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NEU BOXER  作者: 乙籠一
14/26

第十四話 その一発


注意

この文章は作者が書いた文章をAIに添削してもらった上で投稿しています。

間違っても作者一人で作ったものではありませんので勘違いなきようお願いいたします。



 一振りで空気を揺らす拳が、一発、二発、三発と空を切る。


肝心の僕はというと――


喧嘩屋時代に培った勘を頼りに、その一つ一つを紙一重でかわしていた。


だが。


(……まずいな)


(このままじゃジリ貧だ)


避けることはできる。


しかしそれだけだ。


顔。


腹。


みぞおち。


どこかに突破口はないか。


殴りながら探ろうとする。


だが、その肝心の拳がかすりもしない。


僕は生まれて初めて、


明確な実力差というものを味わっていた。


『おらおら!!』


ラウズが笑う。


『避けてばっかじゃスパーにならねえぞ!!』


圧力がさらに強まる。


(体は近い)


(なのに当たらない)


違和感があった。


距離は遠くない。


目の前にいる。


なのに攻撃だけが届かない。


(なんだ、この感覚……)


ワンツーを打とうとした瞬間、


二発目を出す前に右アッパーを差し込まれる。


左を出せば読まれる。


右を振れば外される。


(僕はサウスポー)


(相手はオーソドックス)


(何が違う?)


(なんで僕の攻撃だけ当たらない……?)


僕はぎゅっと肘を締めた。


ガードを固める。


しかし――


ボンッ!!


鈍い音とともにガードがこじ開けられる。


『歯応えの欠片もねえな』


ラウズが吐き捨てる。


左。


左。


右。


基本の連打。


そこから逃げる僕を見越した右フック。


『っ!!』


殴打の勢いに飲まれ、


僕は体勢を崩した。


『リガァァァ!!』


ハチローの声が飛ぶ。


その瞬間。


僕は気づいた。


背中越しに伝わる圧迫感。


逃げ場のない感覚。


(……しまった)


いつの間にか、


リングの隅。


コーナーを背負わされていた。


『あっけねえな、小僧』


ラウズがゆっくり距離を詰める。


(考えろ……!)


(あの左ジャブだ)


(あれが全部の起点になってる)


僕は懸命にパーリングを試みる。


左ジャブを弾く。


だが。


弾かれる。


もう一度。


弾かれる。


また弾かれる。


完全なイタチごっこだった。


(強い……!)


(完全に読まれてる!!)


(僕のやりたいこと全部が見透かされてる!!)


焦りが募る。


だが焦ったところで状況は変わらない。


僕は破損率を横目で確認しながら、


必死に突破口を探した。


その時だった。


ラウズの左フック。


ほんの一瞬だけ。


僅かな隙が見えた。


(いた!!)


(あそこだ!!)


僕はガードを固める。


そして。


左フックが来た瞬間――


身を沈めた。


狙うのはラウズではない。


左フックの軌道の真下。


攻撃の死角へ潜り込む。


(行けっ!!)


しかし――


ラウズは読んでいた。


スッと後方へ下がる。


『なっ――!?』


『ふーん』


ラウズが笑う。


『案外バカじゃねえみたいだな』


次の瞬間。


巨大な左が振り抜かれた。


『ワイルドブロー!!』


ドゴォッ!!


上体が浮く。


ガードごと吹き飛ばされる。


そして再びコーナーへ叩き戻された。


《――破損率89%》


《――電流放出まで残り11%》


リングが静まる。


もう誰の目にも明らかだった。


負けが近い。


死神はもう、


すぐ隣まで来ていた。


『……終わらせるか』


ラウズがガードを下ろす。


完全にトドメを刺しにくる構えだった。


(来る……!)


そう確信した瞬間。


昨日見た映像が脳裏をよぎる。


音速のセルテ。


試合の内容はほとんど覚えていない。


だけど一つだけ。


妙に頭に残っている動きがあった。


三連ジャブ。


そしてストレート。


(俺はサウスポーだ)


(なら逆だ)


理由なんてわからない。


有効かどうかも知らない。


だけど今の僕には、


それしか思いつかなかった。


(やるしかない……!)


