メルドラ①
メルドラとの戦闘シーンを一気に執筆したところ、
な、なんと⋯⋯
5000文字を超えてしまいました⋯⋯。
なので、仕方なく①と②の二部構成にしました。
エドガーとルカの戦闘シーンを、楽しんでください!
ディルムントの街中に突如として現れた黒馬の魔物に、通行人が驚いた顔で次々と道を開けてくれる。その光景に、ほんの少し優越感を感じているルカは、得意気な表情でオズワルドの店へと向かっていた。
「オズさん!聞いてください!私たち──」
オズワルドの店の前に到着するなり、飛び降りるように黒馬から地面へと着地したルカは、目の前の光景にその動きをピタリと止めた。
「昨日ぶりー!貴方のことは、シリルが調べていたから色々と聞いたんだけど……忘れちゃったのよね。まぁ、そんなことはいいや!お姫様は、どこにいるの?」
オズワルドの店の前には、昨晩、保存食の店までの道中で出会った赤髪の少女が、ニコニコと微笑んで立っていた。
少女の後ろには、屈強な男から首筋にナイフを突き付けられ羽交い締めにされている、顔面蒼白なオズワルドがいた。
「その人は、関係ないはずです!解放してください!」
──ドガーーーンッ!!
ルカの叫びに呼応するように、黒馬の足元の地面が凄まじい音を立てて抉れるように割れる。
そして、割れた地面の破片が、少女へ向かって飛んでいく。
しかし、その破片は少女の手前で、見えない炎にぶち当たったかのように、音もなく欠片も残さず蒸発するように消えていった。
「わぁお!ガイア・ブレイカーを手懐けたの!?お兄さん、すごいね!」
目の前の少女は、黒馬の威嚇に怯まないばかりか、逆に楽しそうに瞳をキラキラと輝かせていた。そして、興味津々な様子で身を乗り出し、黒馬を観察している。
──ブルルルッ!!
黒馬は、メルドラの接近を嫌がるように鼻を鳴らし、後退りをする。
「なによ、ちょっとくらい観察したって良いじゃない!いじわる!」
メルドラが唇を尖らせて抗議をするが、ルカは表情を硬くしたまま黒馬の前へと立ちはだかる。
「早くその人を解放してください!!」
ルカが叫ぶと、メルドラは肩をすくめて溜め息を付く。
「だーかーらー。このおじさんと、お姫様を交換しましょうよって!」
屈強な男が、オズワルドの首筋へとナイフを先程よりも強く押し当てる。そこから、ゆっくりと鮮血が流れていく。
「早くしないとー、このおじさんの頭、身体とサ・ヨ・ナ・ラ、しちゃうかもよ?」
歯を食いしばったまま動けないルカを、ケタケタと笑いながら挑発する少女だったが、ハッと横向いて防御の姿勢を取る。
──ドガンッ!!
音もなく現れた黄金の影に、メルドラは防御の姿勢のまま、店の前から吹き飛ばされる。
そして、ルカが吹き飛んでいくメルドラから、オズワルドへと視線を戻した時には、すでに屈強な男は無力化された後だった。
「オズさん!大丈夫ですか!?」
ルカが慌ててオズワルドへ駆け寄り、その首筋へと自らの手を添える。その掌が淡い光に包まれたかと思うと、オズワルドの首筋の傷は完全に塞がっていた。
「⋯⋯あぁ、アレクシス。ありがとう。そして、騎士様もありがとうございます」
オズワルドは、相当な恐怖からかまだその顔は蒼白だったが、律儀に感謝を伝える。その中年男性の安全を確認したエドガーは、自分が吹き飛ばした赤髪の少女から視線を逸さず警戒を続けた。
「⋯⋯黒馬さん、オズワルドさんを守るか、この一帯に戦いの被害が出ないようにすることは出来ますか?」
ルカは、黒馬へとそっと触れながら語り掛ける。
──ヒヒーーーーン!!
黒馬は、高く嘶くとオズワルドの店の前へと移動していく。そして、赤々と輝く晶石のたてがみを激しく明滅させた。
──ゴゴゴゴゴッ
地面が激しく揺れたかと思うと、岩石の壁が地面から生えてくる。それは、あっという間にルカ、エドガー、メルドラの三人を取り囲むドームを形成した。
「⋯⋯ちょっと!金髪のお兄さん!あたし、あなたに用はないんだけど!」
メルドラは、両腕を振りながらエドガーとルカの方へと歩いてくる。そして、ふと周りを見て目を丸くする。
「えーー!何、この壁!!」
ぐるりとその場で一回転して壁を眺めてから、満足そうにその場で身体をほぐすようにジャンプをする。
そのメルドラの様子を見ながら、エドガーとルカは緊張感を高めていく。
「⋯⋯きみ、戦えるか?」
エドガーは、決してメルドラから目は離さず、自分の横にいるルカへと声を掛ける。
「はい!エドガー様!私も全力で戦います!」
ルカは、背中から剣を取り出し構えながら答える。
(──私は、この少年に名を名乗ったことがあったか?)
エドガーが、横で剣を構える少年へと少し違和感のある瞳でチラリと見ると、剣の刃の根元に彫られた紋章が目に入った。
(──その剣に刻まれている紋章は、メティスリアの──)
──何故その剣を、と問い掛けようとしたが、少し離れたところから地面を軽く蹴る音がしたことで、反射的に視線を戻す。
「よそ見してると、死んじゃうよーー!!」
メルドラが、エドガーへと真っ直ぐに突っ込んでくる。目の前に来たと思ったら、瞬時に少女の姿が消える。
(──下かっ!)
エドガーは、後ろへ飛び退きながら、低い姿勢でこちらを狙う少女へと薙ぎ払うように剣を振る。
少女は、横から振り抜くような剣の軌道を、更に身を低くしてかわすと、剣が頭上を通り過ぎた瞬間を見逃さず、右手に力を込めながら一気にエドガーの間合いへと飛び込む。
「──んぎゃっ!」
しかし、少女の拳はエドガーにかすることもなく、華奢な体ごと蹴り飛ばされた。
右から剣を振り抜いた勢いのまま、身体を左へと捻ったエドガーはそのまま右足を軸にし、左足で回し蹴りを放ったのだった。
それにより、メルドラはルカの真横を猛烈な勢いで通り過ぎ、岩石の壁にめり込むようにぶつかる。
「⋯⋯ぐはっ!」
メルドラは、背中から岩石へとぶつかった勢いで、胃の内容物を吐き出してしまう。それでも、少女の口元は楽しそうに弧を描いていた。
「──久しぶりに楽しめそう!!」




