退したいと思います。私の指揮力と判断力では、これ以上人々を守れない」
玉座の間がざわついた。
「ただ——最後に一つだけ、お願いがございます」
「言ってみろ」
「私の隣にいる後藤政宗という者を、騎士にしていただけないでしょうか。この者には並外れた才がございます。必ずや王国の力になります」
王の視線が俺に向いた。その重さを、俯いたままでも感じ取れた。
「……マフィス、お前がそこまで言うか」
少しの間があった。
「よかろう。騎士一人を増やすことに大した費用はかからぬ。マフィス、お前の給料が浮く分でちょうど釣り合う。——後藤政宗、明日より騎士として訓練を始めよ」
「はっ」
俺はマフィスに倣い、深く頭を下げた。
謁見が終わり、俺たちは玉座の間を後にした。
マフィスはその足でクリスクと親交の深かった侯爵のもとへ向かい、事情を説明してクロエを預けた。そしてマフィスは静かに王城を去っていった。
見送る言葉が見つからなかった。ただ、その背中が小さくなっていくのをただ見ていた。
謁見の後、俺は王直属の騎士団——ルミナスの牙——への配属を告げられた。
何の説明もないまま騎士団の寮へと案内され、その日は終わった。




