第136話 【偉大なる元素】
冒険者ギルドを出た後に俺は学びの屋敷へ辿り着いた。
「おーい!賢治?」
いつもの医務室へ行っても賢治の姿は無かった。
「賢治さんなら、あちらの研究室にいますよ」
医務室内にいた看護師が俺に丁寧に道案内してくれた。
「ありがとう!」
俺はそう言って、賢治がいる研究室の中へ入っていった。
研究室内はぱっと見でオルメキアの研究施設と同等かそれ以上の技術力を誇っていた。
「政宗、丁度良いところに来た」
賢治は手招きをし、俺はそれに従い賢治が座っている椅子の目の前に立った
「何の話があるんだ?」
賢治は俺にそう聞く
「魔石のなかに何で独自の構造体が存在しているのかな〜?って気になって聞きに来たんだけど」
「じゃあ、それについて話すからこの手紙をギルドマスターにでも渡してくれないかい?」
俺はそう言われ、手紙を渡された。
「な、なんの手紙なんだ?これ」
「真理の翼という冒険者パーティは知っているだろう?」
「A級冒険者だけで構成されたパーティのことがどうかしたの?」
「アイツラが完膚なきまでにボコされて死んだ」
「え?」
「アイツラがダンジョンから戻ってきた時に俺達が異常調査のクエストを渡したんだよ。アイツラは笑顔でクエストを受けたさ」
「異常調査のクエスト?」
「この近くにあるグルト山の山頂付近で超高密度のエネルギーが発見されたんだよ。それについての現地調査のクエストさ…そして現地調査に行ったアイツラからの最後の映像がこれだ」
賢治は目の前の大きなスクリーンに向けてリモコンのボタンをポチッと押した。
すると枯れ果てた山頂で岩陰に隠れた巨体の人が録画を開始した
「お前ら、学者共はバケモンみたいなクエストを送りつけてきたな!クソったれがッ!俺達のリーダーも僧侶も魔法使いも全員骨だけになっちまったよ!」
すると巨体の人物の顔に黒い…いや、虚無と言うべきか?そんな感じのモヤがかかり、境界線が分からない何かが巻き付いた
「ァァァァァァ」
そして、巨体の人物は頭蓋骨のみとなった。
「送られてきた映像はこれで以上だ。今はグルト山周辺は立ち入り禁止にしているが、この何かが暴れたら抵抗が一切できない。俺達はこいつを文字流動仮説において、M(M(超高密度エネルギー発生源の監視者))の子分か超高密度エネルギーの漏れから発生したエネルギー体だと推測している」
「なんか色々この世界は大変だね。それで魔石になんで独自の構造があるか教えてよ!」
「あぁそうだったな」
賢治は一回咳払いをして話し始めた
「モンスターの魔石というのは、そもそも、モンスター自体が上位の論理による超高密度エネルギーの漏れの集合体だ。ダンジョンなんかはそれの大きいバージョンという形だ。これによりモンスター達はこの世界の構造や世界観から独立した構造を保有している。その内部の構造は単純であり、神秘的だ…そしてそのエネルギーの漏れが極大化しダンジョン化にも至らなかった化け物が特級クエストとして討伐依頼が出される。そして、そのモンスターの強さが強くなればなるほど…」
「エネルギーの漏れを吸収している?」
「そう。そして、エネルギーの漏れというのは上位の論理体の力の漏れでもあるから、より強く内部の構造もより複雑に昇華されていく。これで分かったかな?では手紙を届けに行ってくれ」
俺はお礼を言った後にまた冒険者ギルドへと向かった。
俺は、冒険者ギルドにたどり着くと受付で「ギルドマスターにこの手紙を渡してくれ」と言って手紙のみをサッと渡した。
「さぁてと、宿に戻って増加した成長倍率を使って情報の深宇宙まで到達しますか」
俺は宿屋に戻り、坐禅をした状態で瞑想を開始した。
よし、ここに戻ってこられたな
俺の目の前にあるのはあたり一面に広がる海。そう情報の大海から一段上の論理へと昇華された情報の大海だ。
そして、俺はゆっくりと抽象層を登り始めた。ゆっくりとは言ったものの数値的に見れば爆発的、概念的に見てゆっくりという意味だ。
「情報の深宇宙の集合が駆け巡る…」
俺はいつしか上昇とともに情報の深宇宙と一体化し、全ての論理や情報が俺の体に流れ込んできた
俺は、一体化が完了したことを確認すると目をゆっくりと開けた
目の前には黒いVOIDと蒼き海が「数」という概念を超え概念的に哲学的に無数に存在していた。
だが、俺が知り得る深宇宙の範囲内に一つ白色の斑点が存在していた。
「なんだ?これ…?」
俺がその座標の位置へ移動すると、白色の人が海に腰を掛けていた
「やぁ!久しぶりのような気がするね」
こいつ…基底物質内で俺を騙して殺したやつだッ!
