第9話 チーム
「ははははは」
えっ!? 笑ってる!?
「遥さんは、噂通りの優しい方ですね。 その気持ちは、いつまでも持ち続けて下さい」
「は……い……」
――いや、今はそんなことを聞きたい訳じゃないんだけど。
「それと、ゲンキ……は元『DMAT』です。安心して下さい」
……! ディ、DMAT!
『DMAT』……Disaster Medical Assistance Team……医師、看護師、コ・メディカルで構成される、大規模災害や多傷病者発生時に急行し、人命救助を第一の目的としたスペシャリスト『災害派遣医療チーム』の略称だ。
1995年1月17日戦後最悪の災害「阪神・淡路大震災」が発生し、死者・行方不明者6,425名 負傷者43,772名を記録した。
後に公的機関により大規模な調査が行われ、その結果「避けられた災害死」が500名以上存在した可能性がある……との報告がなされた。 その為、医師が災害現場で医療を行う必要性が認識されるようになり、平成17年4月、厚生労働省により『DMAT』が結成されたのだ。
陽向さんが、その一員だったとは……。
彼の冷静さや慧眼は、そこに裏打ちされていたのか!
だが、それとこれとは話が違う!
『DMAT』だって個人では疲れもするし、体調不良にだってなるだろう。 私はここで引くわけにいかない。 陽向さんを、少しでも楽にしてあげたい!
「『DMAT』だったかも知れませんが、その前に陽向さんも普通の『人間』です! 今、PCR検査センターは、実質ふたりしか居ません。 私が出られない分、陽向さんに負担がかかっているんです! これ以上無理はさせたくありません!」
「遥さん、ありがとう。 しかし、俺が言ったのは、そういう意味じゃない」
「……?」
「ゲンキは『DMAT』だったからこそ、汎ゆる状況を冷静に分析出来る。 しかも瞬時に……だ。 あいつが『いける』と判断すれば確実に遂行可能だし『無理だ』と言えば、別の手を考えなければならない……そういう事だ」
……そうか! そういう事……か!
『DMAT』だったからこそ、陽向さんは優れた分析能力を有している!
先ず、災害時には、自分たちの命を最優先に行動するのが大前提だ。 私たちが感染対策を万全に行うのと同じだ。
次に『トリアージ』……つまり『生命に優先順位をつける』のも、時には必要となる。 『全てを救う』のが原則ではあるが、現実には厳しい時がある。 その際には、非情な判断も下さなくてはならない。 『救える命』を確実に救う為に!
それらを可能にするのが、艱難辛苦を乗り越えた『経験』と『実力』だ。
大東風さんと陽向さんは、私が考える以上に『信頼』という固い絆で結ばれていたんだ。
「部長、私……余計な事を言いました。 本当に申し訳御座いませんでした!」
私の完敗だ。 本当にすみません……。
「いや、俺は心底安心した。 この世界で一番大切なのは『思いやり』だ。 貴女方がその気持ちを持ち続けている限り、俺たちの『チーム』は、何があっても負けない!」
私はこの時、初めて大東風さんが上長で良かった……と心から思った。




