第4話『確認』
検体採取容器の準備が完了するタイミングで、問診して下さるドクターが到着した。 ……結構、若そうな先生だ。
出迎えた遠川施設長との挨拶を済ませたドクターが私達に近づき「お疲れ様」と声をかけてくれた。こちらも答礼する。
ドクターの胸の名札には『篝火』と書いてあった。
……?
……変わった名字だけど、何処かで見た記憶が
…………
あ〜〜〜! り、理事長だ!
『町野グループ』の理事長が自らお出ましになるとは!
後から聞いた話だが、今回の集団PCRは、あまりにも急な依頼だったので、手の空いているドクターが居なかったらしい。
理事長は、以前お写真で拝見した事があったが、実物は印象と違って、気さくな感じだった。
さて、入居者さまの問診は、ドクターと看護師が行うので、陽向さんは理事長の補佐に付き、私は問診が済んだ部屋に入って検体を採取した。
施設の職員さんの案内に従って、問診と検体採取を進める。
こちらも想像以上にスムーズに事が運び、30分以上早く検体採取が終了した。
理事長を見送り、撤収準備を終えて、遠川さんにご挨拶した。
遠川さんが遠慮がちに言った。
「本日は、遠くまでお越し頂き、ありがとうございました。 ……結果は明日には出ますかね?」
以前も書いたが200人近い検査には9時間以上かかる。 とは言え、朝一番から始めれば、明日中には結果を出せる計算だ。
「結果が出た時点で、順次報告しますが、 明後日なら確実にご報告出来ます」と答えた。 ……こんな時に限って問題が発生したりするのが世の常だ。
「わかりました。 では、宜しくお願い申し上げます」
陽向さんが「ご入居者様と職員様、どちらを優先致しましょう?」と言ってくれた。
ナイスフォロー! って言うか、本来私が聞くべき質問だった。 感謝です!
「ご入居者様を優先して下さい!」
このお返事が返って来るのは至極当然なのだが、この『確認』こそが、トラブルの抑止力となる。
『意思の確認』は、如何なる場面においても最優先事項だ。
「了解致しました。 じゃ、遥……ご入居者様を優先で」
「はい!」
このやりとりを見ていた遠川さんが、満足げに微笑んで頭を下げてくれた。
私は小さく陽向さんにガッツポーズをしてペコっと頭を下げた。
やはり、亀の甲より年の功(←失礼) 勉強になる!




