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第6話 泰然自若

 この時期、サターンウィルス感染症は、再び増加傾向にあったが、前回の『感染の波』が収まりつつあったので、世界的に気のゆるみがあったんだろう……前回のピーク時に比べて、感染者数は一気に急上昇していた。


 しかも、今回拡がっているサターンは、別の『株』に変異していた。 以前の株とは比べものにならない程の感染力を有していたのだ。


 それは瞬く間に抵抗力の低い高齢者や基礎疾患をお持ちの患者さん達に感染してしまった。 そして、各地で『クラスター』と呼ばれる、感染の危険が高い集団が発生した。


 その集団が、ついに町野グループの施設にも発生したんだ!



「検査は何名ですか?」


「1つは100名……もう1つは200名程度だ」


 300!? しかも1つの施設じゃないの?


 200名でもギリギリなのに、明日の集団PCRと合わせて200+300で500名も増える!?


 取り敢えず、明日、明後日は、外部依頼施設の検査のみで手一杯だ。 それでさえ、確実に結果が出せるか、やってみなくては判らない状態だ。


 何せ、この検査数は未知の領域なんだ。


「……あと3日待って頂けますか? それなら何とか……」


「いや、それは困る! 何とか明日中に結果が欲しい」


 明 日 中 !?


 以前も言ったが、私は基本、与えられた仕事に対して文句を言う事は無い。


 前回の、必要書類の準備で無茶振りされた時も、何とかやりきった。(本章『第6話 馬鹿ぁ!』をご参照下さい)


 しかし、今度ばかりは、他の施設に迷惑がかかる! さっきの遠川とおがわさんの不安気ふあんげな顔が目に浮かんだ。


 一歩も引かない覚悟で言った!


「外部施設の検査を一時ストップして町野うちの検査をするのなら可能ですが、現時点で、明日中の報告は不可能です!」


「じゃあ、仕方ない」


 ……良かった! 意外と簡単に諦めてくれた!


「こっちを優先して下さい。 施設には、謝罪の連絡をしておきます」


 ……! ……そ……そんな……。


 確かに、自グループ内にクラスターが発生したとしたら大事おおごとだし、一刻も早く結果が欲しいに決まっている。 しかし、既に予約が入っている検査を後回しにしてしまうというのは承服しかねる。


「明日、陽向さんが検体採取に行く予定になっているんですが、それも変更ですか?」


「いや、検体採取は明日中に済ませて、《《報告》》を遅らせてもらう」



 そうなんだ。 なら良いや。 


 検体さえ届けば、こちらの体制を整えれば検査可能だ。


「判りました。 では、可能な限り早急に結果報告します。 グループ内施設の検体採取は、どなたがやるんですか?」


「グループ内の検体採取は、都合をつけて看護師にやってもらう。 悪いけど、採取容器の準備をお願いできる? 明朝、取りに行かせるから!」


「承知しました。 300名分……予備を含めて、320名分準備します!」


「ありがとう! よろしく!」『ガチャ!』『キーーーーーーン』


 うわっ! 耳がっ! 穂上さんもそうだが、大東風さんも忙しい人だなあ。



さて、どうしましょうかね~♪ 


 前処理は今日中に終えるとして、明日の午後には、一気に500名(!)分の検体が到着してしまう。


 当PCR検査センターの設備は、1回に処理可能な検体数は30検体、検査時間は約90分。 単純計算で25時間かかる! しかも、寝ないで作業して……である。


 ……明日中に結果を出すなんて到底無理だ!


 よし!


 潔く諦めよう♡


 は~い! 解散~!


 み な さ ん さ よ 〜 な ら



 私は当然クビだ。


 クビになったら、しばらく旅にでも出よう。 自分を見つめ直す旅に……。


 この物語も、次回からは‘’さすらいの臨床検査技師『はるか』”に改題だ。


 ……もう、誰も読んでくれなくなるだろうな。。


 ( ノД`)シクシク


 ( ノД`)シクシク


 ……( ノД・)チラッ


 ( ノД`)シクシク





 なんちゃって(笑)


 

 さて、読者の皆様は、いつもあたふたしている私が、こんなに呑気にしている事に疑問を持たれるでしょう。



 ふっ ふっ ふっ……


 実は、我が『PCR検査センター』には『奥の手』があるんだ!


 その全容は、次回明らかになるのだが、まずは、今日やれる事を済ませちゃおう!



 私は、そそくさと明日の準備を始めた。

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