第3話「打て打て〜」
いつも陽気な陽向さんも、表情が曇っている。 まさかこんな事で停滞してしまうとは想像していなかった。
もし、ご施設のコンピュータをお借り出来れば名簿の100名や200名くらい一気に入力しちゃうんだけど「貸して下さい」なんてお願いするのは非常識だし、そもそも貸して下さる訳が無い。
ノートパソコンでも持ってくれば良かった……と悔やんでも今や遅し。 片道2時間以上かけてここまで来てるんだ。
何か、何か良い方法は?
…………
……! そうだ!
実は今、ドクターがレッドゾーンに立ち入る際、スマホをジップ袋に入れた状態で、問診とカルテ入力をしている! スマホがあるじゃん!
「遠川さん!」
早速、施設長に声をかけた。
「少々お時間をいただければ、私がスマホでカタカナ入力した後、メール添付するのは如何でしょう? そうすれば、検体シールも印刷できますので、かなりの時間短縮になりますが……」
少々早口に言ったので遠川さんはちょっと考えていたが「早くなるなら」と言って、事務員さんを呼び戻して下さった。
私は、字を書くのは苦手だが、スマホ入力には自信がある!
早速、事務員さんに『オナマエ』を読み上げて貰い、爆打を開始した!
……あっという間に入力が完了し、当初想定していた時間の5分の1程度の時間で、リストとラベルが完成した。
後は、これを検体採取容器に貼り付けるだけでOKだ!
陽向さんが小声で「遥さん! お陰様で時間が短縮出来たよ! カッコ良かった〜! グッ!」と、褒めてくれた。
いつも陽向さんに助けられてばかりなので、少しでもお役に立てたのなら、それだけで嬉しかった。




