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【本編完結】白銀の王女と黄金の騎士─婚約者が私を殺しに追ってくる─  作者: Piko-Lele
第6章 王弟との戦い

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防衛と反撃


月が煌々と輝く夜空を遮るほどの超巨大なタイタン・ベヒモス。その漆黒の岩石の皮膚の隙間からは、朱色の触手がうねうねと蠢いていた。


今は、自分の身体の周りを縦横無尽に駆け回る黒馬を、煩わしそうに腕を激しく振り回していた。



「──よっと!」



背の高い木の上までやって来ていたメルドラは、黒馬が巨獣の足止めをしている隙をついて、タイタン・ベヒモスの身体へと身軽な動きで飛び移る。


巨獣の肩へと降り立ったメルドラは軽く打撃を与えてみたが、その皮膚は漆黒の岩石の塊をそのまま繋ぎ合わせたように分厚く、想像以上の硬さだった。



「──この硬さじゃ、あたしの手足の方が先に砕かれちゃうかも」



メルドラが自傷気味に苦笑いをしていると、白馬に乗ったフェリシアが叫んでいるのに気がついた。



(──に、げ、て……逃げて!?)



メルドラは、はっとして辺りを見渡すと空気ごと押し潰す勢いの巨獣の巨大な掌が、こちらへと振り下ろされてくるところだった。



「──やばっ!!」



メルドラは、慌てて駆け出すと巨獣の肩から飛び降りた──次の瞬間。



──ズゴォォォォォォォン!!



猛烈な勢いで振り下ろされた掌は、巨獣の肩の漆黒の岩石を僅かに砕き飛び散らせた。その破片が雪崩のようにメルドラへと降り注ぐ。



「エア・スラッシュ!」



エドガーの放った剣技によって塊だった岩石が粉砕され、雨のように降り注いでくる。そこへ、ロイズがすかさず魔法を発動させた。



「ヴェント・ソウラム!」



ロイズがメルドラの頭上へと空気の層を作り、岩石の粒を完璧に弾き飛ばし少女を保護した。そして、ルカはそのまま落下を続けるメルドラの真下へ剣技を放った。



「ヴォルテクス!」



ルカの放った斬撃は、小さなつむじ風を発生させると、メルドラの身体を優しく受け止めた。


無事に地面へと降り立ったメルドラは、未だに臨戦態勢のエドガーたちに感謝を伝えると、巨獣を倒せる可能性について簡潔に伝えた。



「あいつの身体、岩石の塊がくっついた鎧のようなものを纏っているのかも。隙間から何本も触手が出てたし」


「そうか。その隙間からダメージが入れば、討伐できる可能性が格段に上がりそうだな。──試してみるか」



エドガーは、タイタン・ベヒモスの足の割れ目へと狙いを定めると、剣技を放った。



「エア・スラッシュ!」



何本もの風の刃が、巨獣の割れ目へと吸い込まれていくが、攻撃の威力が足りないのか特に変化は見られなかった。



「──みんな!!」



上空から白馬と共に舞い降りてきたフェリシアが、今しがた見てきた光景を伝える。



「今、タイタン・ベヒモスがメルドラを攻撃しようとして、自分の肩を攻撃していたでしょ?──あの一撃で肩の一部分の岩石が剥がれて、中身が丸出しになっているわ!」


「本当に!?じゃあ、あたしがもっとあの巨獣の上で暴れたら、さらにボロボロになるかも!?」



メルドラが、勝機が見えてきたことにウキウキしながら声を上げる。



「身軽さと素早さなら、私も役に立てると思います!メルドラさん、一緒に行きましょう!」



ルカが、自分から囮になることを志願したことで、ロイズが心配そうな表情を見せるが、奥歯をぐっと噛み締めて何かを堪えたようだった。


そこへ、レナとネロを西の見張り台から、メティスリア城内へと避難させていたジョナサンがやってきた。



「僕は、フェリシアと白馬に乗って上空から攻撃する。皆も長時間の戦闘で体力も魔力も消耗しているはずだ。これ以上、長引かせないようにしよう!」



ジョナサンのかけ声で、その場の全員は一気に気合が入ったが、空が急に明るくなり始めたことに気が付き、嫌な予感がして一斉に目線を上げた。



──キュオオオオオオオン!!



