第117話 【魔導師】
俺は冒険者ギルドから出た後に早速村全体に「草むしりを完了した。」という因果改変を行った。すると村全体の草むしりが終わりクエストに書かれていたクエスト番号を話しかけると、自動的に5/100Expとなり冒険者カード内に1グラハムが追加された
「これだから安いのか…」
働いた時間約5秒、こんなクエストが無限に有ったらなぁ〜
すると、近くにいた木の杖で体を支えている老人が話しかけてきた
「あれ?あんた珍しぃなあ?草むしりのクエスト受けたんか」
「そうですが…」
「あれは子供が改変の練習するためのクエストだから、暗黙の了解として皆受け取らんのじゃよ。今後はあまり受けないほうがええぞ」
「わっかりました」
子どもの改変練習!?嘘だろ…
とりあえず、今後は草むしりは一切やらないでおくか。
俺はまた冒険者ギルドに戻りクエスト掲示板を確認する。
「今あるクエストが、"魔道士の手伝い","回復薬収集","水路のお掃除","お誕生日"の5つがあるのか」
外に出て魔物にでも会ったら誰かが助けてくれないと死んじゃうから"回復薬収集"は無しだろ?そして水路のお掃除はもしかすると子供の改変練習に使うかもしれないから無し。
後はお誕生日と魔道士の手伝いか…
お誕生日は夜って時間帯が固定されているし…魔道士のお手伝いにするか。
魔道士のお手伝いは経験値50で28グラハムか。まぁまぁまぁいいでしょう
このクエストは村の奥にある黒い家に行って魔道士の言うとおりにすればいいのか。
俺は早速紙を剥がし村の奥にある黒い家の方へと向かった。
黒い家はまさに魔女の家のような全体的に尖った家であった。俺は家のドアをノックした。
「すみませーん」
俺がそう声をかけると扉の奥の方から「どうぞ〜」と声が聞こえた為、扉を開け家の中へ入った。
中は一直線の通路、左右は断崖絶壁で幾何学的な模様が無数に浮かび上がっており、家の外見からは想像もつかないほど広かった。
「どこですか〜?」
俺がそう聞くと魔導師らしき声が直接脳に響いた。
『宿屋の部屋から出るみたいにやってみて』
俺はそう聞くと、宿屋から出る時のようにゲートを開きその中へ入っていった。
中は一般的な生活が見られる部屋が広がっており、魔導師と思わしき男性が腰をかけていた。見た感じ高校生ぐらいの年齢だろう
「あ!きたきた。とりあえずここに座って」
魔導師が目の前の椅子を指さす。
俺がそこに腰を掛けると魔導師が綺麗な笑顔の状態で話し始めた。
「クエストみたらわかると思うけど、ちょっと僕の手伝いをしてほしいんだ」
「手伝いって何ですか…?」
「これをとある人に渡してきてほしい」
そう言って魔導師は自分のポケットから一つのペンダントを取ってきた。
「ちょっと諸事情でね。自分では行けないんだ」
俺は彼をよく見ると足のほうに違和感があった。
「足が原因なんですか?」
「まぁそれもあるね。この3週間はこの椅子から動いていない。ちょっと昔に神経毒を食らって足が動かなくなっちゃったんだよ」
そんな若い年齢で足が動かなくなったのか。大変な人生だな
「ちなみにとある人って…?」
「僕の幼馴染なんだよ。君は異世界転移ってわかる?」
異世界転移!?この人も異世界からこの世界に来たのか!
