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【本編完結】白銀の王女と黄金の騎士─婚約者が私を殺しに追ってくる─  作者: Piko-Lele
第6章 王弟との戦い

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オリーブの木


目を閉じていても分かる温かな陽射しと、頬に感じる柔らかい風で目を覚ましたロイズは、メティスリアの客室にある豪華なベッドの上にいた。


窓際では、ルカが静かにカーテンと窓を開けたところだったのだろう、こちらを振り返ると目を見開き駆け寄ってきた。



「──兄上!!目を覚ましたのですね……よかった……3日間も眠っていたんですよ!!」



ルカは、ベッドの横へガクリと膝をつくと安堵の表情を浮かべる。毛布の上に出ていた自分の右手を見て、ロイズはおもむろに声を発した。



「……この指輪は確か……」


「はい!アイオライトの指輪です。私の治癒魔法が込められているので、誰でも魔力を流せば治癒魔法を使える代物です!」


「これは、フェリシア様が持っていたはずでは?」


「兄上が倒れた後、私も魔力を使い果たして倒れたんです。その時にフェリシア様が『この指輪なら誰でもロイズ様を治療できるから』と言って、兄上の指にはめてくれたそうです!」



ロイズが指輪を愛おしそうに撫でていると、やっと足に力が入るようになったルカが立ち上がり、扉へ向かって駆け出した。



「兄上が目を覚ましたことを、伝えてきます!」




フェリシアの自室のバルコニーに備え付けられたテーブルセットには、彼女と彼女の兄ジョナサン、そして婚約者のエドガーが腰を掛けている。


目の前のテーブルには、ティーセットが置かれ三人は談笑をしながら穏やかなティータイムを過ごしていた。



──コンコン! ガチャッ!!



ノックから扉が開けられるまで、数秒もないうちに飛び込んできたのは興奮気味に頬を上気させたルカだった。


それに気が付いた三人は一斉に椅子を蹴飛ばす勢いで立ち上がると、足早に室内へ戻りルカを取り囲んだ。ルカは、絵画のように美しい三人に囲まれて緊張しながらも大事なことを伝える。



「──今、兄上が目を覚ましました!」



ロイズが目を覚ましたという報告を受けたゼノ国王とクレア王妃は、彼の滞在している客室へと急いでいた。



──バァンッ!!



「ロイズ第一皇子!!」



激しい勢いで客室の扉を開けたゼノは、ベッドの上に座るロイズと、その周りにいるフェリシアたちを見て、短く息を吐く。そして、ゼノは大股でベッドへと近づくと深々と頭を下げた。



「──我が娘アンナが貴殿にしたこと、親であり王である私から謝罪させてほしい。本当に、すまなかった」



ゼノのすぐ後ろに控えていたクレアも、一歩前へ出ると深々と頭を下げ謝罪をする。



「あの子がしたことは、他国の王族の命を奪おうとするなど、弁明の余地なき大罪です。ルカがいなかったらと思うと……本当に申し訳ありませんでした」



メティスリア王国のゼノ国王とクレア王妃の謝罪に続き、ジョナサンとフェリシアもそれに続き深々と頭を下げる。



「──僕は、グレゴール様の思惑に気が付いていながら、実の妹の歪んだ感情に気が付けなかった。本当に申し訳なく思う」


「私がもっとしっかりしていたら……アンナの気持ちを汲んであげられていたら──本当にごめんなさい」



隣国の王族から謝罪されたロイズは、ベッドの上で姿勢を正してゼノとクレアへ向き直る。



「──頭を上げてください。僕は、叔父上からガルヴァスを守るために、ジョナサン殿下を排し、フェリシア様を利用しようとまで考え、行動をしました。その為に、アンナ様との婚約を結びました。そもそも、自国を守る為に他国を犠牲にしようとした僕の考え方が間違っていたのです。だから、これは僕の罪に対する罰なのです」



ロイズの想いを聞いたゼノは、ううむ、と唸ったがそれ以上は何も言わず、重苦しく言葉を紡ぐ。



「──アンナへの処罰についてだが、婚約解消のみでよいとは到底思えん。貴殿の命が危うかったのだから、地下牢への幽閉、王位剥奪。こちらは、なんだって受け入れる所存だ。──何かメティスリアでできることはないだろうか?」


「では、一つだけお願いがございます」



ロイズの口からどんな要求が出るのか、その場の全員が固唾を飲んで見守る。ロイズは、すごく真剣な顔でゼノと視線を合わせた。



「我が国と同盟を組み、友好国……いえ、姉妹国となっていただきたいのです」



ロイズの要求に心底驚くゼノの横では、クレアが心配そうな顔で尋ねた。



「アルベリヒ国王陛下とは、相談をなさらなくて大丈夫なのですか?」


「──はい。5年前、僕の父は叔父上によって暗殺されております。そのことを隠しながら、これまで突き進むしかありませんでした」



ガルヴァスの国王陛下が5年前に暗殺されていた──その一言に室内が静まり返る。その事実は、ガルヴァスのほんの一握りの人物しか知り得ない内容であった。しかし、ガルヴァスの城の人々の大半は、この戦いの中で命を落としていた。今や、それを知るのはロイズの母であるアリシア王妃のみだった。


