第11話 大会前日
「……よ、よし。 次はVRだ!」
しばらくして、気を取り直した兄貴が、お尻の土を払いながら立ち上がった。
「剣に関しては、もう俺が教える事は無い。 でもVRは勝手が違う。 敵は一人じゃないし、四方八方から来る。 しかも制限時間付きだ」
私は黙って頷いた。
「加えて、人間とバーチャルの一番の違いは『気』や『気配』だ。 人間は体温があるし、呼吸もする。 『気』という、未だに解明されていないものを飛ばしてくることもある。 ……でも、バーチャルの敵には、それが一切無い」
「……じゃあ、どうやって相手の動きを読むの?」
「『目』で読むしかない。 気配で読めない分、相手の動きを、とことん目で追うんだ」
『確かに!』
「さて、ここからは最終目的『攻略法』だ。 敵の剣は、振りかぶった角度で、落ちてくる場所が決まってる。 そこにサーベルを合わせて弾けば、敵に必ずスキが出来るから、そこを突け!」
「なるほど……『予測』と『突き』ね!」
「それと、もう一つ。 ガンモードは弾数に限りがある。 あれは最後の切り札だと思え」
「……はい。 それは身に染みております……」
院長室での『EMPTY』の悪夢が頭をよぎった(本章第5話をご参照下さい)。
……そこからは、毎晩が特訓の日々だった。
仕事から帰ると、庭で素振り。 夕食後はVRで『サバイバルモード』。 両親はすっかり観客気分で、テレビのミラーリング映像を観ながら『あ〜っ!』『そこそこ!』と声援を送ってくれる。
母は毎晩、特訓の後に『はちみつレモン』を用意してくれた。 部活みたいで、ちょっぴり嬉しい。
だが、ここに来て、運動とまったく縁のなかった私に、とんでもない洗礼が降り注いだ。
全身の筋肉痛だ!
学生時代、体育祭の練習でなったことはあるにはあるが、ここまでひどいのは生まれてこのかた初めてだ。
ロボットみたいな歩き方で勤務していると、検査室の皆さんに笑われた(泣)
周りからは滑稽に見えるんだろうが、こっちは真剣なんだよ。
そんなこんなで、今日は大会前夜。
『HARD MODE』
四方から敵兵が襲いかかってくる。
……目で読む。 振りかぶった角度を見て、弾いて、すかさず斬る……いや、『救って』いく。
そして最後の一人……一回り大きな敵兵が剣を振り上げた!
……もう、恐くない!
「ロイヤル・ミルキー・マーーーックス!」
『ズバァァーーーン!』
……静寂の後、目の前に金色の文字が浮かび上がった。
『MISSION COMPLETE』
や……やったぁ〜〜〜〜!
ゴーグルを外すと、両親が拍手してくれていた。
……兄貴は「……俺がクリア出来なかったHARDを……こんな短期間で」と、本気で驚いていた。
「お兄ちゃん! ありがと! お兄ちゃんのおかげ!」
「……ま、まあな。 師匠が優秀だからな! あはははは(←乾いた笑い)」
照れ隠しと、妹に負けた悔しさを気取られないようにしつつ、鼻の頭をかく兄貴が、今日だけはちょっぴりカッコ良く見えた。
いよいよ明日は、『町野グループeスポーツ大会』本番!
果たしていかが相成りますか!?
乞うご期待!




