第7話 沈黙
「 ひ! 陽 向 さ ん っ 」
うわっ! 緊張し過ぎて、怒ったような声が出ちゃった!
まずい! 今のタイミングでこの声だと、陽向さんの『良心の声』を私が怒っているように勘違いされてしまう!
案の定「大人気なかったね! ごめん!」 と、陽向さんが、バツが悪そうに頭を下げてしまった!
「ごめんなさい! 違うんです!」
私は、誤解である事を謝罪し、改めて陽向さんにお伝えしたいことがある、と告げた。
私のただならぬ様子に異変を感じたのか、陽向さんは硬い表情で私を見上げている。
私は『懺悔』を始めた。
「私が復職してから、検査数がかなり減ってしまいました。 このまま検査依頼が来なくなって、病院の売上もどんどん下がって……そのうち、私たちが必要無くなる日が来るかも知れない……そう思ったら……」
「……」 陽向さんは眉をひそめ、重苦しい表情のまま無言で聴いてくれている。
「……私……医療従事者として在るまじき、とんでもない事を……」と口にした時、陽向さんの視線が突き刺さり、私は耐えきれなくなって、顔を伏せて泣いてしまった。
陽向さんは何も言わず、私の様子を見てくれていたが、落ち着いた頃合いを見計らって、私の好物であるミルクティーをそっと渡してくれた。 そして、慈悲深い声で……
「遥さん……俺も大東風さんも、遥さんの生真面目な性格は十二分に理解している。 もし遥さんが出来心で何かやってしまったとしても、それは君の責任じゃない。 追い詰めてしまった俺たちの責任だ」
……ん?
「ゆっくりで良いから、先ず遥さんが何をやらかしてしまったのかを正直に話してくれるかい?」
……え? え!?
「大丈夫! 『大東風グループ健康推進課』の絆は、簡単に解けない! 何があっても、俺たちは遥さんの味方だからね」
あ〜! またまたドジったぁ(泣) 私の言い方では『とんでもない事をしでかした』と誤解される!
「あ! いや! 違います違います! 何もしてません! 悪い事はしてません!」
私は両手をブンブン振り回して否定した。
「へっ? 何か不正をやっちゃったんじゃ無いの? 『水増し請求』とか『捏造』とか」
「そんな恐ろしい事、私には出来ません! そんな事するくらいなら死んだ方がましです!」
陽向さんが、大きなため息と共に、力が抜けたように机に寄り掛かった。
「良かった~! 遥さんが犯罪行為をする筈が無いのは判っているからこそ、一体何をやらかしてしまったのか、本当に心配だったよ~」 と微笑んでくれた。
「すみません……誤解を招くような言い方になってしまって……」
「……で『医療従事者として在るまじき事』って、何?」
さっき陽向さんに『生真面目』と褒めて戴いたのに、それを根底から覆すような言葉を口にしたくなかったが、この機会を逃したら私の罪は永遠に許されない。
「実は……『サターン禍が……続けば良いのに』って……」
……喉が詰まって、これ以上声が出せなかった……。
…………
……長い……長い沈黙が訪れた……。