「もう少ししたら、ガルヴァスへ戻ります。そうしたら王位継承式をして新たな国王を立てます。姉妹国としての具体的な内容のついては、新国王と話し合ってください」


「分かった。こちらとしては、何も望むことはない。これからも、よろしく頼む!」



ゼノ国王と、ロイズ皇太子殿下は固く握手を交わした。それを嬉しそうに見つめていたルカの元へ、エドガーがそっと近づき耳元に囁いた。



「──ロイズ様は、ルカのことを新国王にするつもりのようだが、気が付いているか?」



その言葉に度肝を抜かれたルカは、メティスリア城が揺れるほどの素っ頓狂な声を上げ、目を白黒させた。

その突然の絶叫に驚いたフェリシアは、紫水晶の瞳が零れ落ちるのではないかというほどに目を見開いた。



「ルカってば、急に大きな声を出してどうしたのよ!?ビックリしたわ!」


「──エドガー様が、急に変なことを言うからですよ!」


「変なことなわけがあるか。ルカはガルヴァスの第二皇子なのだから、新国王になる権利は持っている」



エドガーの堂々とした発言に、今度はフェリシアとゼノ、クレアが素っ頓狂な声を上げた。その、ほのぼのとしたやり取りを愛おしそうな瞳で見つめるロイズはルカへと声をかけた。



「僕の罰は、王位継承権を辞退することで完結する。──後のことは、ルカ……お前に任せるよ」



ルカを見つめるロイズのピンクの瞳は、どこまでも優しく美しい輝きを放っていた。



ロイズの客室を後にしたフェリシア、ジョナサン、エドガーはメティスリア城の庭に来ていた。子どもの頃によく遊んだオリーブの木の根元へ三人で並んで腰掛ける。



「そうだ。ねぇ、エドガー。8年前、ここで僕に誓った言葉と切実なお願いを今、もう一度言ってよ?」



ジョナサンが、キラキラした天使の笑顔を浮かべてはいるが、いたずらにエドガーへと命令する。

その言葉に一瞬だけ動揺したエドガーは、腹を括ったようで、二人の前で片膝をついた。



「俺は必ず強くなって近衛騎士団に入り、父上を越えてみせる。そして、一生メティスリア王国の剣となり盾となると誓う。だから──俺が騎士団長になってゼノ陛下に認めてもらうまでは、フェリシア様の婚約を、誰とも結ばせないでくれませんか!?」



黄金の髪の隙間から覗く深い青の瞳は、熱を帯びて艶っぽく潤んでいる。しかし、その瞳の奥にある熱意は8年前の少年の頃から何一つ変わらなかった。それを見たジョナサンは、満足そうに微笑むとあの日と同じようにエドガーの肩へとそっと手を置き、答える。



「エドガー。君の働きには、それ相応の褒美が与えられるべきだ。僕が、父様に進言してあげるよ。──だから、くれぐれも僕の妹を逃がしてはいけないよ?」



そう言うと、ジョナサンはオリーブの木から優雅に立ち去っていった。フェリシアは、二人のやり取りを間近で見て恥ずかしさで頬をピンクに染めていた。エドガーは、そんなフェリシアを立ち上がらせると、彼女の左手を取り跪く。



「──フェリシア」



エドガーから、いつも以上に熱の籠もった声で名前を呼ばれたフェリシアは、ピクリと身体を震わせる。しかし、彼の手は決してフェリシアを逃さないと言わんばかりに、しっかりと握られていた。



「俺は、君の家族想いなところも、自らの手で道を拓いていく強さも、誰よりも人の幸せを一番に考える愛に溢れているところも、全てを愛している。──君は8年前からずっと、俺の目標であり女神なんだ」


「──っ!!」



エドガーは、ポケットから静かにタンザナイトの指輪を取り出す。緊張で僅かにエドガーの指先が震えているのが分かる。



「俺と結婚してくれませんか?」



エドガーからのプロポーズに、フェリシアの鼓動は速くなり紫水晶の瞳からは、宝石のような涙がポロポロと零れ落ちていく。しかし、その涙は悲しいものではなく、愛に溢れた涙だった。



「──エドガー!私を追いかけてくれてありがとう……諦めないでいてくれて、ありがとう!私も貴方が大好きよ!貴方との未来しか考えられないわ!」



フェリシアの返事を聞いたエドガーは、堪らずフェリシアを抱き締める。エドガーの逞しい両腕は、フェリシアをすっぽりと包み込む。そして、その腕は喜びからか安堵からか、やはり震えていた。


しばらく抱き合った後、エドガーは名残り惜しそうに身体を離すとフェリシアの左手の薬指へとタンザナイトの指輪を嵌(は)め、そこに自らの唇を押し付けた。


エドガーは指輪に口付けながら、情熱的な瞳をフェリシアへ向ける。自然な動きで彼の両手がフェリシアの頬を包み込み、青の瞳が至近距離から覗き込んできた。



「──フェリシア、口付けても?」



フェリシアは、くすりと照れたように笑うと彼の両手に自らの手を重ねた。



「貴方になら、いつされても嬉しいわ」



オリーブの木が優しい風に吹かれて心地よい音を奏でる中、彼らの黄金と白銀の髪は混ざり合って光を放ち、しばらくそのまま輝いていた。



エドガーとフェリシアが、やっと結ばれました!!

長かった……もっと、いちゃいちゃさせたかったんですがね。

なんか、そうもいかない流れでした。


次回は、最終回になると思います!

後もう少し、お付き合いしていただけると嬉しいです!


ブクマ、レビューなどもお待ちしてます!

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