僕は踏み込む。


右。


右。


右。


そして――


左ストレート。


『あの動きは!!』


誰かが叫ぶ。


その一言をきっかけに、


リング周辺の空気が一変する。


『おい、今の……』


『まさか』


『当たったのか?』


『ラウズさんに……?』


ざわめきが一気に広がる。


僕の拳には確かな感触が残っていた。


柔らかくも硬い感触。


相手を捉えた感触。


(当たった)


(今……確かに)


思わず拳を見る。


そして。


『ようやく届いた……!』


小さく呟いた。


リング中央。


そこには一歩、二歩と後退するラウズの姿があった。


『まさか……』


ラワーゼンが目を見開く。


『音速のセルテの連打か!?』


思わず前へ身を乗り出す。


ハチローを押し退ける勢いだった。


周囲の選手たちも息を呑む。


誰もが信じられないものを見る目をしていた。


ラウズは額を押さえたまま動かない。


リングが静まり返る。


数秒。


誰も口を開かない。


そして――


『……ウハハハハハハ!!』


突如として豪快な笑い声が響き渡った。


『ハハハハハハハ!!』


ラウズは肩を震わせながら笑う。


そして額を押さえたまま大きく息を吐いた。


『見事だ』


その言葉に周囲が再びざわつく。


『まさか、この土壇場で資質を見せてくるとはな』


『資質?』


僕は首を傾げる。


正直よくわからない。


だがラウズは楽しそうだった。


今までで一番楽しそうだった。


僕が再び構えようとした瞬間――


《ブーーッ!!!》


低いブザー音が鳴り響いた。


インターバル。


どうやら休憩時間らしい。


『ふふ』


ラウズが笑う。


『面白い小僧だ』


僕は黙ったまま見返した。


すると次の瞬間。


『リガァァァァァ!!!』


怒号が飛んできた。


『うおっ!?』


リングへ飛び込んできたのはハチローだった。


『バカやろうがぁぁぁ!!!』


ゴツンッ!!


見事なゲンコツが頭頂部に炸裂する。


『いてぇ!!』


そして。


《――破損率91%》


数字がわずかに増えた。


『おい!!』


僕は思わず叫ぶ。


『破損率!!』


『知るかそんなもん!!!』


ハチローも怒鳴り返す。


『心配させやがってこのドアホ!!!』


『もしお前に怪我でもあったらなぁ!!』


『俺は娘に合わせる顔がねえんだよ!!!』


怒鳴りながらも、


どこか安心したような顔だった。


『ったく……』


ハチローは頭を掻く。


『お前はもっと立場を弁えろ』


『このクソガキが』


そう言いながら、


八重歯を見せて笑った。


『ほら』


『謝りに行くぞ』


『え?』


『え?じゃねえ』


僕の腕を掴む。


そしてそのままズルズル引きずっていく。


『すまねえ』


ラワーゼンの前で頭を下げた。


『うちの新人が迷惑かけた』


そのまま僕の頭を押さえる。


『うおっ』


強制的に頭が下がる。


気づけば謝罪させられていた。


『あとでちゃんと礼儀叩き込んどく』


『だから今回は許してやってくれ』


ラワーゼンはニヤリと笑った。


『いいよ』


『僕と君の仲だろ?』


『今回は許す』


そう言ってから、


少しだけ真面目な顔になる。


『ただし』


ハチローを見る。


『君は全力で彼を導いてやってくれ』


『礼儀も』


『マナーも』


『ボクシングも』


そして。


リングの向こうにいるリガへ視線を向けた。


『こいつは伸びる』


静かにそう言った。


『だからこそ』


『お前がちゃんと育てろ』


ハチローは一瞬だけ目を見開く。


そして。


『……へっ』


照れ臭そうに鼻を鳴らした。


『言われなくてもそのつもりだ』


リングの向こう。


ラウズはそれを眺めながら笑う。


『資質、か』


ラウズは額をさすった。


そこには確かに、


リガの拳が残した痛みがあった。


『面白くなってきやがった』


獣のような笑みを浮かべた。


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