↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結】白銀の王女と黄金の騎士─婚約者が私を殺しに追ってくる─  作者: Piko-Lele
第三章 動き出す黒い欲望

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/92

執着


シックな色合いだが、豪華な調度品の家具で統一された部屋のベッドへと腰掛けている、ピンクの瞳を持つロイズは、自分の前で跪くシリルを苛ついた様子で見つめている。



「シリル。お前に与えた任務はなんだ?」


「はい。私の任務は、ロイズ様の元へフェリシア様をお連れすることです」


「では、今、彼女はどこに?」


「ディルムント上空で羽駆馬に乗り西の方へ駆けていきました」


「何故、追わなかった?」


「エドガー様の妨害が入りました」



ロイズは、一つ溜め息を付くと、シリルへ呆れたような視線を向ける。



「お前には、浮遊効果のある魔道具を渡してあっただろう?」


「はい。その魔道具は髪飾りとして毎日、身に付けております。そして、今回はそちらを使用して、フェリシア様の元へと行きました」


「それをもっとうまく使えば、エドガーから逃げながら、フェリシア様を捕まえることも出来たのではないか?」


「エドガー様は、地上からでも私の位置を正確に攻撃してきました」



──はぁ、と先程よりもさらに深い溜め息を付いたロイズは、ベッドから立ち上がりシリルの目の前で片膝を付く。そして、彼女の顎へと手をかけ、上を向かせる。



「エドガーの攻撃が、自分に当たるのが怖かったとでも言うのか?」


「いえ、あのままエドガー様と戦闘を行うと、ディルムントの街が破壊されて──」



シリルが言い終わらぬうちに、ロイズは顎を持ち上げている指先に力を込める。その痛みに、シリルは言葉を失う。



「僕は言ったはずだ。生きてさえいれば怪我の有無は問わないと」



シリルは、その言葉の意味が分からないのか、瞬き一つせず、ただ、ロイズから紡がれるであろう次の言葉を待つ。



「お前がいくら怪我をしようとも、腕や足の一本がなくなろうと、フェリシア様の価値に比べたらどうということはない。お前の命など、あの男にくれてやる」



シリルは、未だに感情の籠もらない黒の瞳でロイズを見上げている。その女の様子に更に苛立ち、突き飛ばすようにして乱暴に顎から手を離し、荒々しく立ち上がった。



「いいか、シリル。次はないぞ。メルドラもどうやら、あの男に捕まったようだからな」



「──御意」



「分かったら、さっさと行け!!」



シリルは、ロイズの言葉に深く礼をして踵を返し、足早に主の部屋を後にした。



(怪我の有無を問わないのは⋯⋯私だったのか⋯⋯)



シリルは、ポケットから小さな羅針盤を取り出す。以前、ロイズが持っていた板を元に、持ち運びしやすい追跡機として、新たに作られた魔導具だった。



「西の渓谷で、夜を明かすというのですか」



この羅針盤は、対となっている懐中時計──フェリシアの居場所だけを指し示していた。その羅針盤からフェリシアの居場所を把握したシリルは、困ったように呟く。



「あの渓谷は、魔物の巣窟が近い分、魔物による襲撃や被害が多い危険な地域⋯⋯早くしないと、フェリシア様がもし怪我でもしてしまったら」



シリルは、近場の窓を開けるとその縁にスッと飛び乗る。そして、そのまま外へと身を投げた。



──フワッ



しかし、その身体が地面へと向かって落ちることはなく、優しい風に包まれ上昇していく。



(ロイズ様、今度こそ任務を遂行して参ります)



自分の髪を纏めている髪飾りに、そっと触れながら瞳を閉じる。シリルの手の下で、髪飾りに嵌められているピンクの宝石が妖しい光を放っていた。



その頃、ディルムントの宿屋の一室では、黄金の騎士が絶望に打ちひしがれたように、がっくりと項垂れたまま椅子へと腰を掛けていた。


その横には、簡素なベッドが設置されており赤髪の少女が静かに寝息を立てていた。



「⋯⋯うぅ⋯⋯」



メルドラは、重い瞼をやっとの思いで持ち上げる。身体が鉛のように重いが、必死に首を回して辺りを確認する。



(⋯⋯木造の部屋の──窓際に置かれた簡易的なベッドにいるのね。)



