第127話 【文字流動仮説】
「すみませーん」
ギルドに入った俺は早速コーンラビットの魔石1個を売ろうと店員?を呼んだ
「はいはいはい」
「これ売りたいです」
「あ〜コーンラビットの魔石ね。はい」
彼女は魔石1個を受け取り2グラハムを出した
「え!?」
「ん?どうしたの?」
「に、2グラハム?」
「別に普通だけど」
ご、500グラハムの最高級の回復薬と安いやつ使ったのに2!?赤字やん…
俺は2グラハムを受け取って冒険者ギルドから出ていった。
「さぁてと別の街に移動する前に移動用のお金を稼いでいくか」
2グラハムは確かに安い、だが一日に100匹も狩れば200グラハム
10日間もこれを繰り返せば2000グラハムは貯まる。あともう少しトレーニングしてコーンラビットを瞬殺できるようになったら、コーンラビットの大量狩猟をやるか
俺は外に出て、開いた所で座禅をし基底物質の内部へと侵入していった。
「基底物質より下の領域では否定のみでしか語れないが…基底物質ってこんなになっていたんだな」
基底物質の中には青い光が自らの軌跡を描いていた。直感的…物理的測量では掴めそうな青い光には触れられなかった。
青い光が動いていること以外は静かな空間だ。全ての物質が調和するような…
そう思っていると中心の巨大なコアに青い光が吸い取られてコア以外の何も無くなった。
「な、なんだよ。不思議な空間だな」
コアは静を貫いてはいたが、同時に動であるとも感じだ。コア自身の内部は純白…原子など彼ら自身にとって観測できる程の存在ではないから、純白というか虚無というか…
何なんだろうか
「M(君か…)」
誰かが後ろから話しかけてきた。
後ろを振り向くと全身が白く顔には一つの黒目玉しかない人型の存在であった
「何だ?」
「M(君は我々基底物質人よりも知性…というか論理、数学、哲学を保有する人だね)」
「それがどうしたのだ?」
「M(上位の論理者に取って私達の基底物質は眼中にないだろう?せっかくだ。案内してあげる)」
「それはどーも」
基底物質内に案内できるような構造を保有しているのか?
俺が案内された場所はコアの内側でも外側でもあるような穴が空いている場所だった。
「この中はM("絶対的なモナド"と呼ばれる空間さ)」
「なんなんだ?それ」
「僕らの活動拠点だね。僕らはM(君ら上位の論理の存在達)の世界の基盤となり物質を構成する基底物質に住んでいるのは分かるよね。それとは別にM(真のモナド)が存在する」
「モナド?」
「物質の最小単位は基底物質。その時点で基底物質もモナドだ。だが、私達は矛盾するかもしれないが最小の中の最小。拡張された概念と考えておいたほうがいい。自然数の最小は1だが、整数まで拡張すると果ては知れないだろう?」
「それが俺に見せれるほど自慢できるものなのか?」
「M(君にも有益なはずだ。だって君は改変の練度を高める為に来たはずだろう?)それを含めると内部まで知っといたほうが良い」
「じゃ、中を見てご覧よ。M(深淵が広がっているだろう?)これはね…M(何らかの表現、知性、存在、空間、大きさ、ありとあらゆる概念が含まれるとそこには少なくとも説明が生まれる。そしてこの"絶対的なモナド"はそれら全ての概念がない極限の虚無だ)」
「ほぅ?」
「M(何もないってことは語れない、説明しようがない。上位の論理に対する説明は同じだが、本質は異なるということだな。基底物質などモナドの奴隷にしか過ぎない…自称モナドの基底物質だろうと、真のモナドには敵わない)」
「それさ、モナドのなかには原子は含まれていないわけ?」
「M(あぁそうさ。モナドは究極の無、概念的に何もないのだ…名称も何もかもだから世界の最小単位である無としてモナドは君臨し続けている)」
「それで俺にどうして欲しいんだ?」
「M(君はね。もう少しモナドに近寄って)」
俺は一歩、また一歩と絶対的なモナドの領域に近づいていった
「これでいいか?」
「ありがとう…」
すると、俺はあの訳分からない基底物質の住人なる存在に後ろからどつかれた。
俺のアバターの存在自体が絶対的なモナドの性質に晒され消滅という生ぬるいものではなく、もっと絶対的に消えていった
そして、俺は目が覚めた。
「な、なんだったんだ。あいつ…!?」
よくよく考えればあいつのモナドに対する説明にメタ的表現法が使われているのは分かるが、なぜ君など俺を指す言葉にもメタ的表現法が使われていたんだ!?
