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【本編完結】白銀の王女と黄金の騎士─婚約者が私を殺しに追ってくる─  作者: Piko-Lele
第6章 王弟との戦い

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消えた命と救われた命


──ガギィィィン! ガチンッ!



「──っ!!なんて硬いんだ!これじゃあ、壊れるまでにどれだけ時間がかかるんだ!?」


「少しずつでもダメージが蓄積すれば……いつかは壊れます!!」



レナとネロは止まることなく攻撃を続けるが、グレゴールの身体に埋まっている魔晶石はびくともしない。メルドラの轟炎によって体内は焼き尽くされていて身体中から白い煙を上げているが、魔晶石が健在なため機能を完全に停止していなかった。



「っくそ!!人間としての機能は完全に停止しているはずなのに、魔晶石の明滅が止まらないのが気味悪いな!!こうなっちまったら、もはや人ではない魔人だな!!」



ネロが忌々しげに言い放つのを聞きながら、レナがレイピアを振り下ろす──その刹那。



──バシィィィッッッ!!



グレゴール──否、魔人の触手が突然、束になって動いたかと思うとレナの身体を薙ぎ払った。



「ぅあっ!!」

「レナ!!」



猛烈な勢いで弾かれたレナは地面へとレイピアの刃を突き立て勢いを殺そうとするが、為す術もなく魔法障壁へと向かって吹き飛ばされていく。それを全速力で追いかけたネロは、紫の壁とレナの間へと無我夢中で飛び込んだ。



──バチバチバチバチッッ!!

「ぐあああああああああ!!」



黒豹の絶叫と激しいスパークの音が辺りに響き渡る。


ネロは身体からパチパチと紫のスパークを放出しながらドサリ、と地面へ力なく横たわった。

レナが慌てて起き上がりネロの様子を見ようと、魔人に背を向けた瞬間。



「──ぐぅっ!!」



いつの間にか立ち上がっていた魔人の触手によって首を絞められたレナは、そのまま上空へと持ち上げられてしまった。


レナは、右手のレイピアで触手を切断しようと、何度か刃を突き立てるが苦しさで視界が揺らぎ、うまくいかない。



「……レナッ!!」



ネロがふらつく足に力をこめて立ち上がり、渾身の力でレナを締め付けている触手へ跳躍すると、鋭い牙で噛み付いた。



──ブチブチブチッッ!!



ネロの渾身の一撃で触手の何本かを噛み千切ることに成功したが、未だにレナは空中に持ち上げられたままだった。ついに彼女の手から力が抜けレイピアが地面へ落ちる。



──カランッ!



「ネロ!動くな!!」



頭上から鬼気迫る声が響いた直後、魔力の弾丸が放たれ、レナを締め付けている触手を一瞬で無効化した。地面へと落下してくるレナをネロは自分の身体で受け止める。



「レナ!!大丈夫か!おい!レナ!!」 



ネロが必死に呼び掛けるが返事がない。そればかりか、レナの顔は真っ白で唇は真っ青になっていた。



──バサバサッ



ネロの目の前に、上空から真っ白な生き物が舞い降りてきたかと思うと、レナのレイピアを拾い上げる。そして、魔人がこちらへと次々と伸ばす触手を、素早く斬り落としていく。



「──ジョナサン!お前、あそこから飛んだのか!?」


「今は、レナを──ここから彼女を引き離してくれ!!」



ネロがレナの服を咥えてズルズルと引き摺っていく。──その退路を切り拓くように、エドガーたちがついに戦場へと滑り込んできた。


駆け抜ける一瞬で状況を把握したエドガーは、抜刀しながら弾丸のようにグレゴールへと向かっていく。



──ガチンッ! ギィィン! シュバッ!



エドガーは、ジョナサンと息を合わせ触手を次々と斬り落とす。が、触手の再生速度が速くまったくグレゴールに近づくことができなかった。そこへ、ルカが一気に駆け込むと、魔人の間合いへと入り、剣技を放った。



「迅風・ヴォルテクス!!」



ルカの剣から放たれた猛烈なつむじ風は、魔人を持ち上げていく。その風の渦の流れに向けてロイズがさらに魔法を発動する。



「フレア・バースト!!」



ロイズが放った巨大な炎は、ルカのつむじ風に吸い込まれ、あっという間に炎の竜巻へと変化した。



──ゴォォォォォォォ!!



