第8話 トルネード
『プルルルルー プルルルルー』と、聴き慣れない音がした。
外線電話だ。
今まで聞いていた町野中央病院の検査室の電話の音と比べるとかなり高音だ。
「はい、検査し、いえ、ピー・シー・アールけんせ、センターの遥です」うわっ! 言い慣れないもんだから噛んじゃったあ!
「はるか……さん、初めまして。 私『健康推進事業部』の『大東風 辰雄』です。 中々挨拶が出来ず、すみません。 ゲンキ……いや、陽向、居ます?」
「はい、代わります!」
陽向さんを呼び、電話を代わって貰った。
おおごち? さん!?
凄い名前! どんな字だろ
「遥さん『検体採取』……出来ます?」
電話を切った陽向さんが聴いてきた。
臨床検査技師は、医師の具体的指示があれば、法律で定められた部位からの採血を許可されている。
更に数年前から、それに加えて以下の項目が検査技師の業務として認められた。
① 鼻腔拭い液、鼻腔吸引液、咽頭拭い液その他、これらに類するものを採取する行為。
② 表皮並びに体表及び口腔の粘膜を採取する行為。(生検のために、これらを採取する行為を除く。)
③ 皮膚並びに体表及び口腔の粘膜の病変部の膿を採取する行為。
④ 鱗屑、痂疲その他の体表の付着物を採取する行為。
⑤ 綿棒を用いて肛門から糞便を採取する行為。
私は免許を取得してから数年しか経っていないので問題無いのだが、深田先輩や都先輩、さらに五木技師長は、免許を取ってからだいぶ経つので、上記の検体採取をするには講習を受ける必要がある。
そんな訳で、私は問題無く検体採取ができるんだ。
「はい。 私は採取出来ます!」
「グッ!」
出た! グーポーズ!
「鷹音市の施設で、サターンのクラスターが発生したそうだ。 遥さんが取れなかったら、俺一人で行かなきゃだったけど、助かった〜。
検体容器とスワブ、後PPEを用意して貰える? 俺、レッドゾーンセットと車、準備して来る」
「何人分用意します?」
「えっと、入居者、職員、濃厚接触者……予備、そうだなあ〜、200名分、お願い!」
200めい、ぶん……っと。
……!
に! にひゃくめいぃぃ〜〜!?




