第3話 手渡し
……心の中で、サムに聴いた……。
私、どんな顔して、この封筒を渡せば良いのかな?
「普通に渡せ……と言いたい所だけど、真優には荷が重いか……」
重すぎだよ。 だって、あの人……後一ヶ月しか無いんだよ。 一ヶ月後には、家族や友達を遺して、死んじゃうんだよ!
「そうだな。 ……ただ、お前が心配しても何も変わらないよな? お前はただの技師だ。 先生みたいに治療も出来なければ、看護師みたいに緩和ケアも出来ない」
……。
「今、お前に出来る事、いや、お前がしなければならない事は、あの患者さんに、結果を悟られない事だ。 これは、場当たり的に、検査する事しか出来ない道を選んでしまった自分の『贖罪』と思え!」
グッと唇を噛んで、待ち合いに向かう。
待ち合いでは、殿舞池さんがこちらをずっと見て待っていたようだ。
「お待たせしました。 ではこちらを高橋医院さんに持って行って下さいね。」 と、顔を合わせないようにしながら一礼して帰ろうとすると……
「あ、あの……」
「は、はいっ」
殿舞池さんと目が合ってしまった。
「……あの、わたし……ガン……じゃ無いですよね……」
心臓が破れそうになった
……そうだ、これこそが試練…何も考えず、マンガ家なんかに憧れて、腰掛けのつもりでこの仕事に就いてしまった私の償い…だ。
「私たちは、もし何も無かったとしても、言えない規則なんです。 高橋先生からお聴き下さいね」 ……と笑顔で言った。
マスクしてて、良かった。きっと歪んだ笑顔だっただろう……。
その日の夕方、私は親友の美緒が入院している病院に、無意識に向かっていた……。