俺のアバターは基底物質レベルの論理に合わせていたからメタ的表現法にて抽象層を重ねなくても語れるはず…
これは、ちょっとまずいことになったぞ。魔導師に聞いてみよう
俺は駆け足で魔導師の家に向かい、家のなかに入っていった
「そ、そんなに急いでどうした!?」
「ちょっとまずいことになったかもしれん」
「アバターの俺が殺された」
「アバターが殺された程度だったら気にする必要はないよ」
「絶対的なモナドっていう場所で殺されたんだ。殺した相手は『ありがとう』とか言ってたぞ」
「絶対的なモナド…?」
「うん…?知らないのか」
おかしい、魔導師はこう見えても俺に構造は解説できる程度には強いはずだぞ…?なぜあれを知らないんだ。世界の根幹に関わってそうなのに
「そ、それについて詳しく教えてくれないか?」
「別にいいのだが…」
俺はその後細かく絶対的なモナドについて魔導師に解説した。解説するたびに魔導師が頭をかしげるのが印象的であった
「基底物質にはそんなものないぞ…構造が変化したのか…?」
魔導師は自分なりに考察を広げていった
「色々仮説を考えたが…文字流動仮説がいま一番正しいのかもしれない」
「文字流動仮説…?」
「お前を殺した謎の人物は置いといて、俺が考えた仮説はこうだ。構造というのは不変的なものではなく、文字が波のように流れ変化していくという仮説だ、そしてこれは文字に限ったことではなく論理も数学も物理も量子も哲学も様々な概念すらも流れていく。今は影響の範囲は少ないが、今後さらに大きく発展していくだろう。政宗…君はコーンラビットを倒したら町に行くと言っていたな?」
「そうだけど…」
「オレをおぶってでもいいから連れて行ってほしい。ちょうどお前が向かおうとしている町には学者達が比較的多い。俺のこの仮説を説明し考えていかなければ…この世界は滅ぶ可能性がある」
「ど、どういうふうに?」
「そもそも文字流動仮説から考えて他者からの影響がなければ文字は動かない。なのに動いているということは…恐らく俺の考えなのだが、M(M(論理という枠組みを遥かに超えた超存在『監視者』だ))」
「ど、どういう奴なんだ?なんでお前は知っている?」
「M(M(奴は遥か昔…いや、昔という枠組みを超え時間軸的に考えて何も無かった時代。姿を現す…つまるところの神といったほうがいいか))」
か…かみぃ?
「と、というかお前なんで2つメタ的表現法使ってるんだよ。1個だけで全てを表現できるはずじゃ…?」
「これはね。私と昔の研究者が考えた事実上の上限値だ…これの本質はM([表現])が低レイヤーにも語れるよう抽象化させ、アバターとして語りに顕現させるものに対してM(M([表現]))はそれのさらに上をいく。M(M(抽象化やアバターなど我々がどんなに頑張ったとしても語り得ない))。そんなM(M(存在))に使用する…その為M(M(通常の語りにはどんなに出現もしない。))M([表現])を通してでの語りであっても影すら分からない…M(M([表現]))は語り得ないや論理の超越、否定、真実それら全ての外側に存在する。このM(M(神))にはぴったりの方法だな。名付けるなら二重メタ的表現法と言うべきか?」
「そ、そんなバケモンが俺達の世界を揺らいでいるのか?」
「それを確かめたいから、町にいる学者達に話を聞く」
「で、でも足のせいで動けないんじゃ?」
「まぁそうだな。この神経毒は俺から"歩く"という結果すらも剥ぎ取ってしまった。だが、君が1回町にある学者が集う"学びの屋敷"にさえ連れて行ってくれれば学者自らが僕の話を聞きに来るだろう。頼む…お願いだ、この世界を救うために連れて行ってくれ!出来るだけ早く」
「と、とりあえず分かったけどいつ行くんだ?」
「明日…いけるか?」
「わかったよ。任せろ!」
さぁてと、世界を救う一歩を踏み出しましょうかね




