第一話 THe Broken〜壊れた男
注意
この文章は作者が書いた文章をAIに添削してもらった上で投稿しています。
間違っても作者一人で作ったものではありませんので勘違いなきようお願いいたします。
人はなぜ悲しみ、なぜ喜ぶのか。
リガには、それがわからなかった。
きっと自分には、多くの感情が欠けている。
巨大立体広告《NEU BOXING GLOBAL》が夜空を覆う。
高層ビル群の隙間には、ネオンとアングラな気配が淀んでいた。
鮮血を思わせる赤い瞳の少年――リガ、17歳。
無職。
そして今、盛大に道に迷っていた。
『目がチカチカする……やっぱり都会は嫌いだ』
人混みの中で立ち尽くしていると、背後から肩を突かれた。
『どうしたの?』
振り向くと、ツインテールの少女が不思議そうにこちらを見ていた。
『道に迷ってる。アルグのジムってどこだ?』
『えっ……? あそこって違法ジムでしょ?』
少女の表情が強張る。
リガの赤い瞳を見た瞬間、わずかに肩が震えた。
『君、名前は?』
『知らないっ!』
少女は顔を背け、そのまま走り去っていった。
また逃げられた。
理由はよくわからない。
結局、道も聞けなかった。
『おーい!』
僕の耳に聞き覚えのない声が響き渡った。
『きみ、今日リングに立つ人でしょ?』
『僕がわかるの?』
『?
わかるも何もニューボクシングの競技者でしょ?』
そう、彼女の言った通りだった。
世界で最も金が動く競技《NEU BOXING》。
僕は今から三時間後、そのリングに立つことになっていた。
『君のこと、噂になってるよ。
【The Broken】――スラム街の壊れた男』
『たしかに壊れてるかもな。痛みを感じたことがない』
『……へえ』
少女は面白そうに目を細めた。
『なら、向いてるかもね。ニューボクサー』
彼女は笑う。
けれど、その目は笑っていなかった。
『でも勘違いしないで。
この競技、強いだけじゃ意味ないから』
『?』
『ニューボクシングは人気商売。
観客に求められない選手は、どれだけ勝っても上には行けない』
ネオンが彼女の横顔を青白く染める。
『壊れてるだけの人間に、“スター”になれる?』
僕は少し考えてから答えた。
『金を稼げるなら、なんでもする』
リガはハチブンジに促されるまま、地下区画を進んでいく。
ネオンの消えかけた通路を抜けた先。
そこにあったのは、薄汚れた地下闘技場だった。
鉄骨は錆びつき、観客席はひび割れている。
リングには乾ききっていない血痕のような染みが残っていた。
『きたな、例の小僧が』
奥でタバコをふかしていたジジイが、吸殻を床へ吐き捨て、ぐりぐりと踏み潰す。
『アンタが対戦相手か?』
『は? なわけねえだろ』
ジジイは鼻で笑った。
『ついてこい。お前の相手はこっちだ』
リガは無言で後を追う。
案内されたのは狭い控室だった。
湿った空気と、錆の臭いが鼻につく。
『あんまり上等なのは期待すんなよ?』
ジジイは笑いながらロッカーを開けた。
『グローブがあるだけマシだ。ヘッヘッヘ……』
ロッカーの中には、無数の銅線が繋がれた奇妙なヘッドギアと、黒いグローブが置かれていた。
【感覚同期ヘッドギア】
ジジイはそれを乱暴に持ち上げる。
【こいつがニューボクシング最大の“売り”だ】
『やっぱ趣味悪いな』
横でハチブンジが顔をしかめる。
『こんなもんが人気なんて、人類も終わってる』
【刺激が欲しいのさ】
ジジイはニヤついた。
【これを被れば、観客は選手と繋がる】
『繋がる?』
【痛み、恐怖、興奮……全部流れ込む。
ニューボクサーの感覚を、観客が“体験”できるんだよ】
ハチブンジは露骨に嫌そうな顔をした。
『最悪……』
【だから儲かる。
他人の人生を安全圏から味わえるんだからな】
リガはヘッドギアを見つめる。
『なおさら気味が悪い』
そう呟いた彼の赤い瞳には、嫌悪とも興味ともつかない色が浮かんでいた。
ジジイは【感覚同期ヘッドギア】を乱暴に放り投げる。
リガはそれを片手で受け止めた。
装着しようとした、その瞬間。
――ガシャン!!
控室の扉が蹴り飛ばされる。
『きたか。今夜の俺の相手が』
『バ、バウジー!』
ジジイの肩がびくりと跳ねた。
バウジーはジジイなど気にも留めず、真っ直ぐリガへ歩み寄る。
金色のチェーン。
派手なジャケット。
肉食獣みたいな笑み。
いかにも“人気者”という感じの男だった。
『ヘヘッ。呼び出しといて悪ぃが、無様だけは晒すなよ?』
バウジーはリガの肩を軽く叩く。
『ニューボクシングの興行ってのはな、つまんなかった時点で終わりなんだ』
彼は笑っていた。
だが目は笑っていない。
『客に見放されりゃ、俺らの命運はそこで終わる』
バウジーは顔を寄せる。
『だからせいぜい頑張れ。“引き立て役”としてな』
そう言って肩をポンポン叩くと、満足そうに去っていった。
『なんなんだ、アイツ?』
『今夜の相手』
ハチブンジは呆れたようにため息をつく。
『ジム【アルグ】のリングチャンピオン』
『チャンピオン? 僕、初戦なんだけど』
『向こうのご指名さ』
ジジイはニヤついた。
『話題性が欲しいんだろ。
“スラム街の壊れた男”とかな』
『ふざけたやつだな。あとで吠え面かかせてやる』
リガはヘッドギアを装着し、グローブを締める。
直後――
ガンッ!! ガンッ!!
金属を叩くような重いゴング音が地下空間に響き渡った。
『来い、リングインだ!』
係員が怒鳴る。
リガはゆっくり息を吐いた。
心拍がわずかに速い。
どうやら身体は、これから始まる未知の体験に緊張しているらしい。
(無意味だな)
そう考えながら、リガは通路を進む。
地下闘技場の熱気が、一歩ごとに濃くなっていく。
怒号。
歓声。
笑い声。
ヘッドギア越しに、無数の感情が皮膚へ染み込んでくるようだった。
『さあ来ましたァ!! 本日のメインイベント!!』
ライトがリングを照らす。
『アルグジムのベルトを賭けたタイトルマッチ!!』
観客が熱狂する。
『王者【バレット・バウジー】に挑戦するのはこの男!!』
モニターにリガの顔が映し出された。
『デビュー戦にしてタイトルマッチ!!
“スラム街の壊れた男”――【The Broken】リガぁぁあああッ!!!』
歓声が爆発する。
同期率が上昇していく。
10。
15。
20。
違法ジムとは思えない数値だった。
『きたな、壊れた男』
バウジーが笑う。
『お前の噂に、みんな夢中だ。期待は裏切るなよ?』
フロアの熱がさらに増していく。
同期率の影響か。
それとも観客の興奮か。
リガにはまだ判別がつかなかった。
『努力するよ』
リガは静かに答える。
『初戦でタイトルマッチなんだ。
普通なら、こんなチャンス欲しくても届かない』
リングサイドからハチブンジが叫ぶ。
『最高のショーにしなさいよー!』
『退屈はさせない』
リガはグローブの紐を強く握り込む。
初戦でタイトルマッチ。
相手はリングチャンピオン。
間違いなく、人生の転換点になる夜だった。
(油断はできない)
正面で、バウジーが獰猛に笑っている。
そして――
ゴングが鳴った。
同時に、リガは床を蹴る。
(初手から仕掛ける!)
一気に間合いを詰める。
バウジーの懐へ飛び込み、そのまま深く沈み込んだ。
『挑戦者、いきなり前に出たァァァ!!!』
左拳を振り抜く。
(まずは一発――!)
当たる。
そう確信した瞬間。
――視界が揺れた。
次に気づいた時には、リガはリングに倒れていた。
(……何が起きた?)
実況が絶叫する。
『カウンターだァァァ!!!
リングチャンピオン、挑戦者の奇襲を完璧に迎撃!!』
リガはゆっくり瞬きをする。
そしてようやく理解した。
(僕は……殴られたのか)
ポタ、ポタ。
鼻血がリングへ落ちる。
『ワン! ツー! スリー!!』
カウントが響く。
十まで立てなければ敗北。
(してやられたな)
リガはふらりと立ち上がった。
『おいおい』
バウジーが肩をすくめる。
『突っ込んでくるのはいいけどさぁ。失望させんなよ?』
(そうか)
リガは拳を握る。
(これくらいじゃ、失望されるのか)
『挑戦者立ったァ!!
ダメージは浅い! フラッシュダウン!!』
――いや。
ダメージは確かにあった。
だが、それ以上に。
自分の奥底から、妙な熱が込み上げてくる。
熱い。
苛立ちとも、興奮とも違う。
その感覚が、ゆっくりとリガの本能を刺激していた。
《同期率27%を記録》
モニターが青白く発光する。
今、リング上の二人の感覚は世界中へ共有されていた。
《感覚同期》。
選手の痛み、興奮、恐怖、快楽――その全てを、観客は疑似体験できる。
無数のコメントがモニター上を流れていく。
『あれ、痛みが来ない?』
『普通に怪我してるよな?』
『マジで壊れてんのか』
『痛覚なし同期とか初めてなんだけど』
同期率はさらに上昇していく。
そんな中、リガは静かにバウジーを見据えていた。
(未知の領域だな)
話には聞いていた。
だが、実際に感覚同期のリングへ立つと勝手が違う。
観客の熱気。
同期による感情ノイズ。
全てが肌へ直接流れ込んでくるようだった。
『どうした? 来ねえのか、お前』
バウジーが挑発的に笑う。
『心配しなくても、すぐ始める』
リガは痛みの遮断された肉体を無理やり動かし、真横へ走り出した。
リングを円を描くように高速で周回する。
一周。
二周。
三周。
『愚行だな』
バウジーは鼻で笑う。
『そんな動きしてりゃ、先にへばるぞ』
『さあ、それはどうかな』
次の瞬間。
リガは急激に軌道を変え、バウジーの背後へ滑り込む。
低姿勢。
スライディング気味の踏み込み。
そして――左ボディアッパー。
『――見え見えだぜ』
バウジーの拳が振り下ろされる。
カウンター。
鈍い衝撃が頭部を揺らした。
『っ……!』
リガの身体が大きくよろめく。
膝が沈みかける。
だが倒れない。
興行を白けさせるわけにはいかなかった。
『ふん、やっぱり素人だなぁ!!』
バウジーが一気に距離を詰める。
『スラム街の壊れた男も大したことねえ!』
そして――
『バレットジャブ!!』
弾丸みたいな速度で拳が連続射出される。
右。
左。
右。
右。
凄まじい連打。
『出たァァァ!!
バウジーの十八番!!
挑戦者を幾度となく沈めてきた必殺ラッシュだァァァ!!!』
リガは紙一重で拳をかわしていく。
頬が裂ける。
空気が肌を切り裂く。
しかし反撃へ移ろうとした瞬間――
『スプリングアッパー!!』
バウジーの腰が沈む。
次の瞬間、バネみたいに跳ね上がる拳がリガの顎を撃ち抜いた。
視界が揺れる。
脳が軋む。
(ダメだな)
リガは即座に判断を切り替えた。
(攻めても弾かれる)
両腕を上げる。
ガード。
まずは観察。
右。
左。
上。
下。
どこからでも拳が飛んでくる。
変幻自在。
完全なワンサイドゲームだった。
『あーあ、終わったな』
『もうKOだろ』
『期待外れじゃん』
観客の熱が冷めていく。
同期率が低下。
27%。
20%。
15%。
そして、10%目前。
(クソッ……興行失敗か)
リガは自分の無力さを実感していた。
その時だった。
(……待て)
ガード越しに、リガの目が細まる。
(アイツ、動きが鈍ってないか?)
バウジーの呼吸が荒い。
派手な攻撃。
魅せるためのラッシュ。
無理にKOを狙った代償として、スタミナが急激に削れていた。
『チッ、しぶといな!!
何発入れりゃ倒れるんだよ!!』
焦り。
苛立ち。
そして――疲労。
(ガス欠)
リガは一気に踏み込んだ。
『ぐっ!?』
『疲れてるのかな』
リガは静かに拳を握る。
『とりあえず、一発』
右ストレート。
最小動作。
最短軌道。
放たれた拳が、バウジーの左頬を正面から撃ち抜いた。
『――がっ!?』
バウジーの身体が吹き飛ぶ。
そのままリングへ大の字に倒れ込んだ。
『え!?』
『ダウン!?』
『マジかよ!?』
『逆転あるぞこれ!!』
途端に観客が熱狂する。
同期率が急上昇。
10%目前だった数値は、一気に20%を超えた。
『ワン!! ツー!! スリー!!』
カウントが響く。
どうやら、うまくいったらしい。
そして――
ダウンを奪われた男は。
怒りに燃えていた。
『テメェ……やってくれたな』
『根性とタフさが、僕の取り柄なんでね』
バウジーはゆっくり立ち上がる。
その目から、余裕の色は消えていた。
『……そうか』
低く呟く。
『どうやら俺は、お前を過小評価してたらしい』
バウジーの纏う空気が変わった。
ヒリつくような殺気。
その圧に思わず瞬きをする。
――次の瞬間。
瞼を開いた僕の視界へ、高速の拳が飛び込んできていた。
『っ!?』
顔が横へ弾き飛ばされる。
痛みに鈍い分、反応も遅れる。
それが僕の弱点だった。
腹。
顎。
頬。
怒涛のコンビネーションが容赦なく叩き込まれる。
僕は息をつく暇もないまま、弾丸の雨を正面から浴び続けた。
『ぐっ……!』
足元が揺らぐ。
思った以上に身体へダメージが蓄積していた。
だが、バウジーは止まらない。
『どうしたよ。さっきまでの威勢は?』
『少し……考え事をしていた』
『はぁ?』
バウジーが鼻で笑う。
『試合中に随分呑気だな』
そして鋭い目で僕を見据えた。
『なるほど。その鈍さが“The Broken”の由来か』
観客たちも、この異様な試合に息を呑んでいた。
『マジで痛み感じてない?』
『ほんとに人間かよ』
『さっさとKOしろよ』
『どうせ八百長だろ、つまんねぇ』
困惑。
嫌悪。
興奮。
様々な感情がリングへ注がれていく。
そんな中、バウジーは先程までと違い、
明確に“仕留める”ための動きへ切り替えていた。
『けど関係ねぇ』
バウジーが拳を構える。
『俺はこのニューボクシングで、エンタメの王になる男だ』
鋭い踏み込み。
『そのために、お前にはここで負けてもらう』
(困るな)
僕は静かに考える。
(負け続ければ、リスナーは興味を失う)
同期率。
人気。
期待。
僕への関心が消えれば、目的そのものが果たせない。
『くたばれ、“壊れた男”リガァ!!!』
実況席が熱狂する。
『出たァァァ!!!
チャンピオン、再び《バレットジャブ》!!
挑戦者、大ピンチだァァァ!!!』
高速の拳。
嵐みたいな連打。
その中で、僕は思考を巡らせる。
(一瞬でいい)
(最善手は何だ)
バウジーは【魅せる試合】に拘っている。
派手な攻撃。
派手な決着。
観客を熱狂させる戦い。
つまり――。
(必ず、“見せ場”を作りに来る)
僕は素人同然のガードを固め、
真正面から猛攻を受け止めた。
『負けられねぇんだよ!!!
こんなところで!!!』
――本音。
その瞬間だった。
僕はバウジーの拳を、クロス気味に両手で掴み取る。
『なっ!?』
完全な想定外。
バウジーの動きが止まる。
僕はその隙を逃さなかった。
右ストレート。
最短距離で放たれた拳が、バウジーの顔面を撃ち抜く。
『ぐぁっ!?』
チャンピオンの身体が宙を舞い、リングへ沈んだ。
二度目のダウン。
『うおおおおお!!!』
『すげぇぇぇぇ!!!』
『今の反応できんのかよ!?』
会場が爆発する。
同期率が、再び急上昇していく――。
まさかの展開に、会場が爆発した。
冷めかけていた熱が、一気に再燃する。
バウジーはゆっくり立ち上がった。
『いいねぇ……!』
カウント中に聞こえたのは、その声だった。
『安心したよ。案外、骨がある』
ギラついた瞳が僕を射抜く。
『最近は骨のねぇ奴ばっかで退屈してたんだ』
『勝ってやるよ、お前に!』
僕は静かに拳を握る。
胸の奥で、何かが燃え始めていた。
『負けない』
赤い瞳が細まる。
『勝つのは、僕だ』
次の瞬間。
バウジーが低く姿勢を沈め、一気に飛び込んできた。
『バレットジャブ!!』
超高速の連打。
拳の嵐。
僕も応戦するように拳を振るう。
『がっ!』
『うあっ!』
互いの拳が頬を打ち抜く。
だが押しているのは明らかにバウジーだった。
『どうしたァ!? そんなもんか!!』
当然だ。
技術。
経験。
距離感。
インファイトにおいて、相手は僕を完全に上回っている。
(ダメだ……当たらない)
僕の拳だけが、紙一重で外されていく。
打つ手がない。
タフネスでは勝っている。
だが、“武器”がない。
(どうすれば……僕の拳は武器になる?)
リズミカルなラッシュが全身を襲う。
みぞおち。
脇腹。
顎。
首。
状況は、さっきと変わらない。
『顔を狙って!!』
リングサイドから声が飛んだ。
『判断力を落とすの!!』
ハチブンジだった。
『アンタ……!』
『相手の嫌がることをやるのよ!!
顔が脆いなら、顔から崩しなさい!!』
(そうか――)
僕の中で何かが繋がる。
バウジーが歯噛みした。
『テメェ!!』
僕は距離を取り、横目でハチブンジを見る。
『ありがとう』
そして真正面から突っ込んだ。
『させるかよ!!』
バウジーが顔面を固めながら迎撃に入る。
僕は右ジャブを連打する。
荒い。
素人丸出し。
それでも拳は確実にバウジーの肩を揺らしていた。
『パンチは悪くねぇ……!
だが、ここで終わりだ!!』
バウジーが僕の右を叩き落とす。
そして――
『ストロングバレット!!!』
渾身の右ストレート。
強烈な拳が頬を掠める。
だが。
バウジーの体勢が大きく崩れた。
『もらうよ――君の技を』
僕は半歩下がる。
膝を沈める。
そして跳ね上げた。
『スプリングアッパー!!』
『――っ!?』
バウジーの背筋が凍る。
左拳が顎を撃ち抜いた。
意識が途切れる。
リングへ、巨体が真っ逆さまに沈んだ。
『ダウン!!!
“バレット”バウジー、三度目のダウンだァァァ!!!』
実況が絶叫する。
そして。
カウントが十へ届く前に――
ゴング。
『赤コーナー、ビーコン投入ォォォ!!!
試合終了だァァァ!!!』
歓声が爆発する。
『【The Broken】リガ!!!
デビュー戦にして大金星ィィィ!!!』
試合時間、一ラウンド九分三十二秒。
リングが揺れる。
『すげぇぇぇ!!!』
『初戦で王者食ったぞ!!!』
気づけば同期率は35%を超えていた。
僕はゆっくり天井を見上げる。
(……勝った?)
時間が妙に遅い。
リングサイドを見る。
ハチブンジが、笑いながらグッドサインを向けていた。
『おめでとう、リングチャンピオン』
胸の奥が熱い。
知らない感覚だった。
そして――
《勝者、リガぁあああああ!!!》
歓声が、世界を揺らした。




