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物語る日記帳  作者: 采火
本編
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5/63

薬箱の奇跡 4

 烏之瑪は一旦外に出てから、ゆったりとユーターンして蛍野家の屋根に降りた。私はぼとりと落とされる。

 あー、怖かった。いつ、落とされるかヒヤヒヤした。


『おい、本音駄々漏れだぞ』

「え。ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


 距離をとって土下座する。


『本当にすまないと思えってるならこっちへこい』


 う……。正論です……。

 恐る恐る烏之瑪に近付くと、くわえられている日記が差し出された。


『ちゃんと書くんだぞ。書かなければ……』


 キラーン。烏之瑪の紅い右目が、不気味に光る。

 ううう、怖いよう。


「わ、分かってる。言われなくても書くよ……」


 うなだれながら日記を受け取る。 何だかついてないなぁ。

 そこでふと、思ったことを尋ねてみた。


「そうだ、結姫と光はどういう関係なの? 何で私がいることが分かったの?」

『簡単なことだ。結姫は蛍野の部活の先輩だ。お前は、私が三日ほど前に散歩をしていたときに偶然見つけたんだ』

「へえ……」


 確かに三日前、珍しく家の外まで散歩をしに行った記憶がある。もし、あの日に散歩に出ていなかったら、烏之瑪と会うこともなか……。

 うわ、烏之瑪こっち見てる!!

 私は顔にでている出あろう事を誤魔化すために、屋根から落ちないようにそっと下を覗いた。

 あ、結姫もう帰るんだ。立ち上がった結姫は、光の頭一個分だけ小さい。


『さて、私も帰る。じゃあな』


 烏之瑪がバサリと翼を動かして飛び立つ。三回くらい旋回したとき、結姫の「お邪魔しました」という声が玄関から聞こえた。

 私は日記を持っていそいそと屋根を降りる。この日記は人の子にも見えるようだから、こっそり移動して隠さないと。

 ふと空を見ると、雲行きが怪しくもくもくとしている。ああ、これは一雨降るな。早く中に入ろう。

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