第5話 初仕事
「お邪魔〜っ」と、看護師さんが伝票とプレパラートを持って来た。
「『白癬菌』実習で見た?」と深田先輩が聴いてきた。
『ハクセンキン』? やったっけ?
「すみません……覚えが無いです」
「皮膚科からの検査で一番多い検査だから、覚えておいてね。」と深田先輩は、ピンセットでカバーグラスを持ち上げ『KOH』と書かれた試薬を、プレパラートに乗っている『粉』のような皮膚片に滴下し、そこに再び、カバーグラスをかけた。
「『KOH』を垂らす理由は?」
「……すみません!解りません」と言いながらメモの準備をする。
深田先輩は苦笑いしながら「いや、メモする程じゃ無いよ。 『皮膚』だけを溶かして、白癬菌を見付ける為ね」
「わかりました」
「ほい。 じゃあ、ちょっと視てみて」……と言って、席を変わってくれた。
顕微鏡を覗くと……!
明らかに透明なミミズのようなものが絡まりあっている!
「これはすぐに判るわよね!」と深田先輩が伝票の『白癬菌』の欄に『(+)』と書いて、3枚綴り『検査者』の所に全てに印鑑を押した
「一番上は会計伝票。 2枚目が報告書。 3枚目がうちの控えね」と説明しながら。手早く剥がしていく。
「皮膚科は先生が電子カルテ入力するから、そのまま外来に報告書を持って行くの。 皮膚科の場所判る?」
「フロアガイドを見れば……」
「おし、じゃあ、これ持ってって〜」と、2枚目の伝票を渡された。
「はい! では、行ってきます!」
後から知ったことだが『白癬菌』とは『水虫』の原因菌だ。
私の記念すべき初仕事は、『水虫(+)』の報告書の提出だった。
……生涯忘れないだろうけど、誰にも言いたくは……無いなぁ……。




