第四十九話 ノミ
「ありったけ出せ。他の魔法使いもそれまでゴブリンを魔法が尽きるまでありったけ出して今から召喚するモンスターと一緒に出せ。護衛する奴らは魔法使いを背負って逃げる準備をしろ」
「はい」
リーダーは再び声を上げて、全員に命令をした。全員不安の顔色を消し去り、作業に入った。
意外とちゃんと統率しているな。魔法使いも他の護衛の騎士もどこかで訓練を受けているようでちゃんと連携が取れている。一気に畳みかけるつもりかな。
しかも、女騎士達にこのゴブリンの大群を長時間出し続けているのだろう。撤退と聞いてみんなちょっと、ホッとした顔をしている。たぶんそれで自分の制御できないモンスターをさらに召喚しようとしているのだろう。
危険なモンスターを召喚する魔法使いは魔方陣を地面に10個形成した。それから20分ようやくモンスターを召喚した。その間リーダーは何も言わなかった。
長いな。なんでリーダーは何も言わなかったのだろう。召喚魔法ってそんなに遅いものなのか?召喚魔法は使用者よりランクの高いモンスターを無理やり召喚すると暴走するのは知っているけど、召喚速度は知らないからな。たぶんこれが普通なのだろう。
何が出るのか興味があったので待っているが、召喚魔法が遅いので暇になった俺は戦っている女騎士がどうなっているのか見てみた。
女騎士はまだまだ余裕そうだが、他の人たちの顔がもうやばい男たち3人はいっぱいっぱいの顔をしている。
「も、もう無理だー」
「俺もー」
限界になったのか、男たち3人は他の3人を置いて逃げて行ってしまった。
「おい、貴様ら、くっ(私ひとりじゃ、やるしかないか)アンニカ、私とリアナに魔法強化を」
女騎士は自分たちを見捨てた男たちを怒ったが、そんなことをしている場合じゃないと思ったのか、すぐに気持ちを切り替えてアンニカたちを守るために意識を戦闘に集中させた。男三人があけた穴を塞ぐためにアンニカという怪我をしている魔法使いに自分の身体を強化させてもらい、抜けた三人の穴を補った。
少し動きが激しくなって女騎士の体力が持つか心配だが、男三人がいなくなって魔法は使いやすくなったようだ。
「はい」
アンニカはまだ魔力が残っているようだな。まだ戦えそうだが男三人がいなくなったことで、魔法が打ちやすくなったようだ。
「ヘレナ師匠もう、無理です」
「師匠と呼ぶな」
「ほんとに厳しいです。ヘレナ様」
もうリアナという女の子はもほんと限界に近そうだがヘレナにうまく攻撃を合わしているな。
「…(いつになったら止むんだこの大群、私ひとりなら大丈夫だが他の二人…特にリアナ
が疲れてきているな)」
ヘレナは無言で二人の様子を見ていた。このヘレナという女騎士がいればまだしばらくは大丈夫そうだな。
逃げた男三人は、一目散に逃げたためか、待ち伏せしたゴブリンたちに気付づ取り囲まれてやられてしまった。
「(あの3人はやられてしまったか、後ろにもゴブリンがいるのか囲まれているみたいだが、やはりアンニカとリアナを後退させるべきだな)リアナ、アンニカを連れて下がるぞ」
「はい」
ヘレナは戦況が悪いと判断したのかアンニカとリアナとを二人守りながら後ろに下がっていった。
いい判断だと俺も思うな。リアナがもう限界に近いし、アンニカは怪我をしているから無理はできないだろう。
おっと、そろそろモンスターが召喚されるみたいだな。男三人がやられたと同時についに魔法使いは魔方陣からモンスターを召喚した。
「こい、ウォーミノタウロス」
魔方陣から斧を片手に持ったミノタウロスと斧を両手に持ったミノタウロスが5体ずつ計10体で召喚された。
召喚されたモンスターはミノタウロスのウォー系か、ウォー系は確かそのモンスターの個体の中で戦闘に特化した個体だったな。
「貴様は誰だ。やれ、予備のポーションだ」
リーダーらしき男は岩の上にいる俺に気づいて火属性のファイヤーボールを放ってきた。俺はそれを躱して13人の前に降り立った。
さてどうしようか。ヘレナ達の安全のために消しておくか?それとも捕まえるか?しかし、攻撃態勢に入って殺そうとしているからな。