次々と絶え間なく送り込まれる空気により、竜巻の勢いは増々強くなっていく。その竜巻の中で、もみくちゃにされる魔人は、ガバリと開いた口から雄叫びを上げる。



「ロロロロロロイズゥゥゥゥーーー!!」



そして、ロイズへと触手を伸ばしてくるが、ジョナサンが素早く魔法の弾丸で撃ち落としていく。そして、エドガーが竜巻の根元に立ち剣を構える。



「嵐王連刃(らんおうれんじん)!!」



竜巻の勢いに乗った鋭い三本の斬撃は、一気に駆け上がると猛烈な勢いで魔人の身体を斬り付けていく。



──ズバババッ! シュバンッ! バシュンッ!



激しい炎に熱せられた漆黒の岩石の皮膚は、溶けた鉄のようにグニャリと柔らかくなっており、エドガーが放った斬撃がぶち当たる度に鮮血を散らすように少しずつ斬り離されていた。


そして、ついに魔人の身体に埋まった魔晶石の周りの皮膚が大きく斬り離された瞬間、エドガーが強烈な一撃を放つ。



「天烈一閃!!」



炎の竜巻と自らの三本の斬撃を飲み込みながら空へと駆け上がった一筋のエドガーの斬撃は、下から抉り取るように魔晶石を魔人の身体から斬り離すと、そのまま上空へと打ち上げた。



「ラジアル・レイ!!」



上空の魔晶石を撃ち抜こうと放たれた高濃度の魔法の弾丸は、突如として現れた強固な漆黒の壁によって弾かれてしまう。



──グォォォォォォォォォォォォン!!!!



「──タイタン・ベヒモス!!!!」



大きな掌でグレゴールの魔晶石を掴んだ超巨獣は、自らの口へと明滅する石を放り込むとゴクリと飲み込んでしまった。



タイタン・ベヒモスと戦闘を繰り広げていたフェリシアとメルドラも、魔晶石を斬り離すために全力で戦っていたジョナサン、エドガー、ルカ、ロイズ、そして、レナに寄り添うネロも、その光景を目の当たりにして絶句していた。



──ドサッッ



炎の竜巻が消えて上空から落ちてきた魔人は、糸が切れ壊れた操り人形のように、全身の関節を有り得ない方向に曲げたまま愉快そうに笑い出す。



「あーはっはっはっはっ!この手にぃぃぃぃ……入らないならぁぁぁ!?ぜぜ全部ぶぶぶ、何もかぁぁぁも……こここ壊れてしまえーーーーー!!!!」



そう叫んだ後、魔人は不気味な笑顔を貼り付けたままピクリとも動かなくなった。


森の中からは、ガレスたちが魔物と戦闘を繰り広げている音が響いてくる。



──ゴゴゴゴゴゴッ!!



超巨獣がメティスリア城へと侵攻を開始する。魔人の魔晶石を飲み込んだ影響か、身体の至る場所からウネウネと動く触手が生えている。



──ヒヒーーーーン!!!



黒馬が超巨獣の目の前へと地面を迫り上げて躍り出ていく。そして、岩石の塊をその顔面へと叩き込んだ。大したダメージにはならなかったが、超巨獣の意識を城から切り離すことに成功したようだった。


超巨獣が城に背を向け始めたのを確認したジョナサンたちは、横たわるレナへと駆け寄る。



「ブリーズ・ヒール!!」



ルカが治癒魔法を発動するが、レナは目を覚まさない。ルカは悔しそうに拳を握り締め、絞り出すような声を上げた。



「身体の傷は癒せますが、呼吸を誘発することはできません……!!」


「──僕がやる!!」



ジョナサンは、ふわりとレナの横へ跪くと青くなったレナの唇に、そっと自らの唇を押し当てる。そして、彼女の体内へと繰り返し息を吹き込んでいく。



「……っごほ!ゲホッ!!……はぁ、はぁ」



皆が固唾を飲んで見守る中、ジョナサンが何度目か息を吹き込んだところでレナが目を覚ました。



「──レナッッッ!!」



一番間近にいたジョナサンが、涙目になりながらレナへと抱き着き、きつく抱き締める。


レナは一瞬、自分に何が起こったのか分からなかったが、ネロが見たこともないような、ぐしゃぐしゃな顔で涙を流すのを見て、全てを思い出し、そして理解した。



「──ご心配をおかけして、申し訳ありませんでした」



レナはその場の全員にやっと聞こえるほどの小さな謝罪の後、ジョナサンの肩に顔を埋めて静かに涙したのだった。



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