「知ってます!何なら自分も少し違うかもしれないけれど異世界から来たんですよ!」
魔導師は少し目を見開く
「そうなんだ!僕はこの領域内の最果ての地『コスモス』から来たんだよ!」
「自分はこの領域とは別の領域から来ました」
「別領域から来るってこと本当に稀だけどあるんだ。なら快く話せる」
魔導師は少し前のめりになった
「ある人っていうのは実は彼女なんだ。コスモスから2人だけで夜、平凡な道を帰っていたらね…たぶん空間座標がズレちゃったのかな?そのせいでこの世界に来たってわけ」
「そして、気づいたときには森の中。そこから色々あって2人で冒険していたんだけど、例の神経毒を食らって…今まで使っていたこの家に運んで貰ったんだよ」
少し魔導師は悲しげな顔をして、下を向いた
「その後色々と介護して貰ってたんだけど、介護しているうちにやっぱり好きじゃないみたい。って言ってどっか行っちゃったんだよ」
俺は魔導師の肩に手を置いた。
「まぁそんな事もあるよ。ところでその神経毒はどうするんだ?しかもその調子だと、その『彼女』の場所もわからないだろ?」
「まぁ…そうだね。やっぱりこのクエストは無かったことにしてくれ…何か欲しいものとかあるか?僕が出来ることがあったら何かするよ」
無かったことにするのは妥当な判断だろうな。受け取れるグラハムも少ないし、逆にやってくれた人に対して失礼だろうと思ったのだろう。
そして、『何かするよ』と言ったな?じゃあ俺が気になっていたことを徹底的に聞いてやる!
「じゃあ質問いいか?」
「それぐらいだったら別にいいよ。僕も君に話して少し気が軽くなったし」
魔導師は深く椅子に座った
「まず、この世界で強くなれる最短効率は何だ?」
「この世界で強くなれる最短効率…ね。やっぱり改変系統の能力の優先度を向上させるのと、剣術や魔術も極めたら『リミット・ブレイク』って言って改変自体を断ち切る不可逆的な物に変化するから…2つをバランスよく鍛えることかな。こんなんで良かったかな?」
「リミット・ブレイクについてもう少し詳しいことを聞いてよいか?」
「リミット・ブレイクはね。実をいうと僕もそこまで分からないんだ。僕は到達したことがないし…それでも魔術を使っている理由は前の世界の名残でもあるし、魔術に改変をうまく埋め込むと僕的に使いやすくなるんだよ。そんだけだね」
この世界に来て結構時間が経っている人でもリミット・ブレイクはきついのか。リミット・ブレイクをするのは相当先になりそうだな
「他に質問があるんだが、なぜこの世界はこんなに自然豊かなのに周囲は砂漠なんだ?」
「あぁ〜それはね。魔皇龍アドバンって奴の封印が弱くなっていってるからだね。今はアドバン復活に備えて中央連邦で討伐隊を組んでいる途中だね。討伐隊のメンバーは最低でも冒険者ランク:Sランク以上は必須だね」
Sランクか…俺が今Kランクなのを考えると相当の上澄みメンバーで固めているのか
「じゃあ最後にお願いしていいか?」
「僕にできることなら何だってやるよ。同じ異世界転移した者同士でもあるしね」
「じ、じゃあ!金貸してくれ!たぶん今の調子じゃあ宿代の100グラハム返せなさそうなんだよ!」
正直言ってみっともないとは思うが…簡単なクエストしかこなせない俺にとって2日で100グラハム返すのは不可能に近い。貸してくれれば……2日は持つ!
「それなら……100グラハム貸すというかなんならあげるし、自分のこの家に住んでもいいよ?」
「ま、マジで!?」
これは嬉しいぞ!これでシルフィアに後から愚痴られずにお金返せるし住処までゲット!多分介護みたいなのをする必要は出てくると思うが、苦にならない。
ゆっくり、ゆっくりと、原初の勇者について調べていけばいいんだ!
というか、今それっぽいの聞くか
「100グラハムくれるのは本当にありがとう。そして本当の本当の最後なんだが」
「うんうん、なんだい?」
「原初、最初の勇者…5万年前にこちらの世界に来たような人はいるか?勇者みたいな感じの」
「あ〜〜なんか噂で聞いたことあるような?ないような?分からないや。ごめんね」
「まぁ全然いいよ!じゃあ明後日にまた訪ねて住むと思うから、元気にしといてね!」
「うん、分かったよ」
今日の収穫は凄まじいぞぉ!
俺はそう思いながら100グラハムを受け取りスキップしながら冒険者ギルドへ戻っていった。




