第20話 【教育①】
揺れる馬車の中で、俺は固有スキルの画面を開いていた。
窓の外には荒れた山道が続いており、戦火を逃れた人々がまだちらほらと歩いている。グラニスの惨劇がまだ終わっていないことを思い知らされた。
成長倍率は少し伸びて130倍。もっと伸ばせれば強くなれるはずなのだが、何故か最近の進みが鈍い。
Dimsのアップグレードはようやく[10:1](MR#1 Upg#3の最大購入数を+10)を購入できたが、[10:2]や[10:3]はコストが高すぎて手が届かない。DリソースのDUP振り分けが問題なのか、それともAリソース全振りの方針が間違っているのか……
そんなことを考えていると、手綱を握っていた騎士団長が後ろを向いた。
「本当にすまないことをした。騎士団長として恥ずべき結果だ……大量の部下を死なせた上に、要塞都市グラニスまで魔物の手に渡してしまった。クリスクも死なせてしまった。俺はこれを機に騎士を引退する」
「貴方のせいじゃないですよ。相手は化け物クラスの魔物を何体も連れた戦力差絶望的な相手でした。ただ……グラニスにいた住人たちのことは、残念でした」
「間接的に全住人を……か」
騎士団長はしばらく黙った後、前を向いたまま静かに続けた。
「王都到着まで2週間はかかる。その間の夜、稽古をつけてやろうか。クリスクの娘を助けてもらった礼だ」
「はい、喜んで」
そう答えると騎士団長は少し微笑み、また手綱を握り直した。
固有スキルの進みが鈍い以上、スキルを育ててレベルを上げるしかない。騎士団長に稽古をつけてもらえるなら願ったり叶ったりだ。しかしそれにしても、何故こんなに固有スキルが進まないんだ?
じっくり画面を観察していると、実績の欄にこんな記述を見つけた。
【レベル60到達時、第一停滞用SoftCapを消去】
俺は小声で呟いた。
「……固有スキルを伸ばすにもレベルが要る。レベルを上げるにも固有スキルを伸ばさないといけない。鶏と卵か」
隣ではクロエがずっと下を向いたまま、一言も発していない。いつか元気になってくれるだろうか。
そうこうしているうちに、山の稜線が夕焼けに染まり夜になっていた。
騎士団長が馬車を止めて降り、少し体をほぐしながらこちらをちらっと見た。
「そういえば、君の名前を聞いていなかったな」
「後藤政宗です。冒険者ランクD、レベルは42」
騎士団長は顎に手を当てた。
「実力はCランク相当といったところか。まだまだ伸びそうだな。とりあえず剣術を見せてくれないか」
俺は剣を抜き、自慢の素振りを披露した。
「おぉ……技術はそれなりに高い。剣術の基礎スキルはどのくらいだ?」
「40前後ですかね」
「それは才能があるぞ。もしかして上級スキル【剣の才能】を持っているか……?」
「持ってます。レベルは5ぐらいです」
騎士団長の目が輝いた。
「よし!この2週間で任意型上級スキル【王国騎士流剣術】と常時型上級スキル【剣の悪魔】を叩き込んでやる!」
「え……そんなに剣の才能ってすごいんですか?」
「あぁ、とてつもなく凄い。育て甲斐があるぞ!」
こうして、騎士団長に鍛えられる2週間が始まった。




