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第1話 検体採取

 施設の正面玄関に立つが、自動ドアは開かない。 


 ……施設の入口は、基本的に『二重扉』になっているのがマストだが、今回は扉と扉の間『風防室』も『イエローゾーン』としての解釈が必要で、何も知らないかたが入って来てしまうと問題になりかねないので、今は施錠してある。


 玄関横の呼び鈴を押すと、PPEに身を包んだかたが開錠してくれた。


 そそくさと施設内に入ると、先程の遠川とおがわさんが、やはりPPEを着てやって来た。


「有難う御座います。 では、こちらに」と、管理棟の会議室に案内された。


 中では40~50名の、施設の職員の方が並んで待っていた。 PPEを着用しておられる職員に協力して戴き、検体採取用の綿棒と専用スピッツを配る。


 皆さんの手に渡ったところで、陽向ひなたさんが中央に立ち、準備しておいた『検体のり方』を提示しながら、採取方法を説明した。


 厚生労働省が推奨しているサターンウィルスの検体採取方法は『唾液』『鼻腔ぬぐい液』『舌由来蛋白質ぬぐい液』が代表的だ


 しかし『唾液』は必要量の採取に時間がかかり、また、粘調度が高い場合は、検査前にサラサラな状態にする必要がある為、特殊な薬剤を混合したりする『前処理』が必要となる。 


 また『鼻腔ぬぐい液』は、採取の為、鼻に綿棒を入れる際に、くしゃみを誘発し、ウィルスを撒き散らしてしまう危険がある。


 その点『舌由来蛋白質ぬぐい液』は、上記の問題が起きにくい上、サターンウィルスの検出率が高いとの研究発表もあり、私たちはこの方法を採用している。 綿棒で舌の上をこそぎ取るようにする方法だ。


「はい! では、スワブを袋から出して……咥えて下さい! そのまま……舌苔を削ぎ取るようなつもりで少し強めに……左右5回ずつ上下しまーす。 いち! にい! ……」


 おー! さすが陽向さんは慣れている! 声も大きいし、何と言っても号令のかけ方が、実に堂に入っている。 素晴らしい!


 職員の方もそれに従って順調進み、20分もしないうちに50人近い職員の検体採取が終了した。


 採取した検体を清潔な袋に移しながら、墨台さんに小声で言った。


「陽向さんは、やっぱりさすがですね~! 職員さんがたとは言え、こんな順調に進むと思わなかったですよ!」


 すると


「いやあ~……こんなの初めてだから緊張したよぉ~!」と言って、汗を拭くジェスチャーをした。。


 ええぇぇ~~? 初めてぇ~!?

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