第12話 本番っ!
大会当日。
会場はコンベンションセンターの大ホール。
いつもはボーリング場やらグラウンドを借りているそうだが、今回は『eスポーツ』の大会なので、ステージには大型スクリーンが設置され、選手が観ているVRの映像が、ミラーリングで映し出されている。
客席には各施設の応援団が陣取り、横断幕やうちわまで用意されている。 ……完全にアイドルのコンサート状態だ(汗)
我が『町野中央病院』の応援席には、院長、事務長、看護部長をはじめ、検査室やレントゲン、診療部の先生たちや理学療法室の鈴森さんまで駆け付けてくれていた。
そして、最前列の真ん中には、『がんばれ! ハルカ』と黒地にオレンジの蛍光シールを貼ったうちわを握りしめた人事課長の姿が!
……うっ、プレッシャーが……(汗)
出場選手は全部で八人。 他の施設の選手は、やはり若い男性ばかりで、中には、いかにも『猛者』といった雰囲気の人もいる。
競技は『サバイバルモード』のHARD。 制限時間内に倒した敵の数と、残り体力の合計で順位が決まる。
選手控室でガチガチに固まっていると、院長が顔を出した。
「遥さん、ちょっといいかな」
院長は、人事課長がこのスポーツ大会を始めた理由を話してくれた。
人事課長は毎年、地方を回って、看護や介護の道を志す学生さんを集めている。 まだ未成年の彼らを東京に呼び、寮やマンションの手配までしているそうだ。
けれど、家族や友人と離れて暮らす学生さんたちの中には、ホームシックになってしまう人も多かった。
そこで人事課長が思い付いたのが、『院内スポーツ大会』だった。 スポーツで結束を高め、友情を育んで、少しでも寂しさを和らげてあげたい……そんな思いから生まれた大会は大成功し、やがて町野グループ全体の恒例行事になったのだという。
「……だからね、勝ち負けは二の次なんだ。 遥さんが楽しんで闘う姿を見せてくれる事が、何よりの餞になると思うんだよ」
……院長……。
肩の力が、ふっと抜けた気がした。
時間になり、試合が始まった。
トップバッターは、グループ最大の『町野総合病院』の若手介護士『富田』さん。 敵の剣を最小限の動きでかわし、次々と撃破していく!
その様子も圧巻で、表情ひとつ変えない。 まるで精密機械だ。
スクリーンに映し出されたスコアに、会場がどよめいた。
ガチ勢……すごっ。
続く、各地方の代表者も、かなりの好成績を残している。
否が応でも緊張感が増してきた!
「最終選手! 町野中央病院、臨床検査技師、遥真優さん!」
いよいよ……来たっ。
私は、両手のコントローラーをギュッと握りしめ、ステージに向かって歩みを進めた。




