第4話 無力感
この頃、まだ美緒は入院中だったが、体調は、かなり改善していた。 人間、元気になるとじっとして居られ無くなるようで、ほぼ毎日のように会い、屋上や購買を行ったり来たりしながら、面会時間終了ギリギリまで、お喋りしていた。
『……。』
……美緒は、既に大部屋に移っていた為、私は気を遣って無言でお辞儀した。 美緒のお母さんも慣れたもので、病室の入り口が見える場所にいつも座って、私の訪問を美緒に伝えてくれる。
今日は、美緒とお母さんが、一緒に出て来てくれた。
「遥さん、今日は美味しそうな桃があるのよ! むいておくから、少し早目に戻って来てね〜」
……とお母さんが笑顔で言った。
もう、すっかり専門学校時代にお会いしてた頃の元気に戻っている。
二人で、屋上のベンチに座り、話し始めた。
私はエコーで、とある患者さんの余命が一ヶ月しか無い事を知り、何もしてあげられない無力感を感じた事を、美緒に話した。
「……真優の気持ちは痛いほど判るよ。 この前、私が死にかけた時の、家族や仲間の顔…もちろん、真優の顔も、忘れられないもん。」
私は無言でうなずいた。
「……でも、サムちゃんが言った通り、私たちには、何も出来ない……。 多分、先生も、看護師も、患者さんの本当の最期には、何もしてあげられない……と思う」
美緒は私を見詰めて「だからこそ、私たち検査技師は、一秒でも早く病気を見付けなきゃならない。……手遅れになる前に……ね!」
……と言ってくれた。 そして、私の手を握り、嬉しそうに
「私、思い付いちゃった! 真優は無力なんかじゃ無い! 私……どころか、先生や看護師に出来ない、スゴいものを持ってるじゃない!」
……と言った。
私、何も無い……よ……?




