第4話 『頑張って』
今日から東戸中央クリニックのPCR検査センターに復帰だ。
大きく深呼吸し、恐る恐る部屋に入ると、陽向さんと深田先輩が朝の準備をしてくれていた。
「恥ずかしながら、戻ってまいりました!」
私は、敬礼しながら、ふざけた調子であいさつした。
「はるか〜!」
「遥さ〜ん!」
「辛い思いさせたね……これからは絶対無理しちゃダメだからな!」
深田先輩は私の肩に手を載せ、グッと力を込めながら言ってくれた。
「すみません! 自分でもこんなコトになるなんて思っていなかったもので」
と言うと、今度は陽向さんが言った。
「遥さんは、いつも笑顔で、真摯に仕事と向き合ってくれてた。 でも、それは多分、遥さん自身が『こうじゃなくちゃ自分じゃ無い』って呪縛に囚われてしまっていたのかも知れないね」
そういった後、もう一言付け加えてくれた。
「これからの遥さんの目標は『頑張ってサボる』……だね」
『頑張ってサボる』か。
以前の私なら、もしかしたら少しムッとしてしまっていたかも知れない。 働いてお金を戴く事の厳しさは、幼い頃から祖父母や両親に聴かされていたからだ。
しかし、心を壊してしまった今、陽向さんの言葉は、その落ち着いたトーンと相まって、私の記憶と心に深く沁み渡った。
陽向さんが仰る通り、私は『頑張らないとサボれない人間』だ。
いや、私だけじゃない。 特に日本人にはそんな人が多いように感じる。
人手不足から、ひとりひとりにかかる仕事量が多い現在、巧くペース配分しないと、私のように働けなくなってしまう人が続出するだろう。
『自分を護れるのは自分だけ』だ。
あんな経験を二度としないように『頑張ってサボる』ように心掛けようと思った。




