薬箱の奇跡 4
烏之瑪は一旦外に出てから、ゆったりとユーターンして蛍野家の屋根に降りた。私はぼとりと落とされる。
あー、怖かった。いつ、落とされるかヒヤヒヤした。
『おい、本音駄々漏れだぞ』
「え。ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
距離をとって土下座する。
『本当にすまないと思えってるならこっちへこい』
う……。正論です……。
恐る恐る烏之瑪に近付くと、くわえられている日記が差し出された。
『ちゃんと書くんだぞ。書かなければ……』
キラーン。烏之瑪の紅い右目が、不気味に光る。
ううう、怖いよう。
「わ、分かってる。言われなくても書くよ……」
うなだれながら日記を受け取る。 何だかついてないなぁ。
そこでふと、思ったことを尋ねてみた。
「そうだ、結姫と光はどういう関係なの? 何で私がいることが分かったの?」
『簡単なことだ。結姫は蛍野の部活の先輩だ。お前は、私が三日ほど前に散歩をしていたときに偶然見つけたんだ』
「へえ……」
確かに三日前、珍しく家の外まで散歩をしに行った記憶がある。もし、あの日に散歩に出ていなかったら、烏之瑪と会うこともなか……。
うわ、烏之瑪こっち見てる!!
私は顔にでている出あろう事を誤魔化すために、屋根から落ちないようにそっと下を覗いた。
あ、結姫もう帰るんだ。立ち上がった結姫は、光の頭一個分だけ小さい。
『さて、私も帰る。じゃあな』
烏之瑪がバサリと翼を動かして飛び立つ。三回くらい旋回したとき、結姫の「お邪魔しました」という声が玄関から聞こえた。
私は日記を持っていそいそと屋根を降りる。この日記は人の子にも見えるようだから、こっそり移動して隠さないと。
ふと空を見ると、雲行きが怪しくもくもくとしている。ああ、これは一雨降るな。早く中に入ろう。




