前編 ツッコミどころ満載!
今回は趣向を変えて、ちょっとした『ファンサービス』をお届けします。
本編の登場人物たちが、もしも「刑事」だったら? という、完全なるパロディ短編です。
本編では見られない、ハルさんやミーヤさん、はっしーたちの活躍をお楽しみください。
※深田先輩はお休みです。
俺の名はサム。
この警視庁捜査一課で、誰よりも真っ先に事件の真相を指し示す……『親指』だ。
俺の相棒は、捜査一課の若きキレ者、警視庁の『ハルさん』こと遥真優警部。
そう、俺はハルさんの親指だ。
ここは警視庁捜査一課。日々、血生臭い事件と格闘する、警察官なら誰もが憧れる花形の部署だ。
その日、沈黙を破ったのは、五木刑事長のデスクに置かれた電話だった。
「もしもし、俺だ。 なに? 殺し!? 場所は?」
その一言で、室内の空気が一変する。捜査一課の面々に、鋭い緊張が走った。
「京東町で殺しだ! 現場に急行!」
刑事長の号令とともに、ハルさんは迷いなくコートを掴んだ。 俺をポケットの奥に潜ませて。
***
現場では、鑑識の皆さんが、指紋採取や写真撮影に追われていた。
先に到着していた都警部補――通称ミーヤさんが、警察手帳を片手にハルさんを呼び止める。
「ハルさん、お疲れ様ですぅー。 ガイシャは大家田善蔵、65歳。 不動産会社の社長さんですぅー。 死亡推定時刻は、昨日の23時から24時。 死因は、青酸カリによる毒殺ですねー」
ハルさんが、遺体の顔にかけられた白い布を無造作に捲り上げた。
そこには、苦悶の表情を浮かべた、いかにも一癖ありそうな男の顔があった。
「ふん。悪そうなツラをしてるな……」
ハルさんの独り言に、ミーヤさんが「お目が高いー」と同意する。
「ガイシャさん、近所の評判も最悪。仕事の方でも、相当恨まれてたみたいですよぉー」
「そうか」
ハルさんはぶっきら棒に呟くと、再び白布をかけ直した。
そこへ、黄色い規制線を潜り抜けて橋本刑事――通称はっしーが駆け寄ってくる。
「ハルさん! 被害者の部屋、内側から完璧に鍵が掛かっていたそうです!」
ハルさんの瞳が鋭く光る。
「密室殺人……か」
続いてミーヤさんが、一人の女性を連れてきた。
「ハルさん、お手伝いの田中さんですぅー」
「私が下の階で、テレビを消してそろそろ寝ようと思っていたら、旦那様の部屋から大きな音がして……。慌てて部屋に行くと、鍵がかかっていたので、合鍵で開けたら! 旦那様が、こ、こんな姿に!」
田中さんは泣き崩れた。 ハルさんは近くの女性警官に目配せし、田中さんを静かに外へ連れ出させた。
「はっしー、鍵は?」
「はい。合鍵は、お手伝いさんが持っていたひとつだけのようです」
ハルさんは顎に手を当て、考え始めた。
窓、ドア、全てが内側から閉ざされた空間。
「……完全密室……だな……」
ハルさんの思考が、深い迷宮へと入り込んでいく。
だが、彼女の親指である俺は知っている。密室なんてのは、いつだって『真実』への入り口に過ぎないってことを……な。
ご安心ください
このような茶番は、次までです!




