第十五話 現実
注意
この文章は作者が書いた文章をAIに添削してもらった上で投稿しています。
間違っても作者一人で作ったものではありませんので勘違いなきようお願いいたします。
こうして一件落着――
……に見えた。
しかし。
本当の地獄はここからだった。
インターバル終了のブザーが鳴る。
『来い。あと1ラウンドだけ付き合ってやる』
ラウズの挑発に触発され、僕はリング中央へ歩み寄る。
そして。
ラウズと向き合った、その瞬間――
ドゴッ!!
『っ!?』
顔面が横へ弾け飛ぶ。
《――破損率101%を超過――》
《――電流を放出します――》
次の瞬間だった。
バリィッ!!
全身が大きく跳ね上がる。
筋肉が勝手に収縮する。
指先が痙攣する。
呼吸が止まる。
痛みはない。
だが。
体だけが悲鳴を上げていた。
視界が白く染まる。
膝が笑う。
立っていることすら難しい。
(なんだ……!?)
僕は目を見開く。
痛くはない。
なのに。
体が言うことを聞かなかった。
まるで全身の神経を誰かに乗っ取られたようだった。
(これ……まずいな)
だが。
もっとおかしなことがあった。
放電が終わらない。
『……?』
僕は顔を上げる。
ラウズはニヤニヤと笑っていた。
『気づいたか?』
『どういうことだ……?』
舌まで痺れ、上手く喋れない。
『終わったと思ったか?』
『終わりじゃ……ないのか?』
『一般枠ならな』
ラウズは肩を鳴らした。
『普通は100%で終わりだ』
『だがお前らは違う』
そう言うと、
グローブ同士を打ち鳴らす。
パンッ。
乾いた音がリングへ響いた。
『チャンピオン経験者は特別製だ』
僕は眉をひそめる。
『上限は200%』
『……は?』
一瞬。
意味が理解できなかった。
だが。
理解した瞬間、
思わず苦笑が漏れる。
『なるほど』
『見事に騙されたようだ』
『まあな』
ラウズは満足そうに笑う。
『本当は少し痛い目を見せて帰すつもりだった』
そして。
ゆっくりとガードを上げる。
『だが予定変更だ』
空気が変わる。
リング全体が張り詰める。
『お前、もう少し楽しませろ』
その笑みは獣だった。
いや。
もっと質が悪い。
壊れる瞬間を心から楽しむ悪魔だった。
『死にたくないなら別だがな』
『いいや』
僕は即答した。
『戦うよ』
ラウズが少しだけ目を細める。
『みんな、それをご所望だろ?』
僕は観客席を見る。
選手たちを見る。
ハチローを見る。
誰一人として目を逸らしていなかった。
『……そうだな』
ラウズは笑う。
僕は痺れる拳を握る。
上手く閉じない。
足も重い。
まともに動ける状態じゃない。
それでも。
『まだ終わってない』
僕は前へ出る。
『ようやく一発届いただけだ』
一歩。
また一歩。
放電に耐えながらリング中央へ進む。
『喧嘩屋に相応しい戦いを見せてやるよ』
その瞬間。
ラウズは心の底から嬉しそうに笑った。
『そうこなくっちゃな』
僕は拳を握り締める。
その瞬間だった。
ドゴッ!!
『がっ!!』
ラウズの右拳が顔面を穿つ。
見えなかった。
反応した時には、すでに当たっていた。
そして――
左。
右。
左。
右。
『ぐっ……!』
『がはっ!!』
暴風雨だった。
いや。
そんな生易しいものじゃない。
まるで獣に喰われているようだった。
一発。
また一発。
さらに一発。
ラウズの拳は休むことなく僕を襲い続ける。
《――破損率150%を超過――》
(なんて威力だ……!)
(なんて連打力だ……!)
一発一発が重い。
なのに速い。
しかも正確だ。
顔。
脇腹。
みぞおち。
急所ばかりを正確に撃ち抜いてくる。
筋肉の塊が、
僕という人間を壊しにきている。
そんな感覚だった。
《――破損率181%を超過――》
背筋が凍る。
本能が叫んでいた。
逃げろ、と。
だが。
逃げ場はない。
そして何より――
逃げたくなかった。
(強い……!)
(なんだこれは)
(僕は今、本当に人間と戦っているのか?)
今ならわかる。
最初のスパー。
あれは本気じゃなかった。
僕に合わせてくれていたんだ。
本当に。
欠片ほども敵として見ていなかった。
そして今。
ようやく見せつけられている。
現実というやつを。
僕が今まで戦ってきた相手。
僕が強いと思っていた連中。
その全てが、
目の前の男の前では霞んで見えた。
《――破損率200%――》
《――スパーを強制終了します――》
ブザーが鳴る。
同時に、
僕の体から力が抜けた。
膝をつく。
肩で息をする。
汗が床へ落ちる。
視界が滲む。
だが。
不思議と悔しさはなかった。
ただ。
圧倒されていた。
『まあ、こんなもんか』
ラウズは肩を回しながら言う。
まるで軽い運動でも終えたような顔だった。
グローブを外す。
ヘッドギアを脱ぐ。
額から汗が飛び散る。
『楽しかったぜ』
ラウズは獣のように笑った。
『お前』
そう言ってロープへ向かう。
そして。
『じゃあ、また今度な』
それだけ言い残し、
ラウズはリングを降りていった。
僕はその背中を見つめる。
言葉が出なかった。
悔しい。
情けない。
追いつきたい。
色んな感情が胸の中で渦を巻く。
だが。
その全てを押しのけるように、
一つの想いだけが残った。
(もっと強くなりたい)
その気持ちだけは、
誰にも止められなかった。