うーん。また、どうせ狙ってくるだろうからヘレナ達のためにも殺っておくか。同じ人を殺すのは少し気が引けるが敵だと思えば関係ないか。
「ヨアキム様は引いてください」
「私が引く? こんなチビに? 引く…わ…け」
手下がなんか言ったが俺は頭を切り替えてリーダーのヨアキムに一瞬で近付いて短剣を引き抜き首を切り落とした。俺は短剣をしまって、背中の大剣を引き抜き魔法使いがポーションを飲んでいる隙に護衛している騎士たちを盾と鎧ごとぶった切り、真っ二つにしたあとに魔法使いに向けて火属性のファイヤーランスを6本作って全員に当てて魔法使いたちにあて、止めの一撃に全員にファイヤーボールを当てて全員を燃やした。
少し倒すのが遅かったかな。ウォーミノタウロスと他のゴブリンたちがここにもういない。どうやらヘレナ達のところに行ってしまったようだ。
俺は岩山のほうに登ってヘレナたちの様子を見た。危ないな。このままいくと下の階につながる階段にたどり着くな。下の階に行くつもりか?でもヘレナなら一人でも今からくるウォーミノタウロス以外ならやれそうだったけど、たぶん二人を安全な場所に置いてきて戦うつもりかな。それだったら、俺も少し逃げる援護してやるか。
俺はウォーミノタウロスを一瞬で追い越してヘレナの近くの岩陰に隠れ、リアナたちの先に隠れているゴブリンたちを短剣で全て倒して安全を確保した。これで簡単に逃げきれるだろう。階段の近くに到達したようだ。
「(後ろから敵が来なくなった?)リアナ、アンニカを連れて下の階で待っていて、あとは私が倒しておくから」
「はい」
ヘレナはリアナを階段の方に行かせた。リアナもそれを受け入れてすぐに下の階に向かっていった。
「ふー」
1人になったヘレナは息を吐き身を引き締めて風魔法を使いながらゴブリンの集団に突っ込んでいった。
ヘレナにはまだウォーミノタウロスが見えていないようだな。ウォーミノタウロスのほうがだいぶ先行しているから俺は後ろからゴブリンを倒していこうかな。いや、ウォーミノタウロスの能力も知りたいし、ウォーミノタウロスだけを引き付けておこうか。俺はウォーミノタウロスの前に出てちょっと石を投げて挑発をしてみた。
石を投げつけられたウォーミノタウロス含めてヘレナのところに向かっていたすべてのモンスターが俺に襲い掛かってきた。
ミスった。ウォーミノタウロス以外も釣ってしまった。多いいな。俺は気を全身に纏い能力を調べるためにゴブリンとウォーミノタウロスの攻撃を受ける態勢に入った。
気を纏っておけばゴブリンが持っている刃物では傷つかないからな。もし生身ならゴブリンの打撃攻撃なら全力で振ってきてもダメージを追わないが、刃物を本気で振った攻撃だとちょっとしたかすり傷程度の切り傷ができてしまうからな。
中途半端な傷がつくと、かゆくてたまらないからな。それに他人に見られる可能性があるのに再気とか特殊な技は使いたくないからな。
俺はゴブリンの攻撃が効かなくなったので攻撃してくるゴブリンを無視して、ウォーミノタウロスに近づいてどんな攻撃をしてくるのか短剣を右手に構えてウォーミノタウロスの攻撃を待った。
片手だけに斧を持ったウォーミノタウロスは振り下ろして攻撃してきた。両手の斧を持っている双斧のウォーミノタウロスは素早く体をひねって、両手にある斧で攻撃してきた。
俺は先に攻撃が届きそうな早い双斧のウォーミノタウロスの二つの斧の攻撃をいなし、片手だけに斧を持っているミノタウロスの攻撃を短剣で真正面から受け止めた。俺に攻撃が効かないと見るとウォーミノタウロスはさらに斧を引いて片手に持っていた斧を両手持ちに変えて体重をしっかり斧に乗せて斧を振り下ろしてきた。俺はそれも短剣で受け止め、攻撃を受け止め続けた。
最初の双斧のウォーミノタウロスの攻撃は早いが重さがなく軽いので難なく躱せたて興味はあまり惹かなかったな。次の片手持ちのウォーミノタウロスの攻撃はラードゥガゴーレムのパンチより少し威力がないくらいの力でそうでもなかったけど、そこから柄にもう片方の手を添えて両手持ちに変えて振り下ろしてきた攻撃はラードゥガゴーレムの片手パンチにには劣るがなかなかいい攻撃だっが、もう倒してしまおうかな。




