↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結】白銀の王女と黄金の騎士─婚約者が私を殺しに追ってくる─  作者: Piko-Lele
第6章 王弟との戦い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/92

兄弟の想い

月夜を全速力で駆け抜ける羽駆馬の背中にいたフェリシアは、前方の森から幾筋もの光の線が空へと伸びていくのを見つけた。その光の筋は、その後すぐ地上へと流星群のように降り注いでいった。



「──あの魔力は、お兄様!?」



フェリシアは、慌ててパルス・コンパスを唱える。

フェリシアの掌の上では赤々と燃え上がる矢印が、今まさに光の筋が降り注いだ方角を指していた。



(お兄様、メティスリアに戻っているのね!──でも、メティスリアは今、あの魔晶石に侵食された人たちで溢れている……急がなきゃ!)



フェリシアは、羽駆馬の背にしっかりとしがみつくと、更にスピードを上げるよう白馬へとお願いをする。



──ヒヒーーーーン!!



フェリシアの願いを聞き届けたと言わんばかりに大きく嘶いた白馬は、また一段と速度を上げた。空を駆ける白馬が速度を上げるのを、地上を滑るように駆けていたガイア・ブレイカーの背から見ていたロイズが、ルカへと叫ぶ。



「ルカ!フェリシア様が速度を上げた!置いていかれないように、我々も速度を上げよう!」


「分かりました!黒馬さん、白馬さんとの距離が開かないように速度を上げられますか?」



──ヒヒーーーーンッ!



ガイア・ブレイカーが大きく嘶くと同時に、前方の地面が迫り上がっていく。それは、一本橋のように空へと続いている。遮蔽物が一切なくなったことで、ガイア・ブレイカーはグングン速度を上げていく。



「……すごいな。ガイア・ブレイカーが走った場所は、即座に轟音と共に崩れ去っていく。こんな芸当ができる魔物が味方とは、頭が下がるよ」



ロイズは、感心したように呟く。その時、ロイズの視界の端にキラキラと輝く粒子が入る。ふと、横を見るとすぐ近くを羽駆馬が駆けていた。その背に乗るフェリシアの絹糸のような銀髪は夜空に広がり、月明かりに照らされ光を反射していた。



(──夜空を小さな銀河が駆けているようだ……彼女はどの場面を切り取っても画になる美しさなのだな)



ロイズが見惚れていると、フェリシアが嬉しいような、焦ったような声でルカへと話しかける。



「──ルカ!お兄様が、生きているわ!今はメティスリアにいるみたい!!」


「えぇ!まさか……フェリシア様が『事情を知っている人』と言っていたのは──ジョナサン殿下のことだったのですか!?」


「そうよ!!」



フェリシアとルカのやり取りを聞いていたロイズは、険しい表情で口を挟んだ。



「毒殺したはずのジョナサン殿下が生きていると分かったら、叔父上は彼を真っ先に狙うだろう!──その次はゼノ陛下だ!」


「──大丈夫!!グレゴール様を止めるために私たちはメティスリアへ向かっているのよ!絶対に最悪の事態なんて起こさせないわ!」



フェリシアの強い視線に不安に思う心を射抜かれたロイズは、ふっと短く笑うと瞳を閉じた。 



(フェリシア様の前を向き続ける考え方は、周りにも勇気を与えてくれるのだな)



そして、瞼を上げたロイズのピンクの瞳の奥には、グレゴールを確実に止めるという決意の炎が、赤々と燃え上がっていた。



「見て!城が見えてきたわ!二人とも、このまま戦闘になっても大丈夫なように──ちゃんと腹を括ってよ!?」



フェリシアの意地悪な言い方に、ルカとロイズは思わず笑い声を上げる。そして、二人とも力強く頷くと声をそろえて返答した。



「──フェリシア様と一緒に行くと決めた時から、ずっと腹は括ってあります!!」



ほんの少し緊張の解れた三人の視界に、城と同じ大きさはありそうな、巨大な物体が動くのが飛び込んでくる。その正体に瞬時に気が付いたフェリシアとロイズは、息を呑み絶句する。フェリシアにいたっては、憎しみのこもった瞳でその影を睨みつけ、唇を噛み締めている。


