第1話『巣窟』
梅雨に入り、鬱陶しい日が続いていた。
私は基本的に晴れ女なのだが、近くに雨男さんや雨女がいると、その人のパワーに負けてしまう。
今年、私が就職した数ヶ月後、看護学生さんの病院実習が始まった。
『今年の学生さんは、雨女が多い』との噂があった。
認めたくないもの……だったが、確かに陽の光をあまり見ていない気がする。
私は常に自転車移動なので、雨の日はレインコートを着て出勤する。涼しい日はまだ良いが、蒸し暑い日は中までびしょびしょになってしまうので、本当に鬱陶しいったら無い。
……その日は、朝から小雨が降っていたが、気温が低いのがまだ救いだった。
病院に到着すると、裏口が妙に騒がしかった。
ちょっと覗くと、学生さんや庶務の方が、傘を差し、姿勢を低くして、何かを探しているようだった。
まさか、また鈴森さんが何か無くしたんじゃ無いでしょうね? ……等と、鈴森さんにとんだ濡れ衣を着せつつ、庶務の下村さんに何があったかを聞いてみた。
どうやら、子猫が夜通し鳴いていたらしい。
猫かあ~
……私は猫の皮屑アレルギーがある。
余談だが、実は幼少のみぎり、私はアレルギーの巣窟のような体質で、甲殻類・チョコレート・イカ・ハウスダスト・犬猫皮屑……等のアレルギーがあり、アレルギー性の小児喘息も標準装備(笑)していた。
子供の頃、お邪魔したお宅に猫が居ると、洩れなく瞼が腫れ上がり、くしゃみが止まらなくなった。 これにより『ニャンコ・ドコーダー』という不名誉な異名を与えられていた程だ。
ふっ……今回ばかりは、私の出る幕はあるまい……とレインコートを翻し、颯爽とその場を去ろうとした時、下村さんのスマホに着信が入った。
「はい、お疲れ様です。 ……え? ええ~~!?」
いつも静かな口調で話す下村さんが、突如大声をあげた!
な? なんだぁ~?




