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NEU BOXER  作者: 乙籠一
3/8

第三話 "レジェンド"

注意

この文章は作者が書いた文章をAIに添削してもらった上で投稿しています。

間違っても作者一人で作ったものではありませんので勘違いなきようお願いいたします。



リングチャンピオンになってから数日。


現在僕は――

ニューボクシングの過酷なトレーニングに明け暮れていた。


『違う!!

もっと重心を落とせ!!

肘裏にパワーを溜めるんだ!!』


怒鳴り声がジム中に響く。


僕を指導しているのは、

ハチブンジの父――ハチロー・イエッフだった。


『ハチローさん……これ、いつまで続けるんだ?』


僕は肩で息をしながら問いかける。


全身が鉛のように重い。


それもそのはずだ。


練習開始から、すでに九時間が経過していた。


『できるようになるまでだ!

口を動かす暇があるなら体を動かせ!!』


この調子である。


同じメニューを十数セット。


しかも休憩はほとんどなし。


いわゆる、スパルタコーチというやつだった。


『いいぞぉ!!

九時間ぶっ続けでここまで動ける新人はなかなか見ねえ!!!』


ハチローは豪快に笑う。


『オラ!!

もっと腰を落とせ!!』


さすがの僕も、

少しずつ“怒り”という感情を理解し始めていた。


『……なあ、マジでいつまで続けるんだよ』


僕は息を切らしながら言う。


『.....これに、意味はあるのか?』


その瞬間だった。


ハチローの表情が変わる。


『口答えをするな、リガ』


静かな怒声が飛ぶ。


ジムの空気が一瞬で張り詰めた。


『お前は選手。

そして俺はトレーナーだ』


ハチローは僕を真っ直ぐ睨みつける。


『トレーナーにはな、

選手を“生きたまま”リングから降ろす義務がある』


『……』


『一昨日みたいな戦い方を続けてみろ。

お前死ぬぞ、あっという間に』


空気が凍った。


『俺が……死ぬ?』


思わず聞き返す。


『ああ』


ハチローは即答した。


『忠告しておく。

お前の戦い方は、命を無意味に削るものだ。

絶対に長く保たない』


僕は視線を横へ向ける。


ハチブンジもまた、

否定しなかった。


『一昨日の試合。

バウジーを倒したのは見事だった』


ハチローは続ける。


『だが、あんな勝ち方ではお前の良さは出ない』

 

『……』


『お前はまず"ディフェンス"を身につけろ』


『ディフェンス?』


『ああ』


ハチローは力強く頷く。


『ニューボクサーの資本は体だ。

その体を無駄に壊さねぇためには、

まず“打たれない技術"を覚えるのが手っ取り早い』


『攻めの技術じゃなくていいのか?』


『攻めは、ディフェンスができれば自然と見えてくる』


ハチローは僕の肩を軽く叩く。


『まずは、俺の言う通りにやってみろ』



そして僕は、ハチローの指示通り地獄みたいな練習をこなし、全身をボロボロにしたまま帰路につくことになった――。




 


そして翌朝。


疲労の蓄積した重い体を引きずりながら、僕はジムへの道を歩いていた。


すると――


『聞いて、リガ!!』


駆け足でこちらへ向かってくるハチブンジの姿が見えた。


『次の対戦、決まったの!』


『次の対戦?

……試合のことか?』


彼女は肩で息をしながら、

乱れた呼吸を整える。


『次の相手、かなりの強豪よ!

元ライト級リングチャンピオン――フラッガ!

“アイスマン”の異名を持つ天才ニューボクサーよ!』


一瞬、思考が止まった。


どうやら僕は、

二戦連続で強豪と戦うらしい。


『……それより、ライト級ってなんだ?