ルカが、あの動いている巨大な物体は自分の見間違いなのかと目を擦っていると、フェリシアの忌々しげな唸るような声が響いてきた。



「──タイタン・ベヒモス!!」


「8年前、メティスリアに突然あれが現れたのも、叔父上の研究の一環だった──申し訳ない」



フェリシアの地を這うような憎しみのこもった声に、ロイズは居た堪れなくなり謝罪する。が、フェリシアからの返答はロイズの予想に反していた。



「ロイズ様は、グレゴール様のやり方が間違いだと気が付いたのでしょう?人は間違えるものなのよ。だから私は、同じ過ちを繰り返さないように生きれば良いと思っているわ!」



フェリシアの言葉に、ロイズの胸には抑えられない熱いものが込み上げてくる。諦めたはずの、手放したはずのフェリシアへと想いが溢れてきて止められなくなる。ロイズは胸を押さえ、前を向いているフェリシアの横顔を見ながら泣きそうになるのを必死に堪えていた。


その時、ルカがロイズを振り返り彼にだけ聞こえるような声で囁く。



「──兄上、これだからフェリシア様を愛してしまう気持ちは抑えられないんですよ。私も未だに愛さずにはいられなくて困っているんです」


「はははははっ!僕も、こんなに愛おしく想った女性は初めてだよ!」


「まさにその通りですね!」



男二人が急に楽しそうにするのを見たフェリシアは、極限の緊張で頭がおかしくなったのかと本気で心配したのは、フェリシアだけの秘密として心にしまい込まれたのであった。



その頃、森の中を弾丸のように駆け抜けるエドガーとメルドラは、眩い光が一点へ降り注いだ場所に立つ、普通の人間よりも二回りほど大きい二本足で立っている物体を見つけていた。



「──人にしては大きすぎるし、あのウネウネと動いている物は何なの?」


「この距離では判断ができないな。急ぐぞ!」



二人は剣技と魔法を駆使しながら、森の中を猛烈な勢いで突き進み、ついに森を抜けた──そして、二本の足で立っている物体の正体に気が付き目を見開く。



「まさか、グレゴールなのか──!?」



エドガーの呟きに反応するように、穏やかだが緊張しているジョナサンの声が聞こえてくる。



「エドガー、ガルヴァスから戻ったんだね。見て分かる通り……グレゴール様が、ついさっき魔晶石と融合してしまったんだ」


「──誰だか知らないけどさ!早く倒せばいいじゃない!なんで、そんな所で突っ立ってんのよ!」



メルドラはそうジョナサンへ啖呵を切ると、すかさずグレゴールへと飛び込んでいった。そして、魔晶石だけに轟炎を纏った拳で目にも留まらぬ速さの連撃を叩き込んでいく。



──ガガガガガガッ!!



メルドラは息が切れるほど連続で拳を叩き付けると、ひらりと後ろへ回転して距離を取った。そして、額に脂汗を浮かべた少女は納得したように謝罪する。



「──この硬さじゃ、一人で倒すのは難しいわね。生意気なことを言って、ごめんなさい」


「分かってくれたのならいいよ。──さて、二人とも手を貸してくれるかい?」



ジョナサンは、未だに動き出さず触手だけを蠢かせているグレゴールへと厳しい視線を向けたまま、エドガーとメルドラへ問いかける。



「当たり前よ!こんな気持ち悪いのを野放しになんてできないでしょ!」


「──私も殿下のための剣となり、盾となります!」



三人がグレゴールに対峙し言葉を交わしていると──突然、不穏な呟きが聞こえてきた。



「ででででで……殿下ぁぁぁぁ……じょじょじょ──ジョナサン!!!」



そう呟いたグレゴールは、カッと両目を見開くとその巨体からは想像もできないような俊敏な動きで、ジョナサンに向かい突進を開始したのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。