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第8話 急展開!

 3週間後……


 十数件の『ヘルスマッサージ』店舗を周り、予定の半数以上の検体を回収出来た。


 私も、こ(・)ち(・)ら(・)の(・)従業員さんのクセ(?)や動向が判《わか》ってきて、ある程度余裕が出てきた。


『風俗嬢』と呼ばれる従業員の方々は、やはり殿方《オトコ》がお好きなようで、6人のお子さんがいる立派なお父さん、健康そうで快活な陽向さんは毎回色目を使われ、本人もまんざらでも無い様子だったが、それはそれ、私も大して気にならなくなっていた。


『もりもっちゃん』こと盛元《もりもと》先生は、そんな雰囲気に呑まれることなく、いつも通りの、淡々としつつも優しさに溢れた、私が尊敬している先生のままでいて下さったので嬉しかったし、安心材料になっていた。


 さて、その日は、店舗の中で一番当院『東戸中央クリニック』に近い場所だったので、三人ともいつになくのんびりした雰囲気での健診だった。


『今日は、いつもより早く帰れそうだから、久しぶりに本屋さんでも物色しようかな〜♪』なんて思いながら順調に進めていた。


 ……そんな折、突然その言葉が私の耳朶に響いた。


「おねーさん、『リンショーケンサギシ』ですよね!」


 ピクッ!


 え?


 以前から何回かお伝えしているが『臨床検査技師』の認知度は低い。


 白衣《ケーシー》を着て仕事をしていると、大抵、看護師さんかドクターに間違えられる。 また、仕事の内容を話しても、今度は診療放射線技師《レントゲン》と勘違いされる。


 そんなのには慣れっこだったのだが、こんな場所で、しかも全く職種が違う人から『臨床検査技師』って言葉が発せられたのには、心底《しんそこ》驚いた。


「は、はい! ……良くご存じですね!?」


「やっぱり〜。 実はアタシ、今はこんなお仕事していますが、実はビョーイン関係のお仕事に興味があるんです〜」


 その女性《ひと》は、コリアン風のグリッターと相まった印象的なキラキラした大きな目を、まっすぐ私に向けていた。


 か……感動〜!


 このお仕事をしていて、こんな声をかけていただけるなんて、想像もしていなかった。


 緊張と喜びで震えそうになる手を抑えつつ、その女性《ひと》の採血を終えると、そっとお名刺を渡され「アタシ、『ねんね』って言います。 もし良かったら、今度色んなお話を聞かせて貰えませんか?」と言われた。 


 ……薄いピンクの模様が入った可愛らしいお名刺には、お店の名前と共に『桜想《さそう》 眠音《ねんね》』と書かれていた。


 私は咄嗟に「今日はクリニックの近くなので、19時過ぎならお話できます!」と言ってしまった。


「アタシも昼番だったので、今日はこれで終わりなんです……迷惑じゃ無ければ、近くの『コロード』(ファミレス)で、ちょっとお話しましょうか?」と言ってくれた。


『臨床検査』についてのお話ができる!


 こんな機会は初めてだし、滅多にない事だ。


 私は、久しぶりにときめいていた。



 そのせいで、冷静な判断を欠いていたのかも知れなかったんだ……。

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