第十六話 終われない
注意
この文章は作者が書いた文章をAIに添削してもらった上で投稿しています。
間違っても作者一人で作ったものではありませんので勘違いなきようお願いいたします。
エレクスパーを終えた後。
僕は正式に謝罪することになった。
『えっと……』
『ごめんなさい』
ハチローに頭を押さえつけられながら、
僕は運営責任者であるラワーゼンを見上げる。
『いやいや、謝る必要なんてないさ』
ラワーゼンは笑った。
『責任者は僕なんだからね』
そして次の瞬間、
目を輝かせる。
『それより君』
『ぜひうちのジムに来てくれないか!?』
『勘弁してくれ』
即座にハチローが断った。
『ただでさえうちは会員が少ねえんだ』
『その上チャンピオンまで引き抜かれたら困る』
『冗談ですよ』
ラワーゼンは肩をすくめる。
『ハチローさんの自慢の新人ですからね』
『取るわけないじゃないですか』
『んなわけあるか』
ハチローは鼻を鳴らした。
『大馬鹿弟子だぞ』
そう言いながらも、
どこか誇らしそうだった。
そして僕はというと――
リングの外で基礎練習に参加していた。
『地味』
思わず呟く。
今やっているのは縄跳びだった。
飛ぶ。
また飛ぶ。
さらに飛ぶ。
ひたすら飛ぶ。
『文句言うな』
隣でハチローも縄を回していた。
『基礎練は体作りの基本だ』
『なんでアンタもやってるんだ?』
『運動だよ』
ハチローは肩を回す。
『最近凝りがひどくてな』
『このくらいやらねえと体が固まる』
『そうか』
僕は再び縄を回した。
途中、
二重跳び。
あや跳び。
後ろ二重跳び。
後ろあや跳び。
聞いたこともないメニューに振り回されながらも、
なんとか最後までやり切る。
そして――
再びスパーリングの時間がやってきた。
『よし』
僕は拳を握る。
ラウズにボコボコにされた記憶が脳裏をよぎる。
正直、もう一度戦いたい。
だが今のままじゃ話にならない。
次はもう少し粘りたい。
次はもう少し殴り返したい。
そのためにも、
こういう地味な積み重ねは必要なんだろう。
『準備できたぞ』
リングの上から声が飛ぶ。
僕は顔を上げた。
再びラウズが相手だと思った。
だが――
僕の目の前に立っていたのは、
ラウズではなかった。
茶褐色の短髪。
黄土色の瞳。
そして猫を彷彿とさせる顔立ちと、
頭の上に付けられた猫耳のアクセサリー。
『ミルゼードだ』
男は短く名乗ると、
両拳を突き出した。
(猫?)
僕は首を傾げながらも、
差し出された拳へ自分の拳を合わせる。
『なんでネコ?』
『おしゃれ』
ミルゼードは猫耳を軽くつついた。
『そうか』
よく分からなかった。
『ラウズさん相手に一ラウンド持ったのは褒めてやる』
ミルゼードはそう言った。
『だが』
その瞬間。
空気が変わる。
『俺はラウズさんみたいに手加減しねえ』
僕は黙ってミルゼードを見つめる。
鋭い眼光。
獲物を見据える肉食獣みたいな視線。
立っているだけなのに、
研ぎ澄まされた刃物みたいな緊張感があった。
(強いな)
一目で分かった。
ラウズほどじゃない。
だが。
間違いなく強者だ。
『アイツほどじゃねえが……』
僕はラウズの姿を思い浮かべる。
『すげえ気迫だな』
その時だった。
ブザーが鳴る。
ミルゼードが軽く足踏みをする。
トン。
トン。
そして――
消えた。
『っ!?』
次の瞬間。
鋭いストレートが空を裂いた。
『うおっ!』
間一髪だった。
僕は背筋を左後方へ反らし、追撃の左を右ガードで受け止める。
(重い……!)
衝撃で体が左へ流される。
だが、気づけば拳を振っていた。
ワン。
そしてツー。
本能のまま打ち出した大振りの連打。
しかし当たらない。
その直後だった。
パチンッ!
パチンッ!
ミルゼードの拳が正確に僕の顔を弾く。
まるで鞭で打たれたみたいな衝撃。
視界が揺れる。
足がふらつく。
そして――
ドゴッ!!
『ゲボッ!』
恐ろしい左ボディが腹を抉った。
思わず口が開く。
胃の奥から何かが込み上げる。
『おえっ!』
朝は何も食べていない。
それでもリングの上には、屈辱の液体が広がっていた。
『あれ……?』
頭がぼうっとする。
意識が霞む。
足元がおぼつかない。
『クリティカルに決まったな』
ミルゼードが笑った。
その顔を見た瞬間だった。
――思い出す。
届かなかった時のことを。
負けた時のことを。
潰された時のことを。
胸の奥で何かが軋む。
負けたくない。
負けたくない。
負けたくない。
それだけだった。
次の瞬間――
僕は拳を振り抜いていた。
全身の力を乗せた一撃。
ミルゼードは紙一重でそれを躱す。
『っ!?』
風圧だけが頬を掠めた。
わずかに髪が揺れる。
僕の両腕がだらりと下がる。
息が荒い。
頭も回らない。
それでも。
『ああ……』
僕は拳を握った。
『負けたく、ねえ……!』
言葉が勝手に漏れる。
ミルゼードが一歩距離を取った。
『今のは危なかったな』
口元は笑っている。
だが、その目はさっきまでより少しだけ鋭かった。
『そんなパンチ隠してやがったのか』
僕は答えない。
答える余裕なんてなかった。
ただ。
負けたくなかった。
『なおのこと加減できねえな……!』
ミルゼードが構え直す。
僕は笑った。
自分でも不思議なほど自然に。
それでも。
『来いよ』
一歩前へ出る。
『まだ終わってねえ……!』