タイタン・ベヒモスが口を大きく開けて、目の前をひらりひらりと跳ね回っている黒馬へと、ブレスを放射しようとしているところだった。



「あの角度でブレスを撃ったら、魔法障壁に当たってしまう……まさか、破壊されることはないわよね?」


「──フェリシア!奴の下顎を狙って攻撃を叩き込み、念のために軌道を逸らしてみよう!」



フェリシアが慌てて白馬を上昇させたところへ、ジョナサンがひらりと白馬へと飛び乗り、二人は空高く駆けていった。



「我々も奴のブレスの軌道に、できる限り障害物を作り出し、魔法障壁への衝撃を減らすぞ!」



エドガーは、フェリシアたちの作戦と同じ顎を狙える位置へ移動すると剣を構える。



「「ヴェント・ソウラム!!」」



ルカとロイズは二人の魔力を合わせ、いつもより三倍は分厚い空気の層を作り出し、ブレスの軌道の中へ配置した。



──ヒヒーーーーン!!



黒馬は、自分の目の前に馬車一台分ほどの厚みのある大きな岩盤を作り出した。


そして、東の見張り台からはゼノが魔法の盾を幾重にも重ねがけしていく。ブレスの軌道には真っ赤に燃え盛る巨大な盾が五枚出現した。


巨獣の顎の下へと到着したフェリシアがすかさず魔法を発動する。



「プラズマ・ウィップ!!」



フェリシアは、自らが放った紫の鞭を巨獣の上下の顎へとぐるぐる巻き付けてから思い切り引いた。

鞭がギチギチと音を立て口元を縛り上げていく。


──ブゥゥン! ブゥゥン!



口元を縛り上げる鞭を嫌がり、身を捩り始めたタイタン・ベヒモスの下顎を、真下から狙いを定めたジョナサンが魔法を放つ。それに合わせるようにして、エドガーも剣技を放った。



「ラジアル・レイ!!」

「天烈一閃!!」



──バシィィィンッッッ!!



二人の放った技は、一直線に下顎へと直撃する。その突然の衝撃で、中途半端なブレスが巨獣の口の隙間から漏れ出した。そのブレスは、真っ直ぐにメティスリア城へと突き刺さるように飛んでいく。



──ズガァァン! ドォォォォォン! 



黒馬の作った岩盤を一瞬でぶち抜き、分厚い空気の層へとぶつかった不完全なブレスは、それでも恐ろしい威力を保ったまま、空気の層にじわじわと穴を広げていく。



──パァァァァン!



空気の層はついに猛烈な破裂音と共に跡形もなく霧散してしまう。そして、ブレスは燃え盛る盾へとぶち当たる。


ブレスのあまりの威力に戦慄したフェリシアが、思わず電撃の鞭を持つ手を緩めた瞬間──タイタン・ベヒモスが、その隙を見逃さずガバリと口を開け、追撃のブレスを吐いた。



──ズガァァァァァァン!!!

──バリィィィィィン!!



ゼノが作り出した五枚の盾をあっという間に粉砕したブレスは、魔法障壁を突き破る。そして、破壊の光線の威力は衰えることなくメティスリア城の中心へと突き刺さり、大穴を空けて反対側へと突き抜けていった。



(──そんな……!!)



フェリシアが絶望で目の前が真っ白になりかけた時、城の最頂部から凛とした美しい声が響き渡る。



「──私の愛する子どもたち!!諦めてはいけません!!城の皆は、地下へ避難しているので大丈夫です!!思い切りやりなさい!!──アポカタス・タシス!!!」



クレアの高らかな声が響くと同時に、城全体が淡い光に包まれる。そして、時間が巻き戻るように全てが元通りになっていく。



「──この規模の修復魔法を扱えるとは……すごい魔力量だ」



大穴の開いた城だけでなく、魔法障壁も完全に元通りにして見せたクレアの魔力量に、ロイズが呆然と見上げた。



「メルドラさん!いきましょう!」

「オッケー!!」



ルカとメルドラは、あっという間に巨獣の身体へと飛び移ると岩石のつなぎ目や、蠢く触手を狙って、攻撃を始めた。



──グォォォォォォォォォォォォン!!



巨獣は、その攻撃を嫌がるように足踏みをしたり、自らの掌でルカたちを叩き潰そうと躍起になっている。その結果、あちこちにひび割れが形成されていた。



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