メルドラは、起き上がろうとして身体に力を入れるが、全身を鋭い激痛が走り抜けガクッと力を抜いてベッドへと沈み込む。



「⋯⋯数時間、寝ただけで意識が回復するとは、凄まじい体力だな」



メルドラのすぐ真横から声が聞こえ、ビクリと身体を震わせてそちらへ視線を向ける。


そこには黄金の騎士が、悲壮感たっぷりに項垂れていた。さっきまで拳を交えていた相手とは思えないほど、あまりにも存在感が無さすぎた。


そのせいで、メルドラは室内に自分以外の人がいるなどとは思いもよらず、驚きのあまり声が出なかった。



「⋯⋯悪いが、お前には魔封じの腕輪と、鈍足の足輪を装着させてもらった」



エドガーは、メルドラを見ようともせず、項垂れたまま呟くように告げる。

そのエドガーの弱々しい姿を見て、メルドラは形勢逆転の策を思い付き、ニヤリとほくそ笑んだ。



(この距離なら、一気に頭を叩き割れば仕留められる!)



メルドラが自らの重い身体に、無理に力を込めようとした瞬間──深い青の瞳が、サラリと垂れた金髪の間からこちらを、じっと見つめていることに気が付く。



「──ひっ!」



悲壮感が漂っていたはずの男の瞳には、ギラギラとした警告の炎が燃えていた。



「──その状態で、何かしようなどとは考えない方が良いぞ」



まるで、赤髪の少女の策を見抜いているかのような発言に、メルドラは──これじゃ、敵うわけないや、と殺気を引っ込める。



「はーい。分かりましたー」



メルドラは、上げかけた頭をポスンッと、枕に戻した。そして、天井を見上げながらエドガーへと問い掛ける。



「で。金髪のお兄さんは、これからどうするの?」


「君に聞きたいことが、いくつかある」


「ふーん。じゃあ、聞かれる前に、答えられることを先に教えるねー」



メルドラは、軽い雰囲気ですらすらと言葉を並べていく。



「あたしの名前は、メルドラ。16歳。ついこの間までガルヴァスの孤児院にいたんだけど、魔力の強さを見込まれてロイズ様に飼われたわけ。そんで、メティスリアのお姫様を誘拐した、ルカ・エバンスって黒髪で赤い瞳の男を追えって指示が出て⋯⋯あなた達に負けたところ」



エドガーは、メルドラの話を黙って聞いていたが、ルカ・エバンスの名前が出てきた途端、険しい顔でメルドラへと視線を向けた。



「何故、フェリシアがルカ・エバンスと逃げたことを知っている?」


「さぁ?あたしは、ロイズ様から『フェリシア様とルカ・エバンスという男が、ディルムントへ向かっているから捕まえろ』って言われただけだから」



メルドラは、本当に何も知らない様子だった⋯⋯というより、興味が無さそうだった。



「では、何故ロイズ様は、フェリシアとルカ・エバンスを捕まえろと命じたんだ?」


「うーん⋯⋯なんか、アンナ様が『エドガー様だけに、お姉様を独り占めにはさせない!』みたいなことを言っているのは聞いたけど。そもそも、エドガーってのが、誰ですか?って感じなんだけどね」



メルドラは、深くため息をついてエドガーへと視線を向ける。



「お兄さんは、エドガーって人のこと知ってる?なんか、束縛の激しいやばい男だったりするのかな?」



そうだったら怖すぎー、と言うメルドラを、エドガーは冷ややかな目で見つめて言った。



「君は、私が誰か知らないのか?」


「は?そんなの興味ないし、知らないよー」


「私がエドガーだ」


「は?」


「この命に代えても愛し、守り抜くと誓った最愛の婚約者が、新入りの兵士と城からいなくなってしまい、それを執念深く追いかけている⋯⋯それが、私。エドガー・クレイだ」



エドガーは、自分で言っていて思ったより虚しくなってきたが、それでもフェリシアのことを諦めるなんて到底出来そうもなかった。それならば、地の果てまでも追いかけ、必ずこの腕の中に捕まえるしかない、と決意をする。



「えー⋯⋯そうなんだー。頑張ってね」



突然の自己紹介ならぬ決意表明に、メルドラは完全に引いていたが、あまり刺激しない方がいいと判断して、適当に相槌を打つのだった。



エドガー、フェリシアの事が大好きなんですよね。

それは、自他共に認める事実。

頑張れ!エドガー!


そして次回は、ルカがフェリシアを追う場面です!

ガイア・ブレイカーを最速で走らせるルカは、フェリシアへと追いつけるのか!?


一気に読んでほしかったので、4000字を超えていますが一つのエピソードとして投稿します。


是非、最後までハラハラ、ドキドキして読んでください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。