第6話 ガッツ
……保健所の監査は問題無く終了し、取り敢えず安心した。
保健所の方が帰ると、既に昼休み時間だった。 私はフラフラと夢遊病のように検査センターから移動した。
検査センターの横に小さな休憩スペースがあり、そこで一息つけるようになっている。
お昼ご飯もそこで食べられるのだが、今日は何よりゆっくりしたかった。
午後からは検査試薬の卸問屋さんが来る事になっているので、その前に休憩を取ろう……と椅子に腰掛け、軽く目を閉じた。
ZZZZZZ
「こんにちは〜!」
うわぁ! 大きな声! 良く通る声が、検査センター内を跳弾のように駆け巡り、休憩室を急襲した!
「ふわっ! は! はひっ!」
……ウトウトとし始めた直後の訪問者で、呂律が回らない!
慌てて鏡を覗き込むと、おでこに薄赤く腕の跡が残っている!
「ちょっち、おまちくらさい!」回らぬ呂律で返事をしつつ、ファンデをおでこに叩き付け、慌てて休憩室から飛び出した!
そこには、ニッコリと微笑む男性が立っていた。
スポーツマンタイプ? 背は普通だが、身体は締まった感じで、程良い肌の浅黒さがワイルドでカッコ良い! 紺色のスクラブを身に着けている。
……ドクター?
「すみません、お待たせしました」とお辞儀をする
「いえいえ! こちらこそ、起こしちゃってすみません!」と、その男性が、バツが悪そうに言った。
うわっ! 寝てたのバレた!
「初めまして! 私、看護師の『陽向』と申します。 これからも宜しくお願いします!」
こんなに溌剌とした自己紹介は最近聴かない!
「はっ、はい! 初めまして! 私、臨床検査技師の『遥 真優』と申します!」
私は仮にも劇団に所属していたりするので負けじと、はっきりした大きな声で答礼した。
その時、彼は徐にこぶしをこちらに向け、ウインクしながら
「グッ! 元気があるね! 」
……と言ってくれた!
***
その時は、この『ガッツポーズ』に、この後、何回も救われる事になろうとは、想像も付かなかった。