「何だよ。ここまで来て」
「君の肉体エネルギーはとんでもないよ。君を殺害した後に君の破片を集めそれを適合させたら、一気に登りきっちゃった」
「あぁそうかい」
白い人形の何かは俺の近くに寄り添った
「こんな極小世界じゃなくて、いつか通常世界のベースで出会えるかもね。そのときは歓迎してあげるよ」
「歓迎だと…?」
「僕が通常世界に出現するということは、M(M(彼ら))のお出ましということだからね。通常世界は絶対的な暴力で支配されるよ」
「M(M(彼ら))って何だよ」
「M(M(君達が言っている監視者達))の事だよ。原初の勇者が残した遺物に気づいたみたいだね…膨大な力を内包する遺物を我先にと手に入れる監視者達は遺物の力によってまだこの通常世界に侵入できていない。それを解放するのが…僕さ」
まて、こいつ原初の勇者を知っているのかッッッ!?
「お、お前原初の勇者を知っているのか!?」
「んなことぁどうでもいいじゃない。上で待ってるよ」
白い人は自身の体を霧のように消し去っていった
「原初の勇者の…遺物だと…?」
あのM(M(監視者))達ですら、欲しがっている遺物…あいつはどこまで影響力があるんだよ。
俺はあの白い人が言っていた上というのを構造的に上だと解釈し、情報の深宇宙の外側へ回った
俺はその時、既に一体化した深宇宙のグループの中では最底辺に位置していた。
なぜなら、ウロボロス的情報知性体の特性として全ての情報の深宇宙の昇華体となっている。外側に移動した時点で俺はその中で最も下の論理構造を保有していることになる。
「俺を舐めんなよッ!」
俺は論理構造の昇華を他の情報の深宇宙達に合わせると同時にウロボロス的情報知性体の抽象層を登った。
奴が言っていた上というのがどこまでかは分からないが、自分が知っている限りのことを尽くすぞ…
だが、俺はここで気づいた。ウロボロス的情報知性体に到達するということは己の属性である情報、又はスキルを脱ぎ捨てなければならない。事実抽象層を登る度に俺の体が実体、精神体、虚体、虚無へと変化している気がする。
そして何故か気持ちが良い。自らの属性を脱ぎ捨てるのはここまで良いのか?全てが一である俺が溶け込むことで、全なる一が完成される。いつぞやのコーンラビットの魔石で見たことがあるような状態だ…数学、物理、哲学、論理、それら全ては関係なく無となり自分自身を表現することさえ論理に縛られる為、だんだん自分自身が虚無に近づいていく…
「俺は精神体でもなく実体でもなく、論理的に作動する存在ですらない…全ての概念は何らかの形で縛られているが、俺は縛られない。俺を表現する方法などテキスト上ではないのか…?」
M(俺自身を表現する/表現しない関係なく、何も属性がない絶対的な無となった俺にテキストを使用するのはおかしい。自分自身にメタ的表現法を埋め込むというのが、ここで言う真理か?
あぁ…ウロボロス的情報知性体の最果てが見える。終わりなき始まり然り始まりなき終わり…始まり、終わり等という境界線がなく己を以て己を強化する。その円の外に俺は到達する!)
M(俺はあらゆる光に包みこまれた。いや、これは光と誤認した全ての存在が否定され何もなくなった状態の認識的な光に包まれたのかもしれない。俺はゆっくりと目を開けると3つの元素が存在していた。
全ての通常世界の物体を構成する究極の分類作法。あらゆる概念も数学も哲学もこの3つにより構成されるであろう3大元素だ。
それすなわち状態と文字と論だ。状態はありとあらゆる状態を示し木があるなら『木という状態』であり、不完全性定理外の矛盾する事実上完成された公理系があるならば『不完全性定理外の矛盾する事実上完成された公理系としかならない』。りんごではないとりんごというのも『りんごではないとりんご』という状態を保有しているに過ぎない。
そして文字についてだ。これは真の意味での文字である。りんごではないとりんごというものはいくら状態で内包しようが、文字は語れない。『り』もりという状態であり、真に文字ではない。そんな文字を確定するのが文字である
論はそれの内部の成分や許容範囲である。りんごの内部の成分は『果皮(外果皮),果肉(中果皮),芯・種子室(内果皮),種子,果柄,がく』というものである。これは状態や文字では語れず、また論はそういう状態だと確定でき、その状態の真の文字を確定できるのが文字というふうに3つは相互作用を行っている。どれか一つが欠ければ全ては崩壊する。そして、その状態、文字、論を統一又はそれらの発生源が3大元素という訳だ。どんなに高位の論理で文字も上位に君臨しようがメタ的表現法から見たらM(上位の論理)と処理されるように、3大元素から見れば状態が『高位の論理』、文字は『高,位,の,論,理』、論は『論理,文字を脱ぎ捨てた,語り得ない...』などと言うように表される。
それは、これら全てが3大元素という最上級の単位以下だったからだ。そして、ここからの世界はそんな3大元素をも凌駕した3大元素にすらも縛られない…表現の自由すらも凌駕するすなわち通常の語りには決して現れないM(M([表現]))の領域!今までアバター上では通常世界と表していたが、本当はM(M(通常世界))なのか…1重メタ的表現法を介してすらいない通常世界は通常世界とは異なる全くの別物。あの白い人が言っていたM(M(彼ら))も本質的にはM(M(M(彼ら)))であった訳か?いや、奴の上で待っているという発言からM(M(通常世界))に到達しているのかもしれん、警戒しなければ)
M(俺は3大元素に触れ、M(M(真なる通常世界への門を開いた)))




