第115話 【スライム】
す、スライムだと!?どうやって俺のスキルをくぐり抜けてきたんだ!?
太陽光により鮮やかな青色で輝くスライムは液状の肉体により不安定な体を保ちつつも、こちらを見ている。
「な、なんだよ…!」
俺はすかさず鑑定を行った。スライムのレベルは10000、前の領域では考えられねぇな
俺は剣を作成しスライムの前に構えた。
すると、スライムはゆっくりと近づき俺に光速を遥かに凌駕した速度で俺の目の前に出現した。
俺は政宗流剣技三の型を放つと共に常時型上級スキルの究極改変がかかった現実改変斬撃を浴びせた。
周囲の空間は湾曲し虚空の質量と質量同士が衝突した。この現実改変と斬撃の合わせ技による攻撃でスライムは倒れたと思ったが、分裂することでそれを回避していた。
「何ッ!?」
スライムは俺の360°全ての画角におり、攻撃は避けることは出来ないだろう。
俺は事前に運命改変による自分の死ぬという未来を書き換えようとしたが、スライムの権能の方が強かったようでそれすらも無効化。
俺は数多のスライムによる衝突によって意識を失っていった。
俺が目を覚めると、天井は木製の屋根が広がっていた。
きれいなフカフカの布団のなかで眠っていたようだ。
俺は目を擦りながらベッドから出て、周囲を見渡して分かったのがここは宿屋かなんかの一室?であるということだ。
俺はゆっくりと木製のドアを開ける。
左右にはやはり、番号が振られた部屋がズラッと並んでいるな。
ただ…奥が見えない。本当に左右に無限に続くかのように部屋が並んでいるな…
どうやって出るんだ?
俺はとりあえず、右方向に全力で走ってみた。宇宙のインフレーション速度を上回るかのような超光速で1秒走ってみたが…やはり先が見えない。
俺は自分の部屋の場所に戻り、どうやって出ようか模索した。
現実改変により部屋自体を歪めるのも考えたが、それは宿屋の人には迷惑そうだし…
俺は静かに自分の部屋に入りベッドのうえに腰を下ろした。
「どうしよう…宿屋の中で迷った?とか話にならねぇぞ」
俺がそう思うと、自分の部屋のドアノブが回り始めた。
え、え、誰か入ってくるの!?
そう思っているとドアが開き、金髪の耳がとんがり全体的に緑と黒の服を着た絵に描いたようなエルフが入ってきた。
「あ!回復したのね!」
そういや、前の領域では獣人(結構獣寄り)の種族と人間と魔族、悪魔ぐらいしかいなかったな。エルフは初めてか
「え〜と、君は…?俺を助けてくれたのか?」
「うん、そうね!助けたんだけど、あんな雑魚モンスターにやられそうになるなんて…あなた随分弱いのね」
う……前の世界だと最強格に上り詰めたんだが、この世界だと雑魚判定なのか…仕方ないな。
「とりあえず、ありがとう。俺を助けてくれて…いつか礼は返すよ。ところで君の名は?」
「私?私はエルフのシルフィア!礼を返すんだったら、まず宿代を返してよね。」
「分かった、分かった。ところでどうやってこの宿から出るんだ?」
「そんなことも知らないの?おバカな人間ね。こうよ」
シルフィアは胸を張りながら喋り始めた
「まずこの宿屋の空間自体が無限なの。1、2、3、4……って感じで、どこまで行っても部屋が続いてる。でもね、ただ無限に広いってだけじゃないのよ」
シルフィアはそう言いながら、指で空中に小さな円を描いた。
「この宿屋の部屋を、全部ひとまとめにして一つの集合だと思ってみて。例えば部屋1、部屋2、部屋3……って感じね」
「集合……?」
「そう。それで、その部屋の集合から、いろんな部屋の組み合わせを作っていくの。例えば『1号室だけ』とか、『1号室と3号室』とか、『2号室と4号室と7号室』とか。そういう部屋の組み合わせを全部集めたものを、『冪集合』っていうの」
「……なんか急に難しくなったな」
「まあまあ、最後まで聞いて。重要なのはそこじゃないから」
シルフィアは苦笑した。
「普通に廊下を歩いている限り、あなたはずっと『部屋1、部屋2、部屋3……』っていう、この宿屋の中の世界から出られない。どれだけ速く走っても、部屋の番号を飛ばしてもね」
「だから一秒で宇宙のインフレーション速度を超えるくらい走っても、意味がなかったのか……」
「そういうこと。速さの問題じゃなくて、今いる世界の外側に出られていないのよ」
シルフィアは、今度は円の中心を指で軽く突いた。
「でも、冪集合を考えると、この部屋の世界から作られる『別の世界』ができるの。しかも、元の自然数の世界よりもずっと大きな無限になる」
「……つまり?」
「この宿屋の廊下をどれだけ進んでも出口には着かない。でも、この空間を構成している『部屋の集合』そのものに対して別の見方をすると、今いる空間の外側に相当する場所へ行ける」
紫色の渦が、円の内側でゆっくりと回転し始めた。
「それが、この宿屋からの脱出って言ったらおかしいけれども、出る方法ね。今いる無限の空間から、その空間を材料にして作られた、もっと大きな無限の側へ抜けるの」
無限にも大小関係があって、それを活用してこの無限の空間から出るのか…
この世界俺が思ってた以上にヤバいかもしれないぞ…
「簡単に言ったら、そうね。無限の廊下を最後まで走って出るんじゃなくて、廊下そのものが属している『もっと外側の世界』へ移動するのよ」
「……なるほど。それで理論は分かったがどうやってやるんだ?」
「う〜ん、『慣れ』かな?」
「い、今の俺に使えるのか?」
「さぁ?やってみたら分かるんじゃない?」
数学的な解釈による脱出をどう実践すれば…さぁ!俺の成長倍率よ!今本領発揮するのだ!
俺は空間に円を描いた。するとなかに紫の渦が発生し始めた。
「やったぞ!出来た!」
「あなた…思ってた以上に弱いのね。こんなの赤ちゃんでも出来るのに」
「まぁいいわ。とりあえず宿屋から出て、あなたは早くお金稼いでよ!?宿代結構かかったんだから!私が借りた部屋は使っといていいから、ちゃんとお金払ってよ!?」
「払う払うから。何の仕事すればいいんだ?」
「あなた、弱いからね。冒険者登録してKランクの仕事でもしたらどう?ていうか、あなた出身とかどこなの?その弱さ異常だけれども」
シルフィアは俺に顔をぐいっと近づける
「ほかの領域から来たの?」
ギクッ!
「ま、まぁそう…だね」
「そうね…そうだろうと思ったよ。巻き込まれ系?それとも事故で来ちゃった系?」
「いや、自分の意思で来た系だね…自分達の世界の方でとある人物を追うために来た感じだね」
「意思で来た系かぁ〜とりあえず来たからには帰れないから、この世界で頑張ってね」
シルフィアは自分で開いたゲートに入り帰ろうとしていた。俺は最後に聞きたかったことをひと言聞いた
「この世界は領域の対応はどんな感じになってるんですか!」
前の領域では認識又は根本的な無意識による認識したら含まれると言われていた。この世界ではそれは変わるのか?
「領域の対応ね。それは私達の本質的な領域では対応は無いけれど、ほかの内部的な領域では対応があるってだけ言っとく。じゃあね」
そう言ってシルフィアはゲートの中へ消えていった。
本質的な領域って言うのは…最初に言った何も対応していない領域状態のことかな。ま、これは後からの話になりそうだな。
俺もシルフィアに続いて自分で作成したゲートへ入っていった




