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第7話『お水の世界』

 その後は、スムーズに事が運んだが、気になったのは、やはり前回の話にあった『自傷痕』だ。


 採血のため腕を捲《まく》ってもらうと、かなりの方に見受けられた。


 今まで、たくさんの方《かた》の採血をしてきたが、自傷痕を、しかも複数人も目《ま》の当たりにしたのは初めてだった。


 ……自分の腕に刃物を当てて、横に滑らせる……なんて、恐ろしくも悲しい気持ちになるが、そんな行為をしてしまう方《かた》が少なからずいることに、かなり衝撃を受けた。


 これが、きらびやかに見える『お水の世界』の影……なのかな。


 まあ、私には一生縁のない世界だろう。


 そんな事を思いながら、淡々と自分の仕事をこなしていた。




「今日の予定者はこれで終了になります。 ありがとうございました」と、店長の榊さんが、お辞儀しながら私たちに栄養ドリンクを配ってくれた。


 クリニック内での物品の受領は、町野グループの院内規約で固辞する事になっている。 


 しかし今回は出張先だし、せっかくのご厚意なので、ありがたく頂戴する事にした。


 ……余談だが、私は前章で心疾患に罹《かか》り、カフェインを摂取出来ない身体になってしまった(泣)


 ドリンクは、後で陽向さんか盛元先生にあげよう。


 榊さんと世間話をしている陽向さんの横で健診者リストを確認すると、3分の1くらいの方が来ていなかった事が判明した。


 ただ、これは想定内だ。


 以前も書いたが、このようなお店では、勤務時間やシフトがまちまちで、どうしても1日で全員の予定を組めないから仕方がない。


 本日来られなかった従業員さんは、後日改めて訪問する際に健診を行《おこな》う手はずになっている。


 ……こうして、健診初日は無事終了した。

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