ニューボクサーの肩書きか?』


『あんた本当に何も知らないの!?』


ハチブンジは頭を抱えた。


『恐ろしいわよ、その無知さ……!』


そう言った直後だった。


彼女は苦しそうに胸元を押さえ、そのまま僕の左手を掴む。


『……ついてきて。

あんたに見せたいものがあるの』


彼女はそう言うと、

僕の手を引いて歩き出した。



それから十五分ほど歩いた頃。


ハチブンジは、妙に険しい顔で前だけを見つめていた。


『おい。

顔色悪いぞ』


『平気よ。

このくらい……』


嘘だった。


どう見ても、

具合が悪そうだった。


『僕より先に、

自分の心配をしろよ』


ハチブンジはしばらく黙り込む。


やがて、

重たい口をゆっくり開いた。


『……あんたは、

パパが見込んだ男よ』


彼女は言う。


『絶対に、

手ぶらじゃ帰さないんだから』


その声には、

妙な意地が滲んでいた。



ハチブンジは元々、

ニューボクサーだった。


父・ハチローの影響で競技を始め、

二年もせぬ間にみるみる頭角を現した。


しかし――早くも挫折を味わうことになった。


原因は、

先天性の心臓病。


『君はもう、

昔のようには動けない』


医者にそう告げられた日。


彼女は、

夢を失った。


父の期待に応えられない。


リングにも立てない。


それでも、

諦めきれなかった。


だから彼女は、

マネージャーになった。


自分の夢は叶わなくていい。


ただ、本気で夢を追う人に同じ絶望を味わせたくない。

自分と同じ、それを。


――それが、

彼女の使命となった。



『強くなりたいなら、

謙虚でいることよ』


ハチブンジは、

前を向いたまま言った。


『なんでだ?』


『謙虚さがあれば、

人は無限に強くなれる』


彼女は静かに笑う。


『それに、謙虚さは私を大人にしてくれたの』


『謙虚さが?』


『ええ』


彼女は頷いた。


『どれだけ才能ある人でも、

挑戦すらできずに終わった人は星の数ほどいる』


その声は、

どこか震えていた。


『だからね。

挑戦できる環境を、

当たり前だなんて思っちゃダメよ』


『当たり前じゃ……ない』


僕は、

その言葉をゆっくり噛み締める。


そして気づけば、

イエッフ家の玄関前へ辿り着いていた。



家の中へ入る。


外観に見合った綺麗な内装を想像していたが、

中は意外にも古びていた。


少し埃っぽく、

どこか時間が止まったような空気が漂っている。


『この家ね、

元はうちの別荘なの』


ハチブンジは、

懐かしそうに部屋を見回した。


『でも、

ここで大事なものを貰った』


『大事なもの?』


『……私の憧れ』


彼女が僕を連れて行ったのは、

リビングだった。


中央には、

古いテレビがぽつんと置かれている。


『見てて』


彼女はリモコンを操作する。


すると、

画面に一人の男が映し出された。


画面越しですら、

空気が変わるのがわかった。


『現れました!!

世紀に一人の天才――

“レジェンド”ハクアだァァァ!!!』


『……レジェンド?』


僕が呟くと、

ハチブンジは静かに頷いた。


『私はね。

この人を見て、

ニューボクシングに憧れたの』


彼女はテレビを見つめながら続ける。


『彼ね、元々は芸術家だったの』


『芸術家……?』


『うん。

でもある日、偶然見たニューボクシングに人生を奪われた』


ハチブンジは、

どこか誇らしげに笑う。


『そこから全部捨てて、

リングに上がったんだって』


そして彼女は続ける。


『でも私はダメだった。

 ニューボクシング云々以前に、持病の心臓病が発覚しちゃった』


声が、

わずかに震えていた。


『けど、それでも諦めずにいれたのは、彼のおかげなの。

 彼の言葉に、私は救われた』

 

彼女は小さく息を吸う。


『人生の大半はうまくいかない。

 私のように夢を叶えられない人間も多くいる。

 それでも、絶望から目を背けることだけはするなーーって』


『絶望から……』


『諦めたら、

そこで全部終わるって』


『へえ……』


ハチブンジは、

少しだけ笑った。


『だから私、なりたいの』


『……?』


『最後まで諦めない人間に』


彼女は僕を見る。

 そしてーー。


『水、汲んでくるね』


 そう言い残し、彼女はキッチンへと向かった。


一人残された僕は、

テレビを見つめる。


『……すごいな』


見ただけでわかる。


芸術的な攻防。


洗練された独自の動き、そして卓越した発想力。


言葉でも、

戦いでも、

人を惹きつけている。


まさに稀代のカリスマだった。


『たしかに……

こんなニューボクサーを目指したくなる』


その時だった。


――ガシャン。


キッチンから、

何かが割れる音が聞こえた。


『……?』


嫌な予感がした

僕は立ち上がり、そして、

急いでキッチンへ向かった。


そこにいたのは――


血を吐きながら倒れる、

ハチブンジの姿だった。


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