第11話 誓い
な〜んて!
答えは決まっている。
『いいえ』だ。
元々、風俗業というものに全く興味が無い事に加え、私には、頑なに譲れない信念がある。
それは……
『ただ一人の愛した人を見つめ続ける』
これは、遥家の女性の中に脈々と流れる生き様であり、私の誇りでもある。
……女性としての魅力を武器に、殿方を喜ばせて、その対価としてお金を戴く。 それはそれで素晴らしいお仕事であり、殿方に『夢』を与える、世の中に必要不可欠なお仕事だろう。
そもそも、ねんねさんのように『オンナの武器』を最大限使いこなす女性は尊敬に値するし、羨ましいと思わないと言えばウソになる。
……でも、それはそれ。 私にとって風俗業は、全く無関係な世界だ。
***
私が小さい頃、母の実家に泊まりに行った時、まだ存命だった曾祖母の話だ。
私の曽祖父は第2次世界大戦に出征して直ぐに戦死してしまったという。 その通知が届いた時、3人兄妹の末っ子だった私の祖母は、まだ曾祖母のお腹の中にいたそうだ。
……戦時中、そして戦後、幼い3人の子供を護り続け、女手一つで立派に育て上げた。
それだけでも長編小説が作れるほどの苦労があったようだ。 その苦労を知っている親戚や知り合いが、縁談を勧めてくれたそうだが、曾祖母は全て丁重にお断りした。
理由はただひとつ……曾祖父だけを愛すると誓ったから……それだけだった。
***
この話をしてくれた時の、曾祖母のはにかんだ、それでいて誇らしげな微笑みは、幼い私の心に刻みつけられた。
そして、決めたんだ。
私、何があっても、そういう人生を送る……と。
その時、唐口さんのスマホに着信があり「お、ちょっと失礼」とウインクをして席を立った。
ねんねさんと二人きりになり、気まずい空気が流れた。
『ねんねさんが私に声をかけたのは、唐口さんに言われたからなの?』と喉まで出かかったが、飲み込んだ。
あまり知りたくない『大人の事情』に触れたくなかったからだ。
ねんねさんも、さっきまでの饒舌さがウソのように、無言でコーヒーをかき混ぜていた。




