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第2話 ヘルプ要員

 朝食を食べていると、陽向さんからラインが来た。


『昨日はありがとう。 急で申し訳ないが、妻の陣痛が始まった』


 そうか! もうすぐ陽向さんの5&6人目のお子様が産まれるのかあ!


『おはようございます』

『疲れはとれましたか?』

『こちらは大丈夫です』

『くれぐれもお気を付けて!』

『産まれたら写真送ってくださいね〜』


 ……と、矢継やつばやに返信した。


『さすが打ち込みはやいね』


 いえいえ、中高生には負けますわよ

 (〃∇〃)


『こんな状況なのに申し訳無い。 上の子供たちの面倒を見なくちゃならないから許して!』


『とんでもない!』

『最初から判っていたので』

『問題ありませんよ』

『普段、休めないから』

『お子様との時間を楽しんで下さいね』


『(≧∇≦)Goo』……陽向さん返信が来た。 やっぱりスタンプまでグーポーズだ(笑)




 ……などと、陽向せんに心配をかけさせまいと『大丈夫』なんて答えたが、実は不安しか無い。


 東戸中央クリニックのPCR検査センターは実質、私と陽向さんの二人しかいない。 大東風部長からは、いまだにヘルプ要員追加の連絡は来ていない。


 ……って事は


 陽向さんが復帰するまで、私一人でセンターを回さなくちゃならないって事!?


 先が思い遣られる(泣)


 母が「さっきまで嬉しそうな顔をしてると思ったら、今度は泣いてる! 大丈夫!?」と言って、私の顔を覗き込んだ。


 私が、陽向さんが抜ける事を伝えると「真優まゆの話だと、部長さんはやり手みたいだし、その人も何か伝えてくれてるんじゃない?」と言ってくれた。


 不安は拭えないが、悩んでいても仕方ない。


 出勤すると、センター前に、ふっくらした壮年の男性が待っていた。


「初めまして。 町野県北病院の事務から出向して来ました『盛山 宏』です」


「は、はい! 初めまして! 臨床検査技師の『はるか 真優まゆ』です! ヘルプの方ですか?」


「はい。 つい先程、大東風部長に言われて……」


 トルネード、健在!


 ちなみに臨床検査技師が行う検体検査は『業務独占』では無いので、一般のかたでも、指導すればやって頂けるんだ。


 良かった良かった!



 ……と思ったのも束の間


 盛山さんは……行ってしまった……


 私を残して……。


 

 ……理由は単純だ。


 盛山さんの検体でサターンウイルスPCRの検査方法を説明していたら『陽性』だったんだ。


 サターンウイルスは、人によって感染しても症状が出ない場合がある。



 その翌日、町野県北病院から70件分のPCR検体が届く事になったのは言うまでもない。


 ……その後数回、自分の検体で検査を行ったが、幸い私は感染せずに難を逃れたのは不幸中の幸いだった。



 目に見えない『恐怖』との戦いは、まだまだ続く。

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