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終幕【変わらないもの】Unchanging

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 ライルは再び剣を取ることになります。女魔術師アロセールの復讐の手が、ライルとアリアの住む教会にまで伸びてきたのです。二人は、その教会で戦災孤児達を引き取って暮らしていました。ライルは子供達を守るために、再び闘いに身を投じます。かつての仲間達の力を借りて対峙します。アリアは子供達を連れて、ミッドランド城下町のマイトの宿屋へ避難しています。


このエピソードは、その闘いが終わりを告げようとしている頃合いになります。

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 陽動工作を見事に成し遂げたティナは、ライル達より先んじて、アリアの待つミッドランド城下町へと足を運んだ。ライルの話では、アリアと子供達はギリアムの妻、マイトの宿屋で彼らの帰りを待っているという。



 ミッドランドの城下町を抜けてゆく大通りを進むうち、ティナの胸に懐かしい思い出が蘇ってくる。マイトの切り盛りする宿屋で騒いだあの夜。酔ったアリアに羽交い絞めにされ胸を揉まれて、あの時はもう二度とゴメンだと思ったものだが、今となっては彼女の大切な懐かしい思い出の一つである。



 ティナがマイトの宿屋の前に立つ。一つ大きく息をつくと、心を決めてティナはドアを開けて入った。客の気配を感じて、すぐに返事が返ってくる。


「いらっしゃいませ ! すみません、すぐ参りますから」


奥のほうから、何やらカチャカチャと洗い物をする音が聞こえている。


その声……

ティナもずっと会いたかったのだが、なかなかきっかけが掴めぬまま、今日まで引き延ばしてきてしまった相手の声だ。


 その女性が、エプロンで手を拭きながら、洗い場から姿を現す。ティナは一つ大きく息を吸い込むと、片手を挙げて、陽気に呼びかけた。


「よっ、アリアっ!! 久しぶりっ !」


まさしくアリアであった。


 ライル達を待つ間、マイトの宿屋にお世話になっているアリアと子供達である。アリアは何かと自ら申し出て、マイトの手伝いをしていたのだった。


「ティ、ティナさん !? ……ティナさんっ!!!! 」


 紛れもないティナの姿を目にして、アリアは必死で駆け寄ってくる。それを見たティナは、にっこりと笑って両腕を大きく広げてアリアを迎える。駆けつけたアリアがティナの胸に飛び込んでくる。


「ティナさんっ!!」

「ごめんね、アリア」


「ティナさん、ティナさんっ!! ティナさぁん ……うううっ……ひっく……うああああああああっ……」


アリアはもう言葉にならない。ティナを二度と離すまいと、しっかりとティナの背中に腕を回してしがみつき、大声で泣いてしまっている。


会いたくて

とても会いたくて

再び会える日を信じて、ずっとずっと待ち続けていた大好きな人


 その人が今、紛れもなく目の前にいる。時には親友のように仲良く話し合い、時にはお姉さんのように引っ張ってもらい、時には信頼できる戦友としてお互い肩を並べて戦った……そして、同じ人を好きになってしまった……アリアにとってかけがえのない、大好きな大好きな大事な人。


そのティナが、今、アリアの腕の中にいてくれている。



「よしよし……ごめん、アリア。こんなに遅くなっちゃった。ごめんね……」


ティナもしっかりとアリアに腕を回し、ポロポロと涙を流している。


 何度もティナはアリアに会いに行こうと思ったのだが、まだ心のどこかにためらいがあって、なかなか足が遠のいていたのであった。ライル達と再会した事で、そして再び闘うライルの姿を目にして、ようやくティナの心から、わだかまりが消え去った。胸に溢れ出してくる、鮮やかに輝く思い出の渦に突き動かされ、ティナは駆け抜けるようにアリアのもとへやって来たのであった。



 ティナは何度もアリアの頭を優しく撫でてやっていた。しばらくして、ティナが身を離そうとする。その気配を感じたアリアが、ピクリと身体を強ばらせた。


「嫌っ ! あんなの、もう嫌ですっ ! うううううっ……」


ティナから体を離すのが不安で仕方ないらしく、アリアは腕にさらに力を込めてティナから離れまいとする。


 しょうがないなあ、といった表情で軽く溜息をつくと、愛しそうに微笑みを浮かべて再びティナはアリアに腕を回し、彼女の気が落ち着くまで優しく抱き留めてやった。やがて、アリアの感情の高ぶりが少し収まってきた。ティナにしがみつく腕の力が緩んでくる。ようやく、ティナはアリアからそっと身を離す事ができた。


「さ……かわいい顔が台無しじゃない。ほらっ」


 ティナはハンカチを取り出して、アリアの涙を拭ってやる。アリアはティナの袖をぎゅっと握って、まだ肩をしゃくりあげている。アリアももう十分大人なのだが、まるで泣いている子供を母親があやしているようだ。



 ティナはにっこりと笑って、アリアの手を握ってテーブルへと向かう。まだ鼻をすすり上げているアリアは、ティナのその手をぎゅっと握りしめ、絶対に離すまいとしているようだ。迷子を連れて歩いているお姉さんを想像させる光景である。


しばらくの間、何かとティナの側について、その身体のどこかに触れていないと落ち着かない様子のアリアであった。



「おやまあ ! ……いらっしゃい、ティナさん。よかったねえ、アリア」



 階下の騒ぎを聞きつけて、客室の掃除をしていたマイトが現れた。にっこりと、彼女達の様子を見守っている。


「こんにちは、マイトさん。ご無沙汰してました。お邪魔してます」


「あんたが邪魔になるなんていったら、この子に殺されちまうよっ。ははははっ」


ギリアムのように、気持ちの良い豪快な笑い声をあげるマイトだ。腹の据わった女傑といった感じである。


「ゆっくりしていきな、ティナさん。アリアも、今日はティナさんにずっとくっついているといいわ。もう大好きな人を逃がさないようね……はははっ。後は私がやっておくから。アヤ達の世話も今日は私に任せときな。そうしな! 今、お茶でもいれるからね」


 そう言うとマイトは奥へと消えていく。子供達に大声で呼びかける声が聞こえてくる。今日はアリアに大事なお客さんが来てるから、二人を邪魔しないようにしてあげとくれと、お願いしているようだ。子供達が元気に『わかった!』と答えている。


初めて出会った時と変わらず、肝っ玉母さんといった感じのマイトである。



どうやら、それは二人もつくづく感じているらしい。


「ふふっ、マイトさんって、全然変わらないわねえ」

「はい。昔と同じですね。でもティナさんは、ちょっと変わったみたい」


「なにい~、『おばさんになった』、なんて言うつもりかしら~、アリア」

「いいえ。またずっと綺麗になってます。驚きました。ふふっ」


そんなアリアを見て、ティナが意地悪くニヤニヤしているようだ。


「よしよし。ならば私も言ってやろう。……アリア、色気が出てきたぞ。ライルに可愛がられてるみたいね。ふふっ」


顔を赤らめて、あきれるアリアだった。


「もうっ……中身は全然変わってないんだから、ティナさんって」


そう告げるアリアに、ティナは急に目をふせてしまう。



そして、静かに告げる。



「そうでもないの。時間が経てば、大なり小なり、人は変わっていくものよ……。私だってね」


寂しげな光を瞳に灯すティナであった。



アリアはそっと席を立つと、そんなティナの後ろに回ってその両肩に手を置いた。

そしてきっぱりとティナに告げる。



「でも、変わらないものだってあります。昔も、今も……そして、これからもずっと」


「そうかなあ?」


アリアに背を向けてイスに座ったまま、ティナが小首を傾げる。


時は、全てのものに影響を与える。

いつまでも変わらないものなど、ありえないのではないだろうか?



しかし、アリアは告げる。


「そうなんです。絶対に、変わらないものがあるんです」

「例えば、どんなもの?」


アリアは、心からの微笑みを浮かべる。


「私が、ティナさんを大好きだって事です」


にっこりとそう言うと、アリアは座っているティナの後ろから腕を回して、彼女をぎゅっと抱きしめた。


「……私も大好きよ、アリア。大好き……。ごめんね。あんなひどい事して、ホントにごめん……」


そう囁くと、ティナは静かに涙を流す。

アリアの瞳にも涙が溢れる。


「ううん……もういいの。だって、こうしてまた会えたんだもの。あの時、私なんかよりティナさんのほうが、ずっとずっと辛かったんだもの……」


二人はお互いの痛みを想い合い、静かに涙を流すのだった。


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 ティナとアリアは、連れだってミッドランドの城下町を出歩いた。二人はもうすっかり昔のように、楽しげに屈託無くおしゃべりしている。このように堅い絆で結ばれた、女同士の友情もまた美しい。女性に限らず、なかなかこの二人のようにはいかないものではないだろうか?



夜がくる


ティナが床につくと、アリアが部屋へやってくる

そして素早くアリアはティナのベッドに潜り込む

ティナもにっこり笑って、二人は仲良く肩を並べて寝てしまう


楽しそうに、二人ともクスクスと笑い出してしまう。

お互いに頭を預け合いながら、ぐっすりと二人は眠りについた。



 本当に、仲の良い子供の姉妹のようだ。実際に血のつながっている世の中の姉妹と同じくらい、いや、それ以上にこの二人は堅い絆で結ばれているようだ。今アリアは心のままにティナに甘え、ティナはそれをうれしく受け入れている。幸せそうな顔をして、二人とも安らかな寝息を立てている。



 マイトは、そんな二人の大きな子供の寝顔を見て、優しげに微笑みながら、少し開いていたドアを静かに閉めて、そっと立ち去っていった。



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~~~【ライル戦記】完 ~~~


彼らの魂の輝きが、あなたの心に届く事を願って

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原案・ストーリー構成・演出・執筆・慌ててこっそり修正/ 二十数年前の自分

バージョンアップ・構成見直し・追記加筆・一部カット・校正/ Forest Eiju


読んでくれた皆様の胸の中に、何かが残れば幸いです。



 長々とした物語に付き合って下さった皆様、本当にありがとうございました。感謝の気持ちで一杯です。本当に、背中を支えられているような気持ちで書いておりました。


 この物語は、自分一人の力ではとても完結できなかったと感じてます。読んで下さった皆様、温かな励ましを与えて下さった方々に育ててもらった物語なのです。


<あとがき>と<謝辞>を改めて掲載させて頂きます。



<あとがき>にて、自分がこの物語を書き始めた本当の理由を白状いたします。

(幻滅させちゃうかもしれませんが)


でも、楽しんで下さった皆様に対しては、やはりそういう所に正直でありたいと思うのです。


んでは!

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