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【本編完結】白銀の王女と黄金の騎士─婚約者が私を殺しに追ってくる─  作者: Piko-Lele
第三章 動き出す黒い欲望

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契約②


ルカは迫り来る岩石の嵐を、目にも留まらぬ剣技で弾き飛ばしていく。



「──きゃあっ!」



突然、聞こえた悲鳴に驚いてそちらへ目をやると、ルカが弾いた岩石の残りが、フェリシアの方へと一直線に飛んでいくのが見えた。



「フェリシア様!」



焦ってルカが叫ぶと同時に、岩石を避けるため白馬が大きく跳ねた。しかし、急なジャンプに対応できなかったフェリシアは、白馬のたてがみを掴み損ねていた。


空中で落馬したフェリシアを目掛けて、弾丸のような岩石が飛んでいく。フェリシアは咄嗟に、岩石に向けて両手を突き出し魔法を詠唱しようとする。



(──ダメッ!間に合わないわ!)



魔法発動よりも早い岩石のスピードに、直撃を覚悟したフェリシアが目を瞑る。



「迅風・ヴォルテクス!!」



ルカの声が聞こえたが、いつまで経ってもフェリシアの身体に衝撃は訪れなかった。次の瞬間、身体がフワリと舞い上がる。恐る恐る目を開けると、先程まで自分を目がけて跳んできていた岩石が、一緒にフワフワと漂っていた。



「フェリシア様!ちょっと揺れますが、耐えてください!!」



ルカが言った瞬間、下からの風圧で身体が上へと持ち上げられていく。巨大なつむじ風に巻き込まれたかのように、どんどん上空へと運ばれていくフェリシアだった。しかし、つむじ風の上部へと到達した途端、あっという間に外へ弾き飛ばされた。


それを待っていたように駆けてきた白馬が、フェリシアをその背にキャッチした。そして、そのままルカと黒馬から離れていく。



「白馬さーん!安全なところまで、フェリシア様を連れて行ってくださいねー!!」



フェリシアを見送ったルカは、ふぅ!と息を吐くと空気の塊の上で今なお低く唸っている黒馬を見据える。



「黒馬さん。ちょっと、派手にやりすぎてませんか?フェリシア様がケガでもしたら、どうしてくれるんですか!」



──ブルルルッ!!



黒馬が興奮で鼻を鳴らし、またルカへと突進を開始する。



「──シャドウ・アンカー」



黒馬の影へと、無数の針が降り注いだかと思うと、空気の足場が時間経過で消失していく。突然、足場が消えた黒馬は地面へと落下し、その場で縫い留められていく。そして、黒馬は完全に動きを封じられたのだった。



「──さて、黒馬さん。私を乗せてくれる気はありますか?」



前膝を折り地面に屈服させられている黒馬だが、その瞳の闘志はまだ消えていなかった。



──ブルルルッ!ブルルルッ!



鼻息荒く、こちらを見据える黒馬を目の当たりにして、ルカは手懐けることを諦めることにした。



「そうですか、分かりました。無理矢理呼び出して、すみませんでした」



ルカは短く謝罪すると、黒馬の戦意を喪失させるために剣を黒馬へと向ける。



「ヘブンズ・ピロー!」



一直線に放たれた鋭利な矢のような剣技は、黒馬の硬い晶石のたてがみにぶち当たり、粉々に砕いていく。



──ヒヒーーーーンッ!!



たてがみが粉々になった刹那、黒馬が大きく嘶いた。そして、強い突風が巻き起こる。



「──うっ!!」



ルカは、両腕を体の前でクロスして防御の姿勢を取る。突風が落ち着き、腕を下ろすとそこにはルカのシャドウ・アンカーを打ち破り、立ち上がっている黒馬がいた。



(あれだけやっても、無傷かぁー。こりゃあ、参ったな。)



ルカは自らの剣を黒馬の足元へと投げ出し、両手を上げて降参のポーズを取る。



「私の負けだな。黒馬さんを追うこともしないから、さぁ、どこにでも自由に行ってくれ」



しかし、黒馬は鼻息も荒いままゆっくりとルカに近付いてくる。



──ドスッ



黒馬は、鼻先でルカの肩を強く押した。ルカが耐えられる程度の力加減で、何度も押してくる。



「⋯え、な、何だよ」



──ドンッ!!



黒馬は苛立った様子でルカに思い切り頭突きを喰らわせ、彼を地面に尻もちつかせた。その拍子にルカのフードが脱げ、黒髪と赤い瞳が露わになった。



「⋯⋯いててて、私は降参したじゃないか。そんなに、嫌がらせみたいなことをしないでくれよ⋯⋯」



顔を上げると先程、粉々に砕け散ったはずのたてがみが、赤々と燃えるような晶石へと変化していた。心なしか風にそよいでいるように見える。



──ブルルルッ



「もしかして⋯乗せてくれるのかい?」



──ドスッ



「⋯⋯いや、痛いって。じゃあ、乗るよ?」



ルカはそっと立ち上がると、黒馬のたてがみを掴みヒラリとその背に跨がった。



──ヒヒーーーーン!!



黒馬は前脚を高く上げてから、ルカを乗せて駆け出す。出会いのシーンの時のような黒煙を上げることなく、なんとも軽やかな足取りだった。



「フェリシア様の白馬が、何処へ行ったか分かるか?分かるなら、そっちへ向かってくれ」



──ヒヒーーーーン!



ルカの言葉に応えるように嘶くと、スピードを上げる黒馬。大地と相性が良いのか、一歩踏み出すごとにグングン加速しているのが分かる。


あっという間に、フェリシアと白馬が旋回している真下へと到着したのであった。



「ルカ!その黒馬、無事に手懐けられたのね!おめでとう!」



白馬の背からフワリと地面へ降り立ったフェリシアが、ルカと黒馬へと近寄る。



「ルカ。あなたって、随分と多才なのね」



フェリシアが、そっと黒馬へ手を伸ばすと、黒馬もまたフェリシアへと鼻先を近付けた。



「黒馬さんも、とても強いのね」



フェリシアに鼻先を撫でられ褒められた黒馬は、どことなく得意気に見える。



「この黒馬を手懐けるのを諦めるくらい、手強かったですよ⋯⋯でも、これでポルト村まであっという間に行けますね!」


「そうね!オズさんのところへ戻りましょうか!」



二人はフードを被り直し、それぞれが馬の背に乗り駆け出す。白馬は空中を踊るように駆け、黒馬は地面を滑るように駆けディルムントへと向かうのだった。



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