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NEU BOXER  作者: 乙籠一
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第二話 装備を整えよう!

注意

この文章は作者が書いた文章をAIに添削してもらった上で投稿しています。

間違っても作者一人で作ったものではありませんので勘違いなきようお願いいたします。


戦いの夜が明けた。


僕はボロボロのソファーの上で目を覚ます。


天井には黒ずんだシミとカビが広がり、

床には空き容器や惣菜パックが散乱していた。


『……またか』


身体が重い。


動かない。


おそらく昨夜の戦いの疲労だろう。


激しく動いた翌日は、いつもこうだった。


『あれから、どうなったっけ……』


僕はゆっくり起き上がり、大きく伸びをする。


昨夜の試合。


その報酬額は、スラムではまず拝めない四桁台に達していた。


『金か……』


思わずため息が漏れる。


『また、ごろつきどもに狙われる日々が始まるのか』


少しだけ落胆した。


つまらない。


そう感じた、その時だった。


《ピンポーン》


インターホンが鳴る。


だが、立ち上がるより早く――


ガチャッ。


ドアが勢いよく開いた。


『うっわ、きったな!

どんな部屋よここ!』


ハチブンジだった。


彼女は積み上がった惣菜パックを器用に避けながら、

ズカズカと部屋へ入り込んでくる。


そして。


ゴツン。


僕の頭へ拳骨を落とした。


(……え? 今、殴られた?)


『っっったぁー!?』


逆にハチブンジが手を押さえてうずくまる。


『あんたの頭、硬すぎでしょ!?』


『それより、何の用だ?』


僕は首を傾げる。


『まさか次の依頼か?』


『鈍いわねぇ』


ハチブンジは呆れたように肩をすくめた。


『あんた、自分の立場わかってる?』


『立場?』


『アルグジムのリングチャンピオンになったのよ?

チャンピオンには“防衛義務”があるの』


『防衛義務……ああ、なるほど』


そこで僕は、昨夜の出来事を思い返す。


『なあ』


『ん?』


『なんで、あの時助けたんだ?』


“顔を狙え”。


あの一言がなければ、

僕は何をすべきかわからなかった。


つまり、

彼女が勝たせてくれたようなものだ。


ハチブンジは少しだけ目を逸らす。


『別に』


そっけなく答えた。


『セコンドもいない素人がボコられてるの見て、

ちょっと発破かけただけよ』


『一応、“喧嘩屋”ではあるんだがな』


『喧嘩とリングは別物でしょ』


ハチブンジはそう言って笑った。


『もう、きったないわね』


ハチブンジは呆れた顔で部屋を見回した。


『ちょっと掃除するから、あんたも手伝いなさい』


『掃除? 別にいいだろ』


『よくないわよ』


彼女は床に転がった空き容器を蹴飛ばす。


『こんな掃き溜めみたいな場所で、運なんか掴めるわけないでしょ』


『運……?』


『あんた、仮にもチャンピオンなんだから。

少しはシャキッとしなさいよ』


『……そう、なのか?』


僕は困惑しながらも、ハチブンジと一緒に掃除を始めた。


最初は何をすればいいのかわからなかったが、とりあえず雑巾がけを始める。


それだけで、彼女の機嫌は多少良くなったらしい。


『はぁ……朝から頭痛いわ』


ハチブンジは額を押さえながらため息を吐く。


『なんか、すまん』


『別にいいわよ。

どうせ今日は暇だったし』


彼女はそう言うと、ふと僕を見る。


『それよりあんた、ジムには来ないの?』


『ジム?』


『……まさかとは思うけど』


嫌な予感でもしたのか、

ハチブンジの眉がピクリと動く。


『あんた、何もしないつもり?』


『逆に、何をするんだ?』


数秒の沈黙。


そして――


『バカなの!?』


ハチブンジの怒号が部屋に響いた。


『トレーニングに決まってるでしょ!!

あんた、ジムにも通わず防衛戦やる気!?』


僕はキョトンとしたまま彼女を見る。


『トレーニングって……あのトレーニング?』


『はぁ……』


彼女は深いため息を吐いた。


『ほんと、何も知らないのね。

よくそれでタイトル取れたわね……』


肩をガックリ落としながら呟く。


『いい?

あんたはね、“スター”になれる逸材なの』


『スター?』


『そうよ』


ハチブンジの目が真っ直ぐ僕を捉える。


『そんな才能が、こんな場所で腐ってるなんて見てられないわ』


(スター、か……)


僕は少し考える。


たった一戦勝っただけだ。


そこまで言われるほどのことをした自覚はない。


『決めた』


ハチブンジがパン、と手を叩いた。


『あんた、アタシの家に来なさい』


『家?』


『ニューボクシングで必要なこと、

アタシが片っ端から叩き込んであげるわ』


 掃除を始めてから、およそ二時間。


僕はハチブンジに指示されるまま部屋を片付け、その後、服とバンテージを買うため近くのスポーツ用品店へ来ていた。


『通販で買わないのか?』


ふと疑問が浮かぶ。


ハチブンジは呆れたように肩をすくめた。


『ここ、危険すぎて配達拒否されることあるのよ』


『拒否?』


『荷物盗まれたり、配達員が襲われたり、ね。

二度手間になるし、確実に買うなら店の方が早いわ』


(なるほど)


僕は店の外観を見上げる。


見慣れない建物だった。


薄汚れたスラム街の中では珍しく、

ガラス張りの外壁が青白く光っている。


そして店内へ入ると――


『いらっしゃいませ』


無機質な声が響いた。


待ち構えていたのは、AI制御の接客ロボットだった。


『ニューボクシング用のウェアとバンテージ。

彼用に二着ずつ』


『かしこまりました』


ロボットの瞳が淡く発光する。


次の瞬間、

僕の身長、肩幅、胴回り、腕の長さが一瞬で計測された。


『最適サイズを検索します』


そう告げると、ロボットは滑るように店内奥へ消えていく。


『……いいのか?』


僕はハチブンジを見る。


『こういう店、高いんだろ』


『もちろん、あんたの報酬から出すのよ』


『僕の金かよ』


『当たり前でしょ』


ハチブンジは悪びれもせず答える。


『どのみち必要経費よ。

前みたいな薄汚れた服じゃ、人気なんて取れないわ』


『人気、ねぇ……』


僕は少し不満げに、彼女の持つ財布を見る。


(……それ、中身は僕の金ってことだろ)


そんな疑念を抱きながら。



 しばらくして、店の奥からロボットが戻ってくる。


両腕には、指定された商品が抱えられていた。


ボクシングトランクス。

試合用ガウン。

そして黒いバンテージ。


『しかし、運が良かったわね。あんた』


ハチブンジは商品を受け取りながら言った。


『本調子じゃないとはいえ、“バレット”バウジーに勝っちゃうんだから』


『本調子じゃない?』


僕は眉をひそめる。


『気づかなかった?

アイツ、自己管理がめちゃくちゃ苦手なのよ』


ハチブンジは呆れたようにため息を吐いた。


『一昨日の夜も、酒をかなり飲んでたらしいわ。

試合前は控えろって何回言われても聞かないの』


『酒……』


その言葉で、妙に腑に落ちた。


『道理でリングが酒臭いと思った』


『気づいてたの!?』


『なんとなくな』


僕は静かに考える。


素人同然の僕が、

デビュー戦でリングチャンピオンに勝つ。


そんなこと、本来あり得ない。


(つまり……)


(あれは、彼が万全じゃなかったから成立した勝利か)


胸の奥に、

小さな納得が落ちていく。


『ま、自業自得だけどね』


ハチブンジは肩をすくめた。


『才能は本物なのよ、アイツ。

でも欲に弱いの。

酒も、快楽も、全部断ち切れない』


『……なるほど』


『ほんと、情けない話よ』


僕は少しだけ考え込む。


そして、小さく呟いた。


『なら』


『?』


『いつか、本気の彼と戦ってみたいな』


ハチブンジが目を丸くする。


『本気で言ってる?』


『ああ』


僕は即答した。


『あれだけ強いなら、

本調子の彼は、もっと強いはずだ』


 僕はトランクスとガウンの色を決め、購入を承諾する。


どれも今までの自分とは無縁だったものだ。


薄汚れたスラムで喧嘩ばかりしていた僕が、

まさかリング用の衣装を選ぶ日が来るなんて思ってもみなかった。


僕はどこか渋い表情を浮かべながら、

それでも、自分の人生が大きく動き始めていることを

ぼんやりと実感していた。


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