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第1話 ドキドキ!

 臨床検査技師の仕事は、外来を含め、他の部署が終了してからが本番となる。(本編第1章 第8話『聖母』をご参照下さい)


 その為、日勤のはずが、帰りが遅くなるのは日常だ。


 その日も仕事を終えると、既に暗くなっていた。


 当然、職員通用口も暗く、常夜灯の薄明かりを頼りに、靴箱からローファーを取り出し、下に置いた。


 ……?


 足元に、封筒が落ちていた。


 名前も何も書かれていない、無地の封筒だ。 明らかに、中に何か入っている。


 このまま見なかった事にしておこうか……とも思ったが、封がされていない。


 せめて、誰のものかだけでも見て、その人の靴箱に入れておいてあげよう…...と思い、中を覗き込むと、手紙のようだった。


 薄明かりの下で開いて読んでみると……


「先日は、ありがとうございました。 貴女の事が忘れられず、こうして手紙をしたためました。 最後までお読み頂ければ嬉しいです」


 ……え!


 ……これって……ラブ……レター……と呼ばれるもの……!?


 心臓が高まり、呼吸が速くなった!

 

 異常に喉が渇く! 私の体内をアドレナリンが駆け巡っているんだ!


 い、いちど検査室に戻って落ち着こう……と思い、下に置いたローファーを再び靴箱に戻し、その手紙を手に、通用口から検査室に逆戻りした。


 初めて手にする『ラブレター♥』!


 ……中学、高校と女子校に通い、成り行きから臨床検査技師の専門学校に入学してからは、レポートと試験に追われる日々で、『ラブレター』と言う物の存在を耳にした事はあったが、それが……私(・)の(・)手(・)元(・)に(・)届(・)く(・)なんて!


 ラブレターを検査室のデスクに置き、フリーザーからウーロン茶を取り出して喉の乾きを潤した。


 ここで深呼吸をして、ひと息ついた。


 …………


 ひと息ついたところで……私は重大な事に気が付いた……。



 この手紙……良〜く考えてみれば……


 私 が 貰 っ た ラ ブ レ タ ー で は 無 い !


 落ちていたのを拾っただけだった。


『ラブレター』と称する文書が実在していた事に驚愕して、思考がとっ散らかってしまっていた! テヘペロ〜 ←古


 ……って、ふざけた事を言ってる場合じゃ無い……これって拙《まず》いよね? 誰かのラブレターを勝手に見ちゃったよ! ……と、今度は罪悪感に苛《さいな》まれる事になった。


 いやいや、もう一度落ち着こう。


 誰の手紙かは未《ま》だ判らないが、拾ったのが意地悪な人なら、もしかしたら職員食堂に貼り出されて、からかわれたかも知れないよ! 

 

 そもそも論として、こんな大事なお手紙を落とす人が不注意過ぎ!


 これを書いたうっかりさんは一体誰!?


 ……と、自己弁護を展開しつつ、取り敢えず誰の手紙かを調べようと、再び手紙に目を通した。 ←野次馬根性


 ドキドキっ